トラウマ
「おや、こんなところで何をしてるんです?」
ぐすぐすと泣き続けるメディアの頭を撫でて慰めていた雄二の手は、背後から声に反応してピタリと動きを止めた。いや、震え始めた。
それは異世界に来てから一度しか聞いたことのない声だったが、雄二にとって決して忘れることの出来ない声だ。
恐る恐る振り返ってみれば、予想通り、気絶するまで雄二の身体を鞭で打った奴隷管理人の姿があった。管理人だ、と視認した瞬間、雄二の身体から冷や汗が噴出しだいぶ良くなっていたはずの傷跡がズキリと痛んだ。
「たしか今日は世話係が案内とここのルールを説明すると聞いていましたが……世話係になにを言われたんですか?」
改めて声を掛けられて雄二はヒィッと短く悲鳴を上げて思考が恐怖一色に染まってしまう。返事がないことに奴隷管理人は不思議そうに首を傾げると、雄二の横から幼くも凛とした覇気のある声が返事をした。
「はい、管理人様。今第六区作業場の案内をしています。それに合わせて細かいルールなどを説明しています」
「おや、いたのですか? では改めて聞きますがここで何を?」
声すらだせずただただ下を向いて震えている雄二の代わりにメディアは返事をしていく。それは先ほどまで泣きじゃくっていたとは思えないしっかりしたものだった。
「作業場に向かう途中でしたが、私の目にゴミが入りましたのでそれを取ってもらっていました」
「……ああなるほど。だから目が赤いんですね。わかりました、では引き続きそこの奴隷の世話を頼みましたよ」
「はい、わかりまりました」
その回答に納得したのか、雄二の事など目にも留めず二人の横を通り過ぎていく。
「今から奴隷を垂らしこむ練習ですか? 仕事熱心で素晴らしいですね」
「……ッ」
メディアの横を通り抜ける際、そんな大きな独り言を呟いていきながら。
「ユウジ、大丈夫?」
奴隷管理人の姿が消えたことを確認してからメディアは、額から冷や汗を垂らしながら浅い呼吸を繰り返している雄二の背中を撫でながら問いかける。
「だ、大丈夫だよ。……はは、これがトラウマって奴か……想像以上にきっついな……」
いまだ冷や汗が滲んでいる顔で必死に作り笑いを浮かべて頷いて見せると、メディアは申し訳なさそうな顔をして手を差し出す。
「休ませてあげたいけど……ここにいたらまた誰かに見つかって何か言われちゃうから……」
「わ、わかった……」
差し出された手と顔を交互に見て雄二はメディアの手をとりゆっくりと作業場に向かって歩く。自分の情けなさといまだに震える手をしっかりと握ってくれているメディアの優しさにこれ以上情けない姿を見せまいと必死に涙を我慢しながら。
大変自分勝手で申し訳ありませんが、明日から一人称と三人称がごっちゃになっていて読み難いとご指摘された話の改訂作業に入りますので更新が一時止まります。
また、一から書き直すレベルになるのでよければ一度読んで頂けた方もみなおしていただけたらと思います。




