◆エピローグ03:囚われのライアン
2019/8/23 本日二話目の投稿です。ご注意下さい。
「……今、何と言ったのでしょう?」
「『いつ祝言をあげるのか』と聞いたんだ」
それは、銀の副リーダーであるライアンが、銀のリーダーであるブレイザーの部屋に、今後の方針についての話をしに来た時に起こった。
ライアンが困惑した表情でブレイザーに聞くも、ブレイザーは至って真面目な様子で答えたのだ。
「そ、それは一体どういう事でしょう……?」
まさかブレイザーからそんな発言が出るとは思わなかったライアンが、その真意をブレイザーに聞く。
「先程あった銀の定例報告会……ライアンは途中で抜けただろう?」
「え? えぇ、銀に割り当てられたドリニウム鋼の武具をトウエッドに返還するため、中抜けさせて頂きましたが……っ! ま、まさかっ!?」
ブレイザーにそこまで言われれば、洞察力のあるライアンであれば気付いてしまう。
ブレイザーはライアンに頷いた後、羊皮紙を取り出し詳細を話した。
「ベティーから『ライアンとレイナはいつ結婚するの?』とあがり、ブルーツからは『こっちも予定があるからさっさと日程を決めて欲しい』と言われた」
(待て……待て待て待て。ベティーとブルーツは何を言っているのだ……!?)
「そして、リードとマナは『結婚資金は用意してるんだから使わないのは勿体ない』、『そうだそうだ!』と。アドルフは『頑張りましたので無駄にしないでください!』だそうだ」
(くっ、リードとマナめ! アドルフを抱き込んだなっ?)
「イデアは『後が閊えてる』と言い、ミドルスは『マジで?』と」
(い、いつの間にそんな仲になった、あの二人はっ!?)
「イツキは『着物問屋とは話がついている』と交渉を進めてくれているようだ」
(業務委託契約を解約し、再度銀に加入した途端にこれかっ!?)
「あぁ春華とナツが『着付けは任せろ』と言ってたな」
(あの二人も協力するとは……っ!!)
「因みに、私は『わかった、後程ライアンに伝えよう』と締めている」
「………………は?」
「もう一度最初から伝えようか?」
「いえ! 決してそういう訳では! いや、ですが、しかし!」
「ふふふふ、凄いな」
「へ?」
ブレイザーは羊皮紙の下部を見て、突然笑い出したのだ。
「『いえ、ですが、しかし』……『長は必ずそう言います』と書いてある。ちゃんとレイナが予想していたようだな」
「なっ!?」
ここで、ブレイザーがライアンにダメ押しする。
「最後にレイナからの伝言だ。『万事ぬかりなく』だそうだ」
(か、完璧じゃないか……っ!?)
頭を抱えながら、顔に脂汗を滲ませるライアンが沈黙する。
「とは言っても、こちらで予定を決める訳にもいかないからな」
その言葉に、ライアンの沈黙が解かれる。
バッと顔を上げたライアンが安堵の表情でブレイザーに言う。
「そうでしょうそうでしょう!」
「うむ。お忙しい身故、こちらから確認しておいた」
「カク……ニン……?」
「アイリーン様、ガストン様、薫様、潤子様……明日の正午からの一時間が丁度空いてるそうだ。短い時間の参加故、『心苦しい』とは仰っていたが、これは奇跡的と言ってもいいと思う」
「それは、お昼休憩でしょう?」
「ふふふふ、凄いな」
「……またレイナからの伝言ですか?」
「いや、全員からだ」
「………………聞きましょう」
「『『観念しろ』』と」
ライアンは再び沈黙した。するしかなかった。
そして深い溜め息を吐いた後、天井を見上げ、目を瞑る。
そしてそのまま、ブレイザーに言ったのだ。
「私は……私は負けたのでしょうな……」
「上層部への交渉はアズリーが行っている。勝てる訳がない」
「それはそれは……大きな柱ですなぁ」
「何せ、世界最強だ」
ブレイザーはそう笑ってライアンに言った。
顔を正面に戻し、そんなブレイザーを見たライアンは気付く。
いや、薄々気付いていたのだ。
「先の全員からの伝言……リーダーも入っているという事で?」
「言っただろう? 全員だ」
「……勝てぬ訳です」
銀の全員、各国代表、そして世界最強を揃えられてはライアンも何も言えない。
決意したライアンは深く深呼吸をした後、ブレイザーに頭を下げた。
「ご配慮、痛み入ります」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
当日、ライアンとレイナの挙式は魔法教室で執り行う事となった。
魔法教室の新婦控え室では、リナやマナ、ベティーたちがレイナを取り囲んでいる。
白無垢で統一された婚礼衣装を着たレイナは、周囲の女たちを虜にした。
「レイナさん……すっごく綺麗……」
「トウエッドの文化も素敵だねー」
リナとマナがその衣装を見ながら感動と感嘆の声をあげる。
すると、ティファが言った。
「でも、今回はレガリアの文化も入れるって言ってませんでした?」
「それが指輪交換。トウエッドではないらしいのよ」
ティファの問いに、ベティーが答える。
「薫様と潤子様がすっごい興味持ってたから、多分、今後トウエッドにもそういう文化を取り入れていくんじゃない?」
「へ~、それならレガリアもトウエッドの文化を取り入れていくのでしょうか?」
アイリーンの言葉をフユが拾う。
「今後は国交が増えてくでしょうから、どんどん変わっていくと思うわ」
「それにしてもアイリーン様、随分早くお着きになりましたね?」
イデアの問いにアイリーンは顔に焦りを浮かべる。
「べ、別にいいじゃないっ! 仕事がちょっと早く終わったのよっ!」
「まだ開始一時間前だよ?」
ナツの言葉は、アイリーンをピタリと止めた。
リーリアとフェリスは、化粧を担当している春華の筆遣いを、感心しながら見ている。
「何という巧みな技術……」
「凄いわね、今度教えてちょうだいっ」
「うふふふ。さ、出来んした」
レイナの化粧を終えた春華が腰を上げる。
目を開き鏡を見るレイナも、花嫁の顔を覗き込む女性陣も、皆目を輝かせた。
「「わぁ~」」
一方その頃、魔法教室にある新郎控え室では、ライアンが床に蹲っていた。
「は……腹が痛い……」
「ほい、聖生結界!」
ブライトがライアンに内部回復魔術を発動するも、ライアンが回復する事はなかった。
「駄目ですね、どうやら精神的にきている痛みのようです」
ウォレンの言葉により、ブルーツが納得する。
「なんでぇ? なら結婚式が終わったら治るって事じゃねぇか。心配して損したぜ」
「うむ、問題ない。明日には治ってる」
ブレイザーも同意を示す。
「長、しっかりしてくださいよ! 皆来るんですからね!」
「長……だ、大丈夫ですか?」
リードはバシンバシンとライアンの背中を叩き、アドルフは心配そうな顔つきである。
「ウォレン先輩、ガストン様はいつ頃いらっしゃるんです?」
オルネルの質問に、ウォレンが答える。
「もうそろそろ着くと思いますよ。ガストン様含め我々は、戦後処理のためトウエッドにいなくてはいけないのですが、こちらでやる事は、実は少ないんですよ」
「へー。まぁベイラネーアはドラガン様とテンガロン様がいれば何とかなるかー」
ミドルスはウォレンの言葉に理解を示す。
「じゃあアズリーは?」
バルンの言葉にウォレンがくすりと笑う。
「ふふふ、神父は式場で準備ですよ」
魔法教室の広間では、アズリーが結婚式を前に、緊張を顔に見せていた。
が、それ以上に気になる事もあったのだ。
アズリーが目を広間の隅にやり、小声で言った。
「……おい、いるのはわかってるんだぞ」
「あっれー? 何でわかったの、アズリーさん?」
「いや、お前ならいきなり登場して『これが本当の神前式だよ~♪』とか言いそうだからな」
「ぐっ、流石、よくわかってるね……」
何もない空間からいきなり現れるのは、本物の――神。
「いいからちゃんと終わるまで大人しくしててくれよ、ジョルノ?」
「まるで僕が大人しくしないような言い方だね?」
「お前の場合、そこに立ってるだけで大問題なんだよ」
「知らない人という設定は?」
「結婚式ってのは知人を呼ぶんだよ」
「僕はアズリーさんの知人じゃないと?」
「ライアンとレイナの知人を呼んでるんだ」
「じゃあどうやって参加すればいいの?」
「インビジブルイリュージョンじゃなくて、パーフェクトインビジブルを使ってくれればいいんだよ。この前あげただろ?」
「あ、そうか! でも寂しいなぁ~」
口を尖らせ我儘を言う神に、呆れ眼を送るアズリー。
ようやくパーフェクトインビジブルを使い、姿を消したジョルノがアズリーに聞く。
「ところでアズリーさん?」
「何だよ?」
「神父なんて出来るの?」
「大丈夫」
意外な自信を見せるアズリーに、ジョルノが「へぇ」と感心する。
「ちゃんと本で読んだからな」
以降、ジョルノは結婚式の行く末に関心を示すのだった。
可哀想なライアン。




