間違ってないよ
「俺が居たせ……国はさ、男女平等なんだ」
雄二の言葉に一瞬だけ息を詰まらせたメディアだったが、すぐそれを自分を慰める為の嘘と判断して涙目で睨みつける。
「嘘つき! そんな国あるわけないもん! あ、あったら……あったらぁ……!」
先ほどと変わらない気迫に雄二はまた怯むも、口をつぐまず言葉を続ける。
「昔は、違ったみたいだけど……今は男女平等だよ。むしろ差別なんかしたら怒られる」
「……それは、教皇様が決められたことなの?」
つい聞いてしまったが、そんな事あるわけないとメディアは頭を振る。
(もしそれが許されているなら私はここにいないし、お母様も……)
また大粒の涙を零すメディアを見ながら雄二は答える。
「違うよ。命令されて差別をしてないんじゃない。差別しないのが当たり前なんだ」
「あ、あたりまえ? そ、そんなのあるわけ……だ、だって女神様が決められたのにそんな……」
――これ以上こんな夢物語を聞きたくない。そんな思いで頭がいっぱいになる。だけど、耳を塞ぐことはできなかった。
夢物語だ、嘘だと決め付けても雄二の言葉に耳を傾けてしまう。当然だろう、その夢物語を一番望んでいるのはメディア本人なのだから。
そんな心中を察しているのかいないのか、雄二は話を続けていく。
「俺が生まれる前は差別があったみたいなんだけど……だけど、俺が生まれる頃には差別はなくなってた。なんでだと思う?」
「な、んでって……」
「差別するのが当たり前の世の中で、差別するのはおかしいって考えて行動した人がいたんだよ」
「――!!」
メディアの目が限界まで見開き、表情は驚愕で固まる。それを見た雄二は少しだけ微笑んでみせる。
「まあ、そんな人たちが頑張って差別がなくなった国に住んでた俺からしたら、メディアのお母さんが間違っているともおかしいとも思わないよ。むしろ、すごい人だって尊敬できる人だって思うぅぐっ!?」
いきなり腹部への衝撃と意外と力強い締め付けに変な声が洩れた雄二だったが、原因ははっきり分かっていた。
(……何が頭がおかしい、だよ。ただお母さんが大好きでとっても優しいただの女の子じゃねえか)
自分の胸の中で声にならない叫びを上げながらひたすら泣きじゃくるメディアに雄二は恐る恐る頭に手を置いてゆっくりと頭を撫でる。
それに対してメディアが嫌がるそぶりも離れる様子もなく、むしろ自分を抱きしめる力を強めたことに安堵して撫で続けた。先ほどとは違い、自分に泣いてすがり付いてくる女の子の頭を撫でるくらいの事は雄二でも出来た。
GW中に更新できず本当にすいませんでした……今日からまた毎日投稿できるようがんばります!
 




