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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第三章 ~成長編~

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088 六勇士の一人、《バルン》

お待たせして申し訳ありませんでした。

連載再開です。

「おいおいおいおい、どうするんだよこれ! 遅刻したら絶対不合格だぞ!」

「こんな時は私の鼻を使えばいいんですよ!」

「おぉ!」

「さ、その場所を示した紙を!」


 鼻をすんすんするポチが勢いよく走り出した時、俺は気付けばよかった。


 審査の場所を示した紙の発行場所は……――、

「……冒険者ギルドだな」

「……冒険者ギルドですね」

「残り時間は!?」

「あー! 後二十分ですー!」


 俺たちはすぐに冒険者ギルド内で、北東地区にある審査会場の場所を聞いた。

 その時、残り時間は既に十五分を切っていた。

 外に出た俺とポチは、そう、ふるふると震えながら互いを罵倒しあった。


「まったく、ホント最悪なスタートじゃないですか! 馬鹿マスター!」

「うるせぇ! 使い魔なら事前に目的地くらい確認しとけよ!」

「私正確には今使い魔じゃありませんー!」

「てめぇ、こんな時だけそんな事言いやがって! ホント最悪な使い魔だな!」

「あははは、それなら魔王にだって勝てますよね! 今回の審査行かなくてもいいんじゃないですか!?」

「行くよ馬鹿!」

「もう、気合い入れてくださいよ!」

「ほいのほい! オールアップ・カウント2&リモートコントロール!」

「ぬん!」


 俺は、冒険者ギルドの真ん前で「むん」と言って巨大化したポチの背に跨った。瞬間、ポチはその屋根に跳び上がり、屋根から屋根に跳び移りながら駆けた。

 最初は驚かれたが、スピードに乗ったポチの速度を捉えられる者はこの王都レガリアでもかなり少ないだろう。

 もし捕まった時はポチに攫われたとか――


「――言い訳しよう」

「こら、馬鹿マスター! 思考が漏れてますよ! 何て事考えるんですか!」

「冗談だよ冗談!」

「私もマスターに操られてたとか言い訳しましょう!」


 そうなったら多分二人とも捕まるな。

 俺を警備に突き出す事を想像しながらニヤニヤ笑ってるポチの頭を小突くと、ポチは尻尾を使って俺の背中を叩く。

 ふむ、相変わらず気持ちのいい尻尾だ。

 段々とそれがエスカレートし、俺がポチの耳に大声を出し、ポチの尻尾が俺の鼻をくすぐる頃、正面に目的地と思われる北東地区の古ぼけた大聖堂を見つけた。


「――っくしょい! うぃー。あれだ、ポチ!」

「え!? 耳がギンギン響いて聞こえません! もう一度!」

「あの大聖堂だよ! 残り三分、間に合ったな!」


 ポチが屋根から跳び降り、大聖堂の正面に二人で立った頃、残り時間は二分となっていた。

 いやー、ホント危なかったな。

 しかしこの大聖堂、どうも使ってる気配が……ない?

 あぁ、そうか。神への信仰を誰もしてないからこそこうなってる訳か。

 整備も修繕もされていない、大聖堂の廃墟と言った方が正しいかもしれない。

 ん……?


「どうしました、マスター?」

「……やっぱり。古いが壊し方は人為的なものだな。魔法、鈍器……凄いな、剣撃の痕跡もあるぞ」

「へぇ、わかるもんだねぇ」


 そんな若い男の声が、俺たちの耳に届いた。

 まぁ俺もポチも存在には気付いていたが、気配は消してなかったし、発見も容易だったからな。

 ただ、実力はランクSの昇格審査をするだけのものを持っている。

 数歩足を進めると、半地下の古い椅子に腰掛ける男の姿があった。

 半袖のシャツにロールアップの短パン、首にストールを巻き付けた若い……本当に若い男……というか男の子?


「えっと、ランクAのアズリーです。ランクSの昇格審査に――」

「あー、知ってるからそういった口上はいいよ。僕はバルン、ほんの一ヶ月前に六勇士になったんだ。今日は君の審査をやらせてもらうね」

「よ、宜しくお願いします」


 六勇士のバルン、ブレイザーが六勇士の勧誘を断った事で、次に声が上がった人物だ。

 てっきりダラスかブルーツに声がかかると思ってたが…………いや、ブルーツは性格的に難しいか。ダラスは月に一度、ベイラネーアに現れるか現れないかという話だし、どちらも難しいって判断か。そう言えばこの前ダラスが俺に会いに来ていたとダンカンが言っていたが、結局会えなかったしな。今度会えたら話を聞くとしよう。

 だが俺を知ってるってのはどういう事だ? 会った事はないはずだが。もしかしてレガリアに着いた段階から見張られてたのか?

 と、そう思っていたら、バルンの背中からひょっこりと小さな猿が現れた。

 顔も体毛も赤い猿。……珍しいな、スパイシーモンキーか。辛い物を好んで食べる動物だ。

 こいつは……使い魔だな。どことなく表情が人間臭いし、魔力の揺らめきを感じる


「元魔法大学の学生自治会書記のアズリーとポチだろう? 前に大学で見かけた事がある」


 やはり使い魔か、細く高い声だ。どうやら雄のようだな。

 魔法大学……? はて? 会った事あったっけか? いや、バルンは「見かけた」と言っただけだ。

 待てよ? 使い魔? そういえばアイリーンが俺の入学試験の時に「使い魔持ちは今期二人目」とか言ってたが、もしかしてバルンがそうなのか?

 俺とポチが思い出すのに頭を捻ってると、バルンがくすりと笑って答えを出した。


「はははは、思い出せないのは無理はないよ。僕は入学と同時に魔法大学を辞めたからね。それに、見かけたのも親善試合の時だけさ」


 そういう事か。


「しかし、魔法大学を辞めて……何故六勇士に?」

「確かにね。一応戦士大学は卒業してるし問題ないってさ。選考もなりふり構ってられないって事かな。はははは」


 バルンが肩をすくめて言った。待てよ……?


「……って事は、戦士大学卒業後に魔法大学を受験したと?」

「そういう事。独学で魔法を学んだけど使い魔契約までが精一杯だったよ」

「凄いですよマスター! まるで才能の塊です! マスターと違って! えぇ!」


 後でおしおきだな。えぇ。

 それに努力も惜しまないって訳だ。

 この若さ。おそらく二十前半という年齢だ。十五の時に戦士大学に入学し、四年で卒業、そこから魔法大学に入学し、入学を辞めたとしても……いやはや、末恐ろしい才能だ。

 魔法大学を辞めた理由は定かではないが、魔法よりも戦士として戦い研鑽した方が効率的だと判断したのかもしれないな。

 補助魔法や回復魔法、使い魔契約さえ習得してしまえばその通りだ。むしろそれさえ覚えていれば、下手にパーティを組むより効率的だ。

 それ以上は本質的に潜在的な才能とも言えるからな。

 なるほどなるほど、六勇士になるだけの才能は十二分にあるって事だな。

 どれ……、


 ――――――――――――――――――――

 バルン

 LV:92

 HP:2850

 MP:1003

 EXP:8192281

 特殊:剛力・剛体・疾風・高周波ブレイド・攻撃魔法《下》・補助魔法《中》・回復魔法《中》

 称号:戦士大学卒・魔法士・魔戦士・ランクS・六勇士・竜殺し・次代の勇・天秤の異

 ――――――――――――――――――――


 中々……だな。

 レベルより将来的な才能を見たか。いや、レベル以外の強さもあるって事だろうな。


「ご主人、こやつら中々やるぞ」

「うん、リッキー。流石十二士会で話題になる人だね。さて、長話もなんだし、早速審査に移ろうか!」

「あ、はい。よろしくお願いします」

「まずは実力から見させてもらうよー」


 早速だな。

 だが、冒険者のランクSなんてこんなものなのかもしれないな。強くなければ務まらないだろうし……。

 それにしても十二士会で俺の事を話題にしてるのはどこのどいつだ? 魔法士の二人、ガストンやアイリーンが話に出すとは思えないからドラガンか? そう言えば六勇士のチャーリーが俺の事を気にかけていたとかガストンが言ってた気がするな。なら彼かもしれないな。困ったもんだ。

 俺は杖を持ちバルンの前に立った。すると、


「さぁ、やろうかポチさん」


 ……は?


「……なるほど、そういう事らしいですね。わかりました、やりましょう!」

「使い魔の実力を見るって事ですか……」

「戦闘系の使い魔だって聞いたからね。ならポチさんの実力を見てからじゃないと総合的な判断はしにくいと思って。あ、ランクSの判定基準は決められてるけど、審査方法は審査員が決めていい事になってるんだよ」


 だが、ポチのヤツ、俺がいなくて大丈夫か?

 ちょっと心配だが、あのメルキィにしごかれたんだ。善戦してくれるはずだ。たぶん。


「ご主人、ポチ、それでは私が試合開始の合図をしよう」


 ポチとバルンは対峙し、互いを見据えている。

 その目、ポチは真剣そのものだが、バルンの目は…………ありゃ少しポチを舐めてる目だな。

 お前さっきリッキーの言葉に同意してただろうに……。


「では、始め」


 リッキーの少しやる気のない淡々とした声が、大聖堂の半地下に響いた。

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