↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
最終章 〜悠久の愚者編(下)〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

456/497

◆447 魔王軍の動向

「「オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!」」


 アズリーの開戦の合図と共に、人類が吼えた。


「「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」」


 皆が眼前には、一生耳に残るであろう一億の咆哮。

 されど、この場で引くものはいない。今日この場のこの戦いは、その一生を勝ち取る戦い。それを知っているからこそ、誰も引く事をしない。


「行くぞおらぁああああっ!!」


 ブルーツが駆け始める。

 今そこにいるのは世界最高の特攻隊長でも、銀の特攻隊長でもない。

 アズリーの親友の、いつものブルーツが、いつものように駆け始めただけである。

 主力部隊の各々が肉体強化の特殊能力を発動し、中央後方からは主力に向かって多くの支援魔法が届けられる。


「蹂躙(じゅうりん)だ」


 ルシファーの合図と共に、ゴブリンが、オークが、オーガが、無数のモンスターが、アルファが、ベータが、クリートが召喚した下級悪魔が……駆け始める。

 大地を揺らす大行進にも、ブルーツの顔は変わらない。その背を追うブレイザーの、ベティーの、春華の、ライアンの、アージェントたちの顔は変わらない。

 それは、アズリーを信じたブルーツを、ブルーツを信じたアズリーを、信じているからである。

 中空に浮かぶアズリーが魔力の台(マジックテーブル)に杖を置いた。直後、宙図(ちゅうず)が始まる。

 黒帝ウォレンは言った。アズリーに許された行動は、初手のみだと。

 それ以外の行動は、全てルシファーに邪魔される。そういう判断であり、事実、ルシファーもそのつもりでいた。

 だからこそアズリーは、決死の覚悟で自分を信じるブルーツたちへの最大の援護として、アズリーが持てる最高の魔法を選んだ。


「ほいのほいのほい! ゲート・イーター(、、、、、、、、)・カウント12!」


 主力部隊を縫うように放たれた漆黒の魔法。

 十二方に向かうゲート・イーターのサイズは、かつてのソレを優に超えていた。主力部隊の鏃陣と共に走る巨大な魔法に、レガリア城のバルコニーにいるビリー、クリート、イディアの目が見開かれる。


「何だ……あれは……!?」

「我らが使う魔法? いや、それ以上の闇……!」

「一本の矢が……十三本に増えおった!」


 三人が驚愕するも、ルシファーは嬉々としてそれを見るだけだ。


「面白い。それに、まだ一つ残っているか(、、、、、、、、、、)」


 ルシファーはアズリーがいる空を注視した。

 そこには、両手と両目を使ったアズリーの十二の魔法以外に、もう一つの魔法陣があったのだ。


「「馬鹿な!?」」


 三人の悪魔は、十三個目の魔法の存在に驚愕する。


「そうか、杖(、)を使ったか」


 ルシファーはその技術を一瞬で看破する。

 その言葉を聞き、ビリーが何かに気付く。


「っ! 手元から離れた杖が魔力を発する事はない。しかし、魔力の台(マジックテーブル)を使い魔力の波を掻き分ける事は出来る。予め魔力を放出しておき、操作した杖で立体的に魔法陣を描いた……!? あれ程の魔法を宙図(ちゅうず)し、放ちながら……だと!?」


 それきり、言葉を失うビリー。


「くくくくく、余をもってしても、奴の魔法発動技術には……敵わぬかもしれぬな」

「「っ!?」」


 ルシファーが、自分にアズリーより劣る部分があると認める。

 それは、悪魔の陣営にとって明らかな異常だった。だが、ルシファーは言った。

 ビリーは、クリートは、イディアは、アズリーへの驚愕と共に、主(あるじ)である魔王ルシファーをも恐れた。

 それは、魔王ルシファーに些かの油断もない証拠。悠久の愚者アズリーを、真の敵として認めている証拠なのだ。


((……なるほど、どちらも化け物か))


 アズリーに恐怖を、ルシファーに頼もしさを感じつつも、やはり恐怖する。

 眼下に蠢(うごめ)く味方は、ブルーツたちの進行を抜き去ったアズリーのゲート・イーターによって呑み込まれ、消えていく。

 やがて、残ったモンスターの一団とブルーツたち主力部隊が近付く。

 これに対し、アズリーの十三個目の魔法が発動する。


「ほい……ポイントロック(、、、、、、、)! コード、『モンスター(、、、、、)』!」


 捉えたのはブルーツたち主力部隊に迫るモンスター。部分的地形を見据え、全てのモンスターに対して放つソレは、強力な楔(くさび)。


「「おぉおおおおおおおおおおおっっ!!!!」」


 ブルーツたちを前に、モンスターたちが一斉に動きを制御される。

 そう、ブルーツたちはそのまま駆けた。アズリーに言われたとおり、真っ直ぐ、突っ込んだのだ。


「っしゃあああああああああああああっっ!!」


 硬直したモンスターをなぎ払い、吹き飛ばし、斬り刻み、叩き潰し、ブルーツたちは最初の衝突を乗り越えた。

 昨晩、ブルーツが見たイメージを払拭するかのように、アズリーの援護はこれ以上なく皆を、ブルーツを助けた。

 戦争において一番の要所がこの衝突である。これに呑み込まれれば、たとえ主力部隊であろうと壊滅的ダメージを負う。しかし、一度(ひとたび)魔王軍の奥深くに潜り込んでしまえば、それは強力な毒(、)となる。

 中央からそれを見守っていた黒帝ウォレンが、感嘆の声を漏らす。


「見事な……本当に見事な初手でした、アズリー君」


 中空で脂汗を滲(にじ)ませながらも、アズリーはこれを成した。

 ブルーツたちに被害のないまま、敵陣に飛び込ませたアズリーの功績は非常に高い。

 そして、それを成したのは、アズリーの実力以上に、アズリーを信頼した仲間たちにあったのだ。誰も躊躇(ためら)う事なく、魔王軍に飛び込んだ。一朝一夕(いっちょういっせき)で出来る事ではない。

 実力と信頼――このどちらかが欠けていたとしたら、この現実は起きなかった。これこそが正に、アズリーの足跡と言えた。


「おぅら! こっちもやんぞ、ほい! ギヴィンマジック! ほい! マジックシフト!」


 中央の中心にいるトゥースが自身の足下に巨大な魔法陣を二つ敷く。

 ギヴィンマジックは減少したMP(まりょく)を回復させ、マジックシフトは、トゥースの魔力を他者が使える。これをする事により、魔力の全体的な枯渇を防ぐのだ。

 当然、全ての魔法士の足下には自分用のギヴィンマジックを敷いている。

 それは左翼でも、右翼でも、中央前後方でも起きていた。


「行くわよ……」


 赤帝牛(せきていぎゅう)ウェルダンに跨がったリーリアが、ジョルノの剣と自分の剣を引き抜きながら呟くように言った。

 五天の霊獣を率いるリーリアは全ての軍の遊撃を担う。


「全てはリーリアの思うままにやればいい。俺はただそこへ向かって走るだけだ!」


 ウェルダンの意気込みに、残りの四天が反応する。


「さて、蹴散らしてやるかの」


 黒亀(こっき)が、


「モンスター全てがここに集まったのです。良い機会じゃありませんか。滅ぼしましょう」


 黄龍(こうりゅう)が、


「この命、この戦場にこそ賭ける意味がある……!」


 灰虎(はいこ)が、


「準備はしてきた。後はやるだけだ」


 紫死鳥(ししちょう)が言った。

 すると、リーリアが叫ぶ。これまで幾千、幾万もの戦闘を乗り越えてきたリーリアが大きく叫ぶ。


「ぶっ――」

「「――殺すっ!!!!」」


 それは、リーリアと五天の霊獣が示し合わずに発した、究極の殺意。

 ウェルダンが駆け始めると同時に、全ての霊獣が戦士リーリアに付き従うように走り始めた。

 これを見ていたルシファーがリーリアを見ながら言った。


「ロイド(、、、)」

「はっ」


 即座に反応したレオンは、ルシファーの冷たい目を見ながら、その身体を震わせている。


「アレはお前だ」


 リーリアを指差して言ったルシファー。


「かしこまりました」


 この場でリーリアを前に戦える人材は、レオンしかいなかった。

 それ以上に、他の天獣をかわしながらリーリアと戦う事の方が困難。

 レオンの才能はルシファーも認めていると、公言したと言ってもいい。

 クリートはこれを歯がゆそうに見る。

 レオンが空中浮遊魔法(レビテーション)を使いリーリアの下に向かう。

 その背中を追ったクリートが、ここで何かに気付き、笑う。その笑みにビリーは気付く。


(なるほど、リーリアの手によってレオンが死ぬ可能性を見出したか。そうすればイディア様を独占出来るとでも思っているのか? ふん、どうしようもない程の馬鹿だな。今日、この戦場で何も考えずに生き残れると、本当に思っているのが滑稽でならん。そしてそれは……イディア様(、、、、、)も同じ)


 そんなビリーの思惑すら見透かした様子のルシファーが、口の端を少しだけ上げる。

 そしてルシファーはそのビリーに指示を出す。


「ビリー、左だ。右翼の鼠(ねずみ)の教え子たちを今度こそ葬って来い」

「はっ」

「クリートは右だ。左翼にいる十二士のなり損ない共を蹴散らせ」

「はっ!」


 二人がルシファーに小さく頭を下げると同時に、その姿を消していく。

 最後に残ったイディアがルシファーに振り向く。


「妾(わらわ)は?」

「これ(、、)を使え」


 ルシファーは灰色のマントを翻し、その背後にあった魔法陣をイディアに見せた。


「いつの間に……!」

「すぐ終わる。終わり次第レオンと合流しリーリアに止(とど)めを刺せ」


 その指示に、イディアは薄気味悪い笑顔をルシファーに見せた。


「かしこまりました」


 先の三人同様、小さく頭を下げたイディアが魔法陣の中に消えていく。

 この場に残ったのはルシファーのみ。そんなルシファーを絶えず睨(にら)む男が一人。


「さっさと来い。終わらせてやるぞ、アズリー?」


 空から徐々に近付くアズリーを嬉しそうに見つめるルシファー。

 魔王と愚者の激突まで、あと僅か。

誰がどこに行くか決まりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』
おっさんは、魔王と同じ能力【血鎖の転換】を得て吸血鬼に転生した!
ねじ曲がって一周しちゃうくらい性格が歪んだおっさんの成り上がり!

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。