【室町編】⑮私は最初から間違っていた
「さすがに、もうダメかもね。」
「富子様、残念ながらそれは否定はできません。」
「菫ちゃん。まだ武器は残ってんの?」
「あとは、このなまくら一本だけです。」
菫は血みどろの刃こぼれした刀を見せる。
「あ、それ義元左文字でしょ、もったいないなあ」
「お今は?」
「おやじの形見なんか、とっくに全部使っちゃたわよ」
お今は、空になった巾着袋を投げてよこす。
「あんたの魔法、コスパ悪すぎでしょ。あの量の宝石いくらすると思ってんのよ」
「仕方ないじゃない、私も加減がわからなかったし」
「桜ちゃん、魔力はあとどれくらい?」
「はい、すいませんが、もうほとんど。。」
「まあそう。でも、みんなまだ元気そうね」
「おい、富子、私を忘れんなよ」
「良子姉ぇ、あんた一番しぶとそうじゃん」
「うるさいわ、で富子どうすんの?」
「逃げ道は塞がれいるし」
「富子さま、では私が殿として血路を開き」
「そういうのダメだっていったでしょ。皆一緒にって約束だよ」
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2日前のこと。
私は赤松教康が将軍義教様などを招いた猿楽を催すとの話を聞いた。
これこそが「嘉吉の乱」、赤松教康による将軍暗殺と確信した。
私たちは、二条の教康の邸宅に急行し、赤松の伏兵を抑え、乱を未然に防いだ。
そして教康の邸宅から日野の屋敷に戻る途中であの男にあったのだ。
あの男に
烏丸資任に!
そして資任は事のすべてを明かした。
赤松教康をそそのかして将軍義教様を殺し足利幕府を滅ぼし、天皇親政の世に戻す計画を。
もちろん天皇などは傀儡に過ぎず、烏丸家が中心となった魔道政治を行うと。
そしてそれを邪魔だてする私は邪魔だと言い殺そうとする。
すかさず菫が資任を切り捨てようとしたが、それは叶わなかった。
資任には一切の刀剣による攻撃を受け付けない能力があったのだ。
お今に魔法攻撃してもらうことも考えたが、その威力もよくわからず京の街に被害が及ぶ可能性も考えて、私たちはいったんは地蔵院に逃げ込んだ。
そして赤松教康と同様に資任に操られた畠山義就の軍勢約6千が私たちを取り囲んだのである。
応仁の乱の前哨戦「御霊合戦」の戦場である地蔵院を中心とした私たちの攻防戦が開始されたのである。
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「そろそろ覚悟を決める時かな?」
「富子様がそうおっしゃるのであれば」
「死んでもその名前を歴史に残せそうね。応仁の乱のきっかけを起こした悪女として」
「はは、富子。それうける!」
私は脇差の柄に手をあてた。
その時である。
ヒュー、ヒュー、ヒュー、ヒュー
????
突然、私たちの南に布陣していた軍勢に対して空から無数の矢の雨が降り注いできたのである。
敵の将兵たちがうめき声を上げてバタバタと倒れていく。
空を見上げると!
そこには、大きな鳥の群れが舞っている
いやよくみると人間?違う?
天狗だわ!
そして宙を舞う天狗たちの中心にいるものの顔には見覚えがある。
「細川勝元様!」
「おーい、富子殿!遅くなってすまんわ。
丹波摂津天狗連合!わずか104騎ではあるが、助太刀いたす。
皆の者、放て!」
再び、矢の雨が敵をなぎ倒す。
「おーい、赤入道よ、開いたぞ!」
「ガハハハハハ、これはありがたい!ガハハハハハ」
ド!ド!ド!ド!ド!!ド!ド!ド!ド!ド!ドド
崩れた敵の間隙を縫って立派な黒鹿毛にまたがり薙刀を担いだ老武者が、私たちに向けて突進してきた。老武者は荷駄馬もつれている。
「山名宗全様!」
「お父様!」
「ハハハハ、春よ、久しいなあ、これは陣中見舞いだ。受け取れや」
山名宗全は、荷駄馬に乗せていた大きな袋をとっては、次々と私のほうに投げつけてくる。
袋の口がほどけ、中からキラキラと光るものがこぼれおちた!
金剛石、紅玉、柘榴石、珊瑚、翡翠、翠玉・・・
にわかに宝石の山が積み上がっていく。
「ハハハ、かつて六分一衆と呼ばれた山名家の莫大な富。
有馬持家の口車にのって、こんなもんに変えてしもうた。
いまや、無一文の入道じゃ、山名家も破産じゃ、ハハハ、愉快、愉快」
「お今!」
「よっしゃあああ、格の違いってやつを見せてやるわ!」
お今はおもむろに宝石を掴みとると、パッと空中に投げて術を唱える。
すわ、それは無数の火の礫への変化し、敵の将兵の頭上から降り注ぎ、焼き尽くす。
パッ
きらめく宝石たちは、また一陣の風となり、竜巻となって将兵たちを巻き上げて地面にたたき落とす。
時に、大きな水流となって将兵らを押し流し、、
あるいは、巨大な地面の割れ目となり将兵たちを奈落の底へ
宝石の山がどんどんと消えていく。
「ハハハ、持家の馬鹿娘!なんとも豪快じゃ!あっぱれ!あっぱれ」
「さすがレアリティ★5、うわっ、コスト高っ!コスト高っ!」
敵の布陣が一気に崩れていく。
「おーい富子殿、鹿苑寺じゃ。そこにおったぞ、烏丸資任が」
空中から細川勝元が資任の居場所を伝えてきた。
「姫様!前へ!前に進みましょう」
しかしさすがに鹿苑寺前に陣取った畠山勢の主力は手ごわかった。
お今の魔法攻撃に対しても散兵陣形をとるなどして被害を減らしている。
まずい・・・
そう思った時
わああああああああああああああああああああああああ
怒涛のような喚声が耳をつんざく。
北西のほうから突如あらわれた軍勢が畠山勢の主力に側面攻撃を仕掛け、切り崩しているのである。
どこの大名の軍勢?
いや、侍ではない!
農民たちだ!
手に武器をとった農民たちが人の波となって畠山勢を押し流さんとしている。
「おーい、お前たちー!」
農民たちの先頭にいた男がこっちに向かって走ってくる。
・・・義政様!・・・
えっ?
なんと義政様は私を素通りして、良子の前にたった。
「お前が良子だな」
「あたり」
そして義政様は、私のほうを振り返り指さす。
「残ったお前が富子だ」
・・・なんだかちょっと嬉しい。でも今はそんな事してる場合じゃないでしょ!
「義政様、この軍勢は?」
「見ればわかるだろう、農民たちだよ、
お前の危機を話したら、集まってくれた。
お前のために集まってくれたんだよ。
まあこの戦が終わったら農民たちの国にしてやるって約束もしちゃったけどね」
「姫様、鹿苑寺へ突入しましょう!」
「富子!お前が倒せ!この農民たちのためにもお前の手で資任を倒せ!」
「姫様、これを」農民の一人が私に武器を差し出した。
その後は夢中で何がなんだか分からなかった。
懸命に駆けて駆けて駆けて・・
ようやく烏丸資任の前にたどりついていた。
「ついに来おったか、日野富子。いや。」
「烏丸資任!お前だけは、お前だけは、この私の手で!」
「はは、刀剣などが儂に効くと思うてか、いや、まて」
「かーらーすーまーすけとー!」
ズガッ
私は手にもっていた武器で資任を胸を貫いた。
資任の胸から鮮血が噴き出す。
「くう、くそ、なぜ儂が・・・、彦仁の・・・忘れ形見・・・」
息絶えた資任の瞼を閉じてやる
ふう、終わった・・
コローンっ
気が抜けた私は資任の胸を貫いた武器を思わず床に落としていた。
それは、一本の「竹槍」であった。
・・・そうか・・・・
・・・そうだったんだ・・・
・・・私は最初から勘違いしていたんだ・・・
・・・私が転生したのは、『いっき』の世界だったんだ。
wikipediaより抜粋
『いっき』は、1985年7月に日本のサンソフト(サン電子)より稼働されたアーケード用アクションシューティングゲームである。
農民の「ごんべ(権べ)」を操作し、悪代官の屋敷まで殴りこみにいくという内容。
プレイヤーが使用する武器は鎌であり、ボタンを押すことでキャラクターが鎌を投げる。
竹槍
一定時間、自動で竹槍を突き出す攻撃ができるようになる。
この間、敵を倒す際の得点は増加し移動スピードも上がる。
代わりに鎌攻撃が使用不能になるため、画面上方の近接した敵にしか攻撃できないというデメリットがある。




