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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第三章 ~成長編~

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071 召喚

 黒魔術。

 魔術の中で禁術とされている文字通り暗黒の魔術だ。

 元々、魔法は人間が作り出し、魔術は悪魔が作ったとされている。

 詳細は定かではないが、トゥースはその可能性を高く示していた。何故ならそれは、ダークエルフが魔術を扱う人種だからだ。

 ダークエルフは元々エルフ(、、、)と呼ばれていた。

 俺も知らない事だったが、ダークエルフは褐色肌の人間だけではない。人間のようにそれは多様だ。

 では何故、エルフがダークエルフと呼ばれるようになったのか?

 エルフの一部、はみ出した者たちが「悪魔召喚の儀」を行った。何を対価としたのかは不明だが、その契約によって、エルフには魔術(、、)が与えられた。

 これによりエルフは悪魔の知識を得た者たちとされ、以降ダークエルフと呼ばれるようになったんだ。

 ダークエルフたちは魔術を得た事により、力を発揮した。

 人間へ魔術を提供し、その地位を向上させ、国の一翼を担う存在となった。

 勿論、その過程で様々な魔術を作り出した。だが、更なる力を求めた異端の者が、恐ろしい魔術を開発した。

 それがツァルの言っていた「悪魔契約」の魔術。

「悪魔召喚の儀」では、何かしらの対価と引き換えに悪魔の知識を得る事が出来る。しかし、「悪魔契約」の魔術はそんな生半可なものではない。

 文字通り、契約をした者は悪魔の力、そう、黒魔術を得る。

 そして、死後は悪魔に魂を喰われ、天に召される事はないと言われている。

 実際死んだらどうなるかわからないが、神がいるんだ。悪魔がいて不思議はない。

 黒魔術は主にモンスターを操ると言われている。

 モンスターは悪魔のなりそこない。神の地を侵略に来た尖兵と言ってもいい。

 なるほど、黒魔術を用いてモンスターを召喚出来る。確かに操るともいうか。


「マスター、あの人、さっきからずっと睨んでますよ」

「途中までは笑ってくれてたんだが、残念だ」

「ぐう、う、う、う、う。そんな悠長な事をしていていいのか? ここへ援軍として向かっている女たちが死んでしまうぞ?」


 そう言ったクリートに、俺は首をかしげた。援軍に向かってる女たち?

 するとポチが耳をピンと立てて何かに気づいた。


「え、もしかしてレイナさんまだこちらに来てないんですか!?」

「え、だってさっきリードが東門にいるって言ってたぞ!?」

「え、ライアンさんがこちらに向かわせたって!」

「え、来てねーよ!」

「もう、馬鹿マスター!」


 叫んだポチは、東門と北門を繋ぐ通路に向かうため、外壁を飛び降りた。

 ぬぅ、また馬鹿が蓄積されてしまった。何故俺はこうも馬鹿と言われる機会が多いのだろうか?


「させると思ったか? 影領召喚(えいりょうしょうかん)!」


 今度はポチに向かって影が伸びる。

 雑魚ばかりとはいえ、無限とも思えるモンスターは流石にきつい!

 影を利用しているならば……これだ!


「ほい、ライト!」

「ふん、光に当たらなければどうという事はない!」

「くそ、ほいのほいのほい、ライト・カウント10&リモートコントロール!」


 うねうねと光を避けていた影道。

 一つの光では防げなかったが、この数の光源魔法なら消滅せざるを得ないだろう!


「ちぃ! ……何だ、その魔法は?」

「教えてやんねーよ!」

「まぁいい、お前から死ね! ヘルスタンプ!」


 嘘だろ!?

 何で大魔法が宙図(ちゅうず)なしで発動するんだ!?

 ……いや、これはスウィフトマジック!?

 くそ、やっぱり杖は必要なのか! 帰ったら新調しよう、そうしよう!


「ほほい、八角結界!」


 結界が発動し、降ってくる大型の闇の槌を、青雷が迸る光で包み込む。


「ほぉ、大魔法を結界で封じる事が出来ると知っていたか。対魔法士との戦闘は手慣れているようだな」

「あぁ、賢者相手に毎日な! 剣閃集降!」

盾頑防壁(じゅんがんぼうへき)!」


 ぬぅ、魔術の対応も流石だ。

 聖戦士愛用の高難度魔術、盾頑防壁(じゅんがんぼうへき)

 一定方向からの攻撃を無効化する魔術。一定箇所に集中する剣閃集降とは相性が悪すぎる。

 ……強いな。


宙図(ちゅうず)の速度も六法士以上……貴様何者だ?」

「さっき言っただろ、教えないって!」


 くそ、あれは未だに時間が掛かるが……出来るか?


「……ほいのほいのほいの――」

「情報量が多い宙図(ちゅうず)。怖いな。させる訳がないだろう! ヘルスタンプ!」


 くそ、やっぱり無理か!


「ぐ、ほほい、八角結界!」

「ぐう、う、う、う、う。いつまで持つかな? ボルテックウィング!」

「ほほい、八角結界!」

「ぐう、う、う、う、う、う! 面白い!」


 にゃろ、このスウィフトマジック、リキャストタイムがかなり早い。

 あのやり方を知っているって事か。

 だが、どうやってこの大魔法の包囲を崩す?

 ……隙だ、あいつの意表を突けるちょっとした隙があれば!

 ツァルもララもまだモンスターの相手をしているし、リードでは無理だ。

 ポチはレイナの下へ向かえたみたいだが……くそ!


「ヘルスタンプ&リモートコントロール!」

「っ!? ほほい、八角結界!」

「う、う、う。甘いな! スピードアップ!」

「なっ! うぁああああああっ!!」


 巨大な闇の槌が俺の頭上から振り下ろされた。

 それが耳を(つんざ)く大きな音を発して外壁を崩壊させる。

 リモートコントロールを使ったのはこういう事か。結界に包まれる直前に速度を上げて俺の結界を避ける。

 なんとも高度な魔法操作だね。


「いちちちち、あぁー、痛い!」

「う、う、う、う、う。生きていると……知っていた。だが、もう殺すぞ」

「やれるもんならやってみろ!」

「降魔ノ時……」


 その時、俺の背中でぞくりと冷たい風が走った。

 降魔ノ時……? 俺の知らない魔術。これはもしや……っ!?

 悪魔降臨の――――っ!?


「「させるわけにはいかぬな!」」


 叫ぶように後方からツァルの声が響く。

 声は煉獄のブレスとなってクリートを包み込んだ。

 そ、そうか。モンスターの掃除が終わったのか!


「くっ、マジックシールド!」


 対魔障壁を張り難を逃れたクリートを横目に、俺はヘルスタンプで受けたダメージを回復させていた。


「「アズリー殿、今奴に降魔ノ時を発動されてはならぬ! 生きたければ最大限の力を出しなさい!」」

「はい!」

「「策は?」」

「十秒時間をください!」

「「……任せたまえ」」


 よし、これなら!

 俺は前方に出たツァルにオールアップの魔法を掛けると、後退して魔方陣の宙図(ちゅうず)に入った。

 前衛がいてくれるのは非常にありがたい!

 だが、ツァルの実力は奴に通じるのか? いや、今はツァルを信じるしかない!


「……ほいのほいのほいのほいの――」

「させん!」

「「ふん、私がさせぬよ! カァアアアアアッ!」」

「ちぃっ、スプリングリフレクト!」


 ツァルのブレスがクリートの反射魔法で跳ね返されるが、ツァルはそのままブレスを吐き続けた。

 うぉ、まじか。跳ね返った分のブレス以上のブレスで全てを包み込んだ! 何て威力だ……。

 おっといけない。左手で念話連絡の魔術を――!


「ちっ……! 小癪な奴だ! アイシクルヘルファイア!!」

「「……竜族特化の大魔法か。アズリー殿同様、魔法式の宙図が異常な速度だな。無論、方法は違うようだが」」


 ツァルはブレスを吐き続け。ギリギリまでアイシクルヘルファイアの弱体化を図った。

 そして、直撃の寸前で、絶対零度の炎を強烈な尾撃で振り払った。


「ふん、少しはやるみたいだが、やはりダメージは免れなかったようだな」

「「ふっ、愚か者め。私は竜族であって竜族ではない。蛇神故大したダメージではない。それに、私の役目はもう終わりみたいだからな」」

「何っ!?」


 瞬間、俺の魔法陣が完成し、淡く黄色い光を放って起動した。


「な、何だその魔法は…………いや、この公式はっ!?」

「「そう、空間転移魔法(テレポーテーション)の公式だ」」

「出番だぞ! ブレイザー! ブルーツ! ベティー!」

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― 新着の感想 ―
[一言] >元々、魔法は人間が作り出し、魔術は悪魔が作ったとされている。  つまり白魔術(魔術の中で人々を救い、幸福に導く善なる魔術)もまた悪魔が作ったとされているわけですね?
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