隣国の王子の暗殺を妨害せよ。
初投稿です。文の構造がおかしかったり、色々あると思いますが、長い目で文力の向上を見守って下さい。
真夜中の魔術師を見た者は言う。ある者はそれはスラッとした青年だったといい、ある者は普通の女性だったといい、ある者は子供のようだったという。しかし、誰もその顔を知らない。無理もない。目撃されたのは全て光の無い、真夜中の事だったからだ。
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「お待たせいたしました。サンドイッチです。」
今日のサンドイッチは腕によりをかけて作った。さて。出来はどうだろう?
「うーむ、サンティさん。今日も少し微妙ですな。」
ノータイムで常連の男に酷評を叩きつけられる。
「何がだめなんですかね…?」
「さあ、私にもわかりません。でも、このサンドイッチには重大な何かが欠けているんです…。」
どうも私はサンドイッチを作るのが苦手だ。
「まあまあ、練習してくださいな。代わりにコーヒーをお願いできますか?」
「はい!すぐにでも!」
しばらく経って持って行かれたコーヒーを常連の彼は美味しそうに飲む。
「ありがとうございました。流石。コーヒーが相変わらず絶品ですな。」
「ああ、それはありがとうございます。是非またお越しください。」
そしてマスターはおもむろに常連の男の持ってきた伝票を炙った。
『シュトリーズ家の頭首が来週いらっしゃる隣国の王子の暗殺を企んでいるらしい。阻止せよ。』
文字が浮かび上がってくる。
「なるほどね。これが今日の依頼か。一つだけとは珍しい。」
彼は店の中に誰もいない事を確認して、店の正面扉の鍵を締める。
「エリス。厨房仕事おつかれさん。ヒューズ。いい加減起きろ。」
厨房と天井裏に呼びかける。
「はいはい。お疲れ様。サンドイッチの腕は上がった?」
「さっぱり。ヒューズはもう起きる気が無いのかね。」
「でしょうね。あの子は緊急事態にしか顔を出さないし。今回はサンティが行ってきたらどう?」
エリスはサンティの愛用の懐中時計を顎でしゃくった。
「ああ、そうする。」
彼は仕事着を脱ぐ。オーバーオールで街へ踏み出した。
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椅子には中年の男が
「それで、来週の計画のための傭兵どもは呼んであるのか?」
「はっ。間違えなく。」
「仕事内容は何と伝えてある?」
「はっ。隣国ルキルチアの王子の暗殺。及びその間のシュトリーズ様の護衛という事を依頼しております。」
「しかし不安だ。今夜にも奴が現れたらどうする!?護衛は!?どれほど用意しているんだ!?」
「安心してください。元騎士団のクレイムがいます。彼ならばまず負けないはずだ。それで負けるようなら奴はまず人間ではない。騎士団と近接戦闘でやり合おうなんて、無謀な事はしないはずです。ですのでシュトリーズ様は部屋でゆっくりしておいて下さい。ここは町外れの丘の上。壁も作って遠くからの攻撃が当たらない布陣にしてある故。奴のつけ込む場所はもうどこにもありませぬ。」
「ハハッ。それは安心した。よしよし。もう良い。お主も下がるが良い。」
「はっ。失礼します。」
「クソが。」
クレイムは不満だった。まるで自分の実力が認められていないかのような完璧な布陣。奴が腕利きなのは知っている。しかし、騎士団にも入ってそこそこの成績を収めていた自分にまさか近接戦闘で勝てるはずなんて無いはずだ。真昼の日差しが熱い。重装備まで支給されて、鬱陶しい。今まで服一枚でもどんな依頼も成功させてきたクレイムにとって、重装備と完璧な布陣で相手を向かい討て、という命令は自身の尊厳を傷つけかねない物だった。
「クレイムの兄貴。あんたが思ってるより奴は強え。そうカリカリなさんな。俺は命が惜しいから、あんたがやられたら逃げるぜ。」
「ああん?俺を馬鹿にしてんのか?確かに油断はしねえ。だが戦う前から負けるのが決まってるような事を言ってんじゃねえよ。」
クレイムが突っかかる。
周囲は沈黙に満ちている。石ころの音一つもしない。クレイムは真夜中の魔術師が現れたらすぐに自分の貯めた魔力斬を見舞ってやろうと決めていた。鞘に刺した片手剣は魔力で満ちている。いつ来ても。どこから来ても斬り殺せる。そう思っていた。
それは、ひどく自然に訪れた。
左から爆発音。煙が舞い上がる。
「どうした!?何があった?」
左小隊の返事はない。
続けざまに右からも爆発音が。
「クソ!どこにいやがる!出てこい!」
その瞬間、時が止まった。そんな気がした。
「どうも。こんばんは。ご機嫌は如何ですか?」
後ろに夏の真昼に相応しくない黒いジャケットと目深に黒い帽子を被った男が立っていた。
身の危険を感じ、咄嗟にクレイムは叫ぶ。
「てめえが…おい!皆!囲い込め!」
「残念だね。皆もう夢の中さ。君もいかがかな?」
おどけた調子で言う男の声に我に帰った。
そして見ると起きている者は一人も居ない。
「ふざけ!」
クレイムは切りかかる。
男は高く跳ねて避けた。
「バカめ!そんな避け方したら死ぬぜ!」
クレイムが落ちてくる瞬間に斬りかかろうと魔力を貯めた時。
「いい剣技だね!でも僕は忙しいんだ。」
そして男は頭上に無駄に大きい魔法陣を描き、指を鳴らした。
「Welcome The Nightmere!!」
――辺りに夜の帳が落ちた――
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話には聞いていたし、実際に何故か一分程瞬間的に夜に変わるのを見たこともあった。しかし、太陽がねじ曲がって夜を作り出しているとは思うまい。
「クソ!そこか!」
片手で光魔法を使い、正面を照らす。それを男は人間らしからぬ速度で避ける。そして、正面から姿を消した。
「Good Night.」
首筋に何か刺さった瞬間にクレイムの意識は途絶えていた。
太陽時計が深夜12時を告げる鐘を鳴らす。そのとき、その場に立っているものは居なかった。
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目を開けた。下は地面。西日が眩しい。そこでクレイムは自分の置かれた現状を理解した。
「ああ、負けたんだ。何も出来ずに。」
謎の男だった。自分の命を奪わなかったということは、脅威とすら見られて居なかったのか。
彼の強さは何なのか。何らかのからくりがあるはずだ。自分の自分の剣に魔力を載せられるようになる加護のように、彼も何らかの加護を駆使して戦っていたのか?だとしたらそれはどんな加護なのか。考えても何一つ分からなかった。
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「サンティさん。あんたはやはりサンドイッチから手を引いた方が良いと思いますがね。」
「あら、また美味しくないですか?」
「そうですね。」
「何が足りないんですかね。」
「多分そこに解決策は無いのでコーヒーを頂けますか?」
「かしこまりました…」
苦い顔でコーヒーを持ってくるサンティに苦笑する。
「ああ、ところで、町外れに住むシュトリーズ卿が隣国の王子の暗殺を企んでいたようですね。何者かによって逆に殺されたようですが、全く。物騒な世になった物です。」
「ええ、そうですね。」
意味有りげな笑みを浮かべて、常連の男は記事をマスターに見せた。
おもむろに彼は立ち上がる。
「さて、では私はこのあたりで。また来ますね。」
彼がサンティに差し出したコーヒーとサンドイッチの代金には金貨が一枚混じっていた。
「ええ、是非。」
続きますように。




