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ぼくらのコスモポリタン  作者: 01
終戦と牢獄
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第46話

 遥か彼方から煌めく太陽光を浴びて小隕石に取り付いたEVUがモジュールを設置した。

 モジュール内から現れた蜘蛛型ドローンが隕石の表面に取り付くと、胴体中央から伸びたニードルを穿孔させる。

 隕石の成分分析が次々に機体内部に表示されると、ドローンに接続されたワイヤーで曳航する。


 宇宙空間に存在する隕石にはレアメタル等を含有するが、そのほとんどは氷隕石である。

 多くの企業は白金・金等のレアメタルを狙うが、火星の環境化では水も貴重である為にこうした資源的価値の少ない氷隕石も回収されるのだ。

 コウキは小隕石の接続がしっかりと固定された事を確認すると、本部へと連絡を入れた。


「こちらダスト3、固定完了。回収作業よろし」


『こちらマーベリック、ノルマを確認した。

 本船へ帰還せよ』 


 ラストプリズンは外見上は戦艦を超える船体を保持しているが、そのほとんどは単なる空洞となっている。

 鵜飼の鵜の用にワイヤーで繋がれたEVU達は巻き取りを開始するとラストプリズン本船へと帰還した。

 ほとんどが囚人達との共用である為に居住性も整備性も最悪である。


 コスモポリタンでは機体内に持ち込めば叱責されるであろう、雑多な持ち物がEVU内に散らばっていた。

 コウキは目の前にぶら下がったアンドロイドのヌードピンナップを払い除けると、ようやく船体へ取り付いた。

 ハルによるサポートがない為に作業にかなり手間取ったコウキは回収した小隕石を船内に運び入れる。


「やぁ、ご苦労さんコウキくん」


「デンドロンさん。オッツォの奴は?」


「恩赦がつくって聞いて、さっき小躍りして回転してたよ」


「それはそちらの?」


「あぁ、こちらで手配した。何か問題あったかい?」


 デンドロンがそう言って口元を曲げると、コウキは一旦両腕を上げて手前に降ろした。

 火星軍特殊作戦軍に所属するデンドロンについて、コウキは既に知った上での対応である。

 彼が明らかに何らかの目的でラストプリズンに服役している事は明らかであった上に、その対象が自分である事をコウキ自身も薄々感づいていた。


 デンドロンは思い出したように外部メモリをコウキに投げ渡すと話を続ける。


「それにこれはゴールドマインについての諜報部からの情報だ」


「え!? 本気だったんですか?」


「こっちとしてもジョークのつもりだったんだけどね。

 概容を聞いた火星軍の方でも動きがあったらしい」


 情報資料にはゴールドマインに保存されている顧客情報を火星軍の諜報部が得ようと動き出している事が記されている。

 エアギャップの存在するスタンドアローンPCを内部への侵入によって確保する作戦などが記されている。


「ゴールドマインへの侵入は不要なのでは」


「ハッキングは不可能なのではなかったかい?」


「幸いパトリア製のフォトニクスチップを使っているようです。

 ハードウェアクラックでいけるかと……」


 パトリア.IndのCPUには特定周波数のパターンを与える事で電圧が上昇する論理ゲートを設置してある為にある程度の電圧がかかると電荷を吐き出す。

 これによりPCが電極を利用した周波数を用いる事で相互通信を可能とすると、デンドロンはコウキの説明を聞いた。

 コウキ当人が恐ろしい事をあっけらかんと口にしているのをみて、デンドロンは思わず頬を掻く。


「お手柔らかに頼むよ」


「それで決行は何時頃です?」


「少しばかり早まるかもしれないね。

 この宙域に海賊が接近中のようだ」


「まさか?」


「ま、類は友を呼ぶってとこかな」




 ラストプリズン内の囚人達が看守の何時もと違う様相に気付いたのか慌てた様子を見せている。

 やがて火星から小型巡視船が到着すると、所長であるルペスの元に通信が入った。


「こちら赤錆の刑務所ルペス。一体何事かね」


 到着した巡視船は小惑星帯への航行ともあって小型巡視船に偽装されていたが、その武装は換装されていた。

 直掩に着いているEVCに関しても最新鋭のゴスペルで固められており錬度も高いように見える。

 ルペス所長の疑問に答える事無く巡視船の船長シンサイクは返答する。


『残念ながら、回線上でその質問に答える事は出来ない。

 こちらから送った資料の精読を願う』


「了解」


 ただ事ではないと察したルペスが送信されてきた資料に目を通す。

 ラストプリズンに収監されている海賊組織“ジャゴ”の幹部を奪還に向かっている旨が記されている。


 その上で別の調書にはラストプリズン内にジャゴと密接な関わりのある看守の存在が仄めかされていた。

 刑務所内で汚職が行なわれている事を知ったルペスは伸ばしきった白い髭をなぞると熊のような唸り声を上げる。


「用件は分かった。こちらでも協力させて貰おう」


『ご協力に感謝する。通信終了』


 モニターを切断させると、早速ラストプリズンに小型巡視船からの情報がルペスの情報端末へ送られてくる。

 海賊はゴールドマインを襲撃するように装い、その近辺を航行するラストプリズンを襲撃する恐れがあるようだ。


 近辺とは言っても小惑星帯では行動範囲はそう広く取れない為に接近した位置で交差する事になる。

 その上ラストプリズンは資源採掘用のEVUであるEVU以外は所有していない為に、まともな防衛手段の持ち合わせもない。


「明日の準備を始めるぞ。

 今度はA-117の大物を狙う、デブリ用にFELを充填しておけ」


「ロジャー」


 ルペスは艦内の監視カメラを利用して船内の様子からジャゴの構成員を探し始める。

 画面中央に映し出された囚人ノックは落ち着いた様子で、パイプベッドに固定された状態で就寝しているようだ。

 ルペスは忌々しげに男の姿を睨みつけると海賊の襲撃に対する対応を水面下で進めた。


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