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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第三章 ~成長編~

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077 封印の地

 しかしバラードの実力はやはり相当なものだな。

 野で育っていたらあそこまで成長しなかっただろう。

 笑う狐との戦いの際、タイミングよく出せていたら勝負は……いや、出したとしたらバラードは殺されていた。

 それ程の脅威を敵に与えるだけの要素がある。

 俺の「十の魔」もクリートが相手では通じなかっただろう。

 あれは本来(とど)め用の魔法だ。

 式が魔法より難しい魔術は使えないし、使えたとしても、高度な魔術は描けない。

 今の状態では中級魔法から上級魔法を十用意出来ればマシというところか。

 流石に特級の魔法を十となると…………悔しいがトゥースなら出来るんだろうな。あいつはやろうとはしなかったが、やろうと思えば大抵の事は出来る。

 実に恐ろしい筋肉野郎だ。


「ア、アズリーさん……今のは…………。いえ、これはあの分裂発動型魔法と……」


 回復したリナが驚いた様子で先程の一連の流れを振り返っているが、どうやら自分で結論を出せそうだな。

 実力を見せつける事が出来ただろうか? リナの追いかけるべき姿を見せてやる事が出来ただろうか?

 そう考えながら俺はリナを見つめていた。その視線に気付いたのか、リナは照れた様子で顔を背けてしまった。


「どうですバラード! これが私たちの実力ですよ!」


 ふふんと胸を張るポチだが、何故だろう? またくすぐってやりたくなる。


「ぐぅ、流石アズリー様です……」

「ちょっとちょっと! 私の活躍があったからこそマスターがどよんと輝いたんですよ!」


 どよんとって何だ、どよんとって。

 いや、確かにランクSSのカオスリザードを倒した時も、ポチの協力があったから勝てたんだ。

 やはりこの差は、限界突破の魔術でレベル上限の解放をしなければ辿り着けないだろう。

 この戦い……リナのための戦いだったが、リナに俺はどう映ったのだろう?

 落ち込んではいないみたいだが、腫れ物のようで余り触れられないな。


「見事でした、アズリー殿」

「ライアンさんも、凄く鍛えてますね。あの三人と正攻法で戦えば苦戦は必至だというのに」

「はははは、野で培った経験……としか言えませぬな」


 過去を振り返るように語るライアン。

 さぞかし危険な旅をしてきたんだろうな……。


「リナ、お前すげーよ!」

「ほんと、ちょっと見ないうちにあれだけ動けるようになってたとはね」

「えへへ、アズリーさんのおかげです」


 俺とライアンは二人で仲の良い兄妹を見つめる。

 前からそうだが、三人いると不思議と喧嘩がおこらない兄妹だな。

 リードとマナだけの時はしょっちゅう喧嘩してたが、ここにリナが加わるとピタリと喧嘩が止む。

 長い年月を掛けて良い関係築いた……とは違う不思議な関係。

 兄妹ってのはこういうものなのか。

 そういえば、アドルフはずっと正座してるバラードを見てるな。

 そこまで物珍しいのだろうか? バラードが恥ずかしがってそっぽ向いてるぞ?

 でもなアドルフ? 後ろで胸を張って物凄くアピールしているシベリアンヌ・ハスキーの事を、少しだけ見てやってくれないか?


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 リナと一緒にベイラネーアに戻ると、ツァルから念話連絡の魔術を教わったのか、ララが俺にコンタクトをとってきた。

 どうやら当たりを見つけたそうだ。

 俺とポチは、ポチズリー商店に着くと、リナのずるい上目遣いのお願いもあり、三人でフォールタウンに来る事となった。

 設置型空間転移魔法陣の前で待っていたララは、全力で近くを整地していた。


「ほほーい! あーすこんとろーる!」


 地がめくれ上がり、外壁だった岩も土もひっくるめて揉まれるように地中へと消えていく。

 ふむ、これは俺が作った湖から、予め水を運び土を濡らしたのか。

 そうする事によって柔らかくなった土を操作しやすくしているんだな。

 流石、自称農耕魔法使いと言うだけはある。


「む、お? アズリー! あっちで師匠がまってるぞー!」


 俺たちを発見したララは、元気よく西門の方向を指差した。

 俺はその方向へ向かおうとしたが、俺のパンツをポチが噛んで何かの合図を送ってきた。

 見ればリナが悲しそうな様子で、未だモンスターの死体が無数にあるフォールタウンの現状を見ていた。

 ポチが小声で「私はここに残ります」なんて気の利いた事を言うから、夕飯をワンランク上の料理にする事を約束してその場を後にした。

 背中で聞こえたポチの「街はボロボロ、リナさんの心もボロボロですが、私のご飯のために元気出してください!」というリナに掛ける言葉は、約束を破棄させるだけの力があったのは言うまでもない。

 というか破棄だ。


 西門では、ツァルが細い身体をクネクネとうねらせながら待っていた。

 沢山ある死体を見るに、どうやらここのモンスターが一番多かったようだな。

 ララには本当に頑張ってもらった。

 ポチの分のご飯代をララのために使おう。よし、そうしよう。


「お待たせして申し訳ありません」

「「構わんよ、どうせ農作業以外やる事はそこまで多くない。街の外、西門の先に古代の魔術陣と思われる形跡を発見した。強固な封印錠がされているが…………おそらくアズリー殿なら解錠出来るだろう」」

「……ありがとうございます。後程お話しを伺わせてください」

「「うむ、無事を祈る」」


 そういえば、そうだったな。

 確かフォールタウンに住んでいる時、ライアンに聞いた事がある。

 一番最初に街が崩壊した時、モンスターは西から現れた、と。

 つまり……国はフォールタウンを見捨てたのは結果であって真実じゃない。

 国は……いや、魔王の尖兵は意図してフォールタウンを滅ぼしたのだ。それも不完全に。

 人間が訪れる土地で無くなれば、ここにある何かに人間が気付く事はない。

 むしろ完全に滅びない方が都合がいい。

 少数ながら人がいれば、隠れ蓑になるし、近辺に何もないという事がわかるからだ。

 開拓された街近辺の探索は最優先されるからな……ん? そうなると何故このタイミングだったんだ?

 もっと前に発見されていても良かったはずだ。よくはわからないが、その場所へ行ってみればわかるかもしれないな。

 西門を出てから十数分後、小さな林の中に小さな(ほこら)があった。

 中には、ツァルが言った通り、封印されているであろう魔術陣が地面一面に描かれていた。

 魔術陣の式は見えないが、祠の入口の封印錠……これは、どこかで見た事があるような変な式が組まれていた。

 どこかで見た事あるんだが……少し違うような? しかしツァルの言った通り、俺の保有する魔力量であれば解錠する事が出来るだろう。

 俺は宙に浮かぶ赤い魔法陣に手を触れ魔力を込めた。すると両の手が、魔法陣から溢れ出た青い炎に包まれた。

 しかし、これは封印錠特有の解錠に必要な発動順序。

 炎にほぼ害はない。だが炎は触れた者の魔力、つまりMP(マジックポイント)を吸い取るんだ。

 MPだけは聖戦士並みと言って過言ではない俺だ。俺が解錠出来なければトゥースをここへ呼ばなくちゃならない。

 トゥースの場合、たとえここに空間転移魔法陣を設置しても面倒臭がって来てくれない可能性が高い。

 と、思っていたら炎が消え、異音を発して消滅していった。

 同時に砂が溢れるように封印の魔法陣が消えていった。


「うぉっ!?」


 俺はどれだけのMPが封印錠に奪われたのかと思い、鑑定眼鏡を起動した。

 すると驚くべき事態が眼前に書かれてあった。


「残存MP…………四千!?」


 およそ三万ものMPを吸い取り封印錠が解けた。

 恐ろしいな、やはり聖戦士とはとんでもない存在のようだ。

 聖戦士で解錠出来るという事は、聖戦士の魔法士や勇者は勿論、戦士でさえも解錠出来るという事だろう。

 戦士でMPが三万? 異常も異常、目を疑うような事実だ。


 封印錠の先には床一面の魔法陣…………これは?

 驚きとは続くものなのだと、不思議と思ってしまった。

 この魔法陣、この魔法式は、誰がどう見ても……いや、見る者が見なければわからないが、少なくとも俺の目には、空間転移魔法陣にしか見えなかった。

発売初週なので、しばらくCM載せさせてくださいm(__)m


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