表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/15

7、逃亡


「人禁制区域って、他にも結構あるんだ……。銀の砂漠とか、最近発見されたという赤の山とかもあるよ」


 ノールはククーに、地図を見せながら教えた。


「砂漠は暑いし、毛が砂まみれに嫌よ」


「いや、そう言われても……」


 ノールは困ったように笑う。


「それにしても、ログはどうしてるんだろう? もし、時を移動する妖獣を見つけてくれても、僕達の居場所がわからないんじゃ……」


「大丈夫よ。テレパシーを使えば」


「えっ?」


「妖獣は基本、言葉を使わず、テレパシーでコミュニケーションを取る。言葉を使うのは、人と関わっている時が多いの。だから人間には、妖獣は喋らないって思われてたのかもね」


 ノールはなるほどと頷こうとして、首を傾げる。


「でも、ククーはめちゃくちゃお喋り……」


「だって、テレパシーなんて面倒臭いんですもの。それに、喋った方が楽しいし!」


「君って、人のこと言えないくらい、きっと妖獣では変わり者だよね?」


「皆が変なのよ」


 ククーは澄まし顔で言い返す。


「はいはい。……それなら、ヘルとテレパシーできない?」


 ククーは、呆れる。


「あのねぇ、あの小娘は人でしょう?」


「でも、ヘルもテレパシー使えるんだ」


 ノールの真面目な目を見て、ククーは顔をしかめる。


「……本当に、あの小娘は人間なの? まあ、どっちにしろ無理ね。テレパシーは、心を通わせた者同士しかできない。それに、時が違えば当然無理」


「そっか」


「それより、さっさと目的地決めてよ」


 ノールは残念そうな顔をしていたが、ククーは急かすように尻尾で地面をバシバシ叩いた。


「一応、ここからだと北の方にある『金の泉』が一番近いかな……。それでも、結構な距離だけど……」


「まあ、いいわ。そうと決まったら、さっさと行きましょ。さっさとしないと……。……っ!」


 ククーの耳がピクリと動いて、急に黙った。その瞬間、ガサッと茂みから音がする。二人組のホウエン兵が現れた。


『いた!ファイキャトスとガキだ!』


『カキン王に報告を……』


 ククーは兵がそう話している間にも、二人に向かって炎を吐く。しかし、兵が盾を掲げると、水が出て火を消してしまった。


『シャクガの近くにいるということは、奴らが匿っていたのか?』


『学者ごときが、我らを謀ったのか』


(これじゃあ、町の皆に迷惑がかかる!)


 ノールは拳を握って、横目でククーを見た。


「……ククー、これじゃあ町に戻ることができないよ。事情を説明して、父さんや町の皆に助けを求めたかったのに」


 ノールの突然の言葉に、ククーは意味がわからず首を傾げる。そして、その意図に気付き、ククーは舌打ちする。


「……馬鹿ね」


 ククーが小さくつぶやいた。


『ということは、まだ町に行けてなかったんだな?』


「ノール、シャクガの町に行くのは諦めて、逃げるわよ!」


 ククーは走り出す。ノールも駆け出そうとした時、先に兵に強く腕を捕まれた。


「いっ……」


『逃がさないぞ』


「何、あんたも捕まってるのよ!」


 ククーは、ノールもろともホウエン兵に火を吹きかけた。


「あつっ!!」


『何をする!』


 ノールを掴んでいて盾が間に合わず、兵も火を浴びる。もう兵の一人が慌てて剣で払い、ククーは後ろに飛び退いた。切っ先が、前足を掠める。


「ククー!」


「いいから、さっさと逃げましょ」


 ノールは、火に驚いて緩んでいた兵の手を振り払い、ククーに駆け寄る。


『そう何度も逃がすかっ!』


 そう言うと、小さなボールのような物を、投げてきた。避けるが、地面に落ちた時、煙のようなものが舞い上がった。


「ヤバいっ!」


 ノールはすぐ布で鼻と口を覆うが、ククーは煙を吸い込んでしまった。


「ケホッ……。何……痺れ……」


 ノールは、足が震えているククーを抱えて走る。ノールも、多少煙を吸ってしまったのか、動きが鈍い。


(いくら、あいつらが鎧とかで動きが遅くても、これじゃあ逃げ切る前に僕達が動けなくなる)


 ノールは大きな川を見つけた。流れも速い。


(……普通でも、渡り切るのは難しそうだな。こんな状態じゃ、まず無理だろう……。でも、自殺行為かもしれないが……)


 ノールは、鞄の中から拳くらいの小さなボールを出し、息を吹き入れる。すると、たちまち両腕で抱えるくらいの大きさになった。

 その上にククーを乗せ、ノールは川に飛び込む。


「ノール、……あんたまさかこの川を渡る気!?」


「あった! ここなら流される!」


「えっ?」


「しっかり捕まれ! 流れるよ!」


「ええっ!?」


 ノール達は、激流に流されていった。



 兵をまき、何とか川から這い上がったククーは、体を奮って水をとばす。


「信じらんない。命懸けだったわ……」


「仕方ないだろ。走れなくなったし、ああしなきゃ、捕まってた」


「何度、溺れるかと思ったか!」


「無事だったじゃん」


「あんた、弱いくせに逞しいわ。……いたっ」


 ノールが、ククーの怪我した前足を持った。


「それにしても、手当てする前に、水に入ってごめん」


「そういえば、剣がかすっていたわね。舐めとけば、どうってことないわ。それに、この傷より川の中で岩や木にぶつかった傷の方が痛い」


 ククーは、恨めしそうにノールを見る。


「……それも舐めとけば、どうってことないでしょ」


「コラ」


「それより、早くここから離れよう」


「ええー? もう疲れたわ」


「さっき、僕達がこの川に流されるのを、ホウエン兵達は見ていた。たぶん、この川を中心に僕らを探してくるだろう。幸い、金の泉には近づいてる。行こう」


 ノール達は、重い体を引きずるように、また歩を進めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ