殺人ウイルスを作成している研究者を抹消せよ
設定は後々分かるようにします。
「今日のサんドイッチはとても美味しいです!」
常連の男が言う。
「あら、それはありがとうございます。今日はサンティはちょっと出かけておりまして。」
「おや、そうなのですか。だから今日はエリスさんが店番をされているんですね。」
「はい、そういうことです。」
「では、いつもどおりコーヒーをお願いします。」
「かしこまりました。」
常連の男はコーヒーを片手に新聞を開く。
「うむ、とても美味しいです!しかし、無礼ながらコーヒーに限ってはサンティさんの方が美味しいですかね。」
「そうですか、私も精進しますね。」
他の客からの注文が入り、エリスがそちらへ行こうとした時、常連の男が口を開いた。
「ああ、そうだ。エリスさん。どうも最近この国は物騒な事が多いです。エリスさんも是非、お気をつけて下さい。」
そして意味深げに微笑み、領収書とぴったりの代金を追いて店を去った。
「すみません!店員さん、先程から呼んでいるのですが。」
「ああ、失礼しました。カフェオレですか?」
「いえ、モカで。」
「かしこまりました。」
厨房に戻って領収書を軽く炙る。
『9番地に居る科学者が殺人ウイルスによるテロを目論んでいる。抹消せよ。』
エリスはそれを見て、困ったように口の端を上げた。
誰も居なくなったのを確認して、正面扉に鍵をかける。流石にもう深夜11時を回っているので誰もいる筈が無いのだが。サンティは明日の朝には帰ってくるだろうし、もし早く帰ってきても裏口から入るだろう。
常備品の光球と黒いジャケットを身に纏う。黒いハイヒールを身につけ、サングラスをかけて微笑むと、真夜中の闇にそれと同じくらい闇色のジャケットを翻した。
「よし、あとは西から物質が届けば完成だ。この腐った国をブッ壊してやんだ。」
スポイトから一滴の溶液を試験官に注ぎ、黄色になったのを確認して満足気に顔を歪める。
そして、ピンクの溶液が入った注射針を振って言った。
「よし、ドリュー。お前のんだ。これは。そろそろ奴らが嗅ぎつけた頃だろう。叩き潰してやれ。これを使ってなァ。」
ドリューと呼ばれた男は嗤う。
「分かってっツーの。言われなくてもなァ。どこに打てばいいんだっけか?このクスリは?」
「首スジだ。一時的に身体能力を底上げして、本来のチカラを使えるようにすんだ。もともとオメェは人間の中でも強えェ。それさえありゃァもう誰にも負けねェよ。」
「はっ。お高く買われたもんだ。期待しとけ。」
ドリューは鼻で嗤った。
「ま、そもそもたどり着けるか怪しいモンだしなァ。罠だらけも罠だらけ。それをこんな地下まで抜けて来ようなんてやつァこの世界に片手で数えられっか怪しいモンだ。」
「オレとしてもそれが一番手っ取り早くていい。まあ、奴らの事だ。罠で消耗した体で何秒俺に持つモンかなァ?」
声をあげて嗤う。
「はッはッはッ。四肢を裂いて生け捕りにしとけ。見せしめだ。」
「それはとても面白そうね。手伝ってあげてもいいわよ。」
居る筈のない人間の声が聞こえ、眩い光が広い室内を満たした。
「Welcome to The Nightmere!!」
電球が一斉に割れる。そしてだだっ広い室内に、灯りは彼女の後ろにしか無くなっていた。
「ーッ!何時の間に!?やれ!ドリュー!」
流れる動作で注射を自分の首筋に刺す。
「アア、最高の気分だ。」
恍惚の表情を浮かべ、ドリューが女に飛びかかる。
しかし彼女はそこにはもういない。
「遅いのね。いいわね、しょぼい罠を作ったそこの科学者にも、貴方にも死んでもらわなくちゃいけないんだから、もう少しおっかながったら如何かしら?」
「な、」
前に居た彼女の声が後ろで聞こえ、しかし、振り返った瞬間に確かにそこにいた筈の彼女が居なくなる。
「調子に乗んじゃねェぞ!」
腕を振り回し、威嚇する。しかしそれは彼女を掠めることもない
彼女は余裕綽々で天井の鉄柱の一端に腰掛けながら、言う。
「あらあら、この真夜中に。随分と威勢のいい事。」
彼女の煽るような口調に激昂する。
「…このッ、クソアマがァ!」
ドリューは手近にあった鉄骨を持ち、飛び上がって彼女に向かって振り上げた。
彼女は胸元から懐中時計を取り出して眺める。
「あら、元気になったのを悪いけど、時間切れね。」
ふっと腰をあげ、指を鳴らす。
眩い光が自分に向かって差し、刹那、彼女との距離が無くなる。首が斬られた事に気がつく事はもう無かった。
街の大時計塔が鐘を12回、鳴らした時だった。
「はい。この2つは私とエリスが作ったサンドイッチなのですが、どちらが私の物か分かりますか?」
「こっちですね。」
片方を一口食べ、優雅な仕草で口元を拭いながら常連の男は言う。
「何、故、そんなに直ぐに…やはりグルメの貴方には敵いません。おみそれしました。」
「はい。次回は一般人では見分けられないようなサンドイッチを期待しておきます。そうそう、どうやらこの国にテロを企んでいた不届きな輩が居たようです。どうやら今朝、四肢をもがれ、首にナイフを突き立てられるという、残酷な死体で発見されたようですが。やはり悪い事はできませんねぇ。」
「はは、やっぱり誰かしら、見ているものです。世の中そんな無茶苦茶にはなりませんよ。」
「そうですね。ああ、そうだ。私はマスターのコーヒーをいただきに来たのですよ。」
「かしこまりました。直ぐに持ってきます。」
厨房に戻ると、エリスが何事も無かったかのようにコーヒーを淹れていた。
「お前、やり過ぎ。目立ちすぎ。」
「ふふ、たまにはいいじゃない。それに、あなたよりは目立ってないわよ。」
尚も楽しそうにコーヒーを淹れるエリスにため息をつき、出来上がった自分のコーヒーを常連の男に持っていく。
彼はそれを美味しそうに飲み干した。
「ええ、やはりこの味です。わたしはこれを飲みたかったのですよ。」
そう言い、立ち上がる。
「さて、ではそろそろお暇させていただきます。また来ますね。」
代金に金貨が一枚紛れ込んでいるのを見て、サンティは微笑んだ。
「ええ、是非。」
頑張って続けます。もし仮に読んでくださっている方がいれば、応援よろしくお願いします。




