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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第十二章 ~地獄編~

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◆396 ドンとの再会

昨日は忙しく更新出来ませんでした。本日は二話投稿予定です。


2019/2/11 本日二話目の投稿です。ご注意ください。

「ポチ……おいポチ!」

「はい!?」

「よかった。悪いけどブルーツと春華(はるはな)に回復魔法を頼む」

「あ、え? はい。わかりました!」


 ルシファーが去った後、アズリーはポチの頬を叩いて起こした。

 気絶する二人の治療をポチに頼み、アズリーは落としたドリニウム・ロッドを拾う。


「マスター、お二人とも起きません……」


 ポチが春華(はるはな)を背に乗せ、ブルーツを咥えてやってくる。


「ルシファーの魔力をモロに受けたからな。ちょっとした魔力酔いもあるんだろう」

「……やはり、ガスパーはルシファーなんですね」

「あぁ。間違いない。あの口調、あの目、そしてどういう訳か……今は奴が魔王だ」

「ど、どういう事です!?」

「おそらく、魔王を倒したって事……だろうな。これで魔王の魔力が消えた訳がわかった。なるほど、ガスパーならば、ルシファーならば誕生した魔王を倒す事が出来る」

「それに、前にレガリア城で会った時より強くなってましたよね?」

「やっぱりそうか? 俺は魔力が見えなかったけど、確かにあの時の拳は、レガリアで戦った時以上だった」

「倒せますか……?」

「今のままじゃ絶対に無理だ。まずは魔力を取り戻さなくちゃいけない。まずあの魔力に抗う術がなけりゃ、奴の前に立つ事も出来ない。それには究極限界(アルティリミット)に近い魔力解放が必要だ」

「……それってつまり、マスターかトゥースさんしか、ルシファーの前に立てないって事ですよね?」


 そんなポチの指摘に、アズリーは手をポンと叩く。


「あぁ、確かにそうだなっ!」

「何、呑気に言ってるんですか! ギリギリまで見てたんですからね! 人類の頂があっさり負けちゃったじゃないですか!」

「いや違うって! 魔力の拘束さえ無ければ何とかなったって! たぶん!」

「いいえ! あれはかなり負けてました! マスターの魔力が戻ったとしても六対四(ろくよん)、いえ、七対三(ななさん)くらいの確率で負けてました!!」


 そう言い切ったポチ。

 しかしアズリーは目を丸くしてポチを見た。


「…………何ですかっ?」

「いや、意外に高い見積もりだなと」

「っ! さ、三割ですよ三割! いえ、もしかしたら二割かもしれません! ホント! 一割ですー!!」

「さすがに下がり過ぎだろ! つーか何照れてんだよ!」

「照れてなんかいません! 私は冷静にマスターの実力を分析してるんですー!」

「じゃあ俺もお前をちゃんと分析してやるよ!」

「どういう意味ですか!?」

「あのヘルエンペラー、おそらくポチじゃないと対処出来ないからな!」

「ふぇ!? ななななな何でですか!? マスターだってトゥースさんだってリーリアさんだっているじゃないですか! それにウェルダンさんやブルさん、紫死鳥(ししちょう)さんだっているし、他の天獣さんだって来るじゃないですか!」

「俺はルシファーとやらなくちゃいけないし、トゥースが参戦してくれるとは限らねぇよ! それに、あっちにはまだレオンやイディア、ビリーにクリート、それに操られてる戦士や魔法士、更にはアルファやベータだっているんだぞ!? ルシファーの使い魔になるんだ。きっと今以上に強くなるに決まってる。幼体の内に叩きたかったが、今回は準備が足りなかった。そう思うしかない!」

「何で……何で私はいつもマスターに振り回されちゃうんでしょう……」


 よよよと座り込むポチ。

 しかし、アズリーはそれに反応する。


「いやいや! どう考えたって俺が振り回されてるから!」

「さて、まずはトウエッドに戻って報告ですね!」

「どうやったらそんな簡単に話を切り替えられるんだよ!?」

「あれ? ブルーツさん結構美味しいかもしれません!?」


 アズリーの声には耳を塞いでしまったポチ。アズリーの悪態には反応しないものの、「トウエッドに帰る」という言葉には反応し、クッグの村跡地へと戻るアズリーたち。

 そこでは、大勢の戦士や魔法士が黄金を運んでいる真っ最中だった。

 クッグの地下広場にはアイリーンがおり、アズリーとポチの帰還に気付く。


「それは何?」


 むすっとしたアイリーンが、アズリーの抱えるブルーツと春華(はるはな)を見る。


「えっと……お土産です?」

「ついに人を売る商売に手を出したのかしら?」

「買うだけで踏みとどまってます……」

「知らない人が聞けばそれだけで通報よ。ちょっと、この二人をトウエッドまで連れてってあげて」

「「はっ!」」


 アズリーが抱える二人の搬送を、アイリーンは部下に命令した。


「……それで、リナたちから聞いたけど、異変ってのは何だったの? その二人が気絶するくらいには危険だった……って事はわかるけど?」


 そんなアイリーンの指摘と推測に、アズリーとポチは互いに顔を見合わせて乾いた笑いを浮かべた。

 そう、アイリーンは解放軍(レジスタンス)のリーダー。起こった事は全て報告しなければならない。今の二人の乾いた笑いは、その報告を聞いたアイリーンが絶対に怒るから「頑張って耐えよう」という二人のサインだったのだ。


「ばっかじゃないのっ!? ガスパーが現れたのなら即逃げなきゃ駄目でしょうが! たとえその二人を置いてでもね! えぇ知ってるわよ! アナタが絶対にそれをしない事くらい! だからアナタが慕われるのも勿論わかってるわよ! けど、慕われるが故に怒ってくれる人が少ないの! だから私が怒ってあげてるの! わかる!?」

「はい……」

「よくわかってます……」

「とても」

「よくわかってます」


 アズリーとポチは俯きながらアイリーンのお説教を聞く。

 人類存亡をかけた戦い。その最大戦力である二人が、軽率な行動をとった事。

 二人にもそれがよくわかっていた。


「でもマスターがぁ――」

「いや、ポチだって――」


 二人にもそれが概ねわかっていた。

 当然、アイリーンにも二人の性格がわかっていたので、呆れて溜め息を吐くまで、そう時間はかからなかった。

 無事アイリーンから解放された二人に、転移してきたトレースが近寄る。


「アズリーさん、お疲れ様です」

「あぁお疲れ様です」

「トウエッドにドン・キサラギ様がいらっしゃいました。レウス君もアズリーさんに会いたいみたいですが、いかがなさいますか?」

「っ! 思い出した! これ!」


 アズリーは獄龍ヘルエンペラーが復活した時、奥の部屋で手に入れたガルム・キサラギの手紙を懐から出して言った。


「そういえば、リナさんやオルネルさんからもう一つの手紙はアズリーさんが持っていると報告を受けていました。その様子では、既にご覧になられたようですね」

「えぇ、今すぐトウエッドに戻りましょう! それと、レジアータ(、、、、、)に繋がる空間転移魔法陣の持ち主、それとブレイザーとベティーを!」

「レジアータ……ですか。かしこまりました。手配します。では一度トウエッドまで」

「はい!」


 アズリーとポチは、トレースと共にトウエッドへの空間転移魔法陣に乗る。

 転移したトウエッド首都――エッドの魔法教室広場では、王都レガリアでのアズリーとの出会いをきっかけに、ベイラネーアの増強に協力したドン・キサラギ、そしてその息子であるレウス・キサラギが待っていた。


「あ! 兄ちゃん!」

「お、レウスじゃないか! 大きくなったし、それに元気そうだな!」

「うん! ベイラネーアではありがとう!」

「ベイラネーア……?」


 心当たりのないレウスの礼に、アズリーが首を傾げる。

 すると、ドン・キサラギが笑みを見せながらアズリーに近付いた。


「実はあの魔王復活の際、私たちはベイラネーアに来てたんです」

「そうでしたか。だからこんなに早く来られたんですね」

「本当に助かりました。あのまま放置されていたとしたら、国中……いえ、世界中が大混乱に陥っていたでしょう」

「ベイラネーアは大丈夫そうでしたか?」

「テンガロン様とドラガン様が動いてなんとか……と言ったところでしょうか。それも、アズリーさんの功績がなければ、とても無理でしたよ」

「いえ、俺は俺に出来る事をしたまでです」

「こちらにはどうやって?」

「あちらの方に送って頂きました」


 ドンが顔を向ける方向に首を向けるアズリー。

 するとそこには、チワワーヌのタラヲを頭に載せた、ティファの姿があった。


「ティファ、帰ったんじゃなかったのかっ?」


 アズリーとトゥースが戦い、その後、ティファはベイラネーアに帰った。

 そんなティファが再びトウエッドに来た事に、アズリーは驚いていた。


「魔法大学……しばらく休学になっちゃいました」


 そんなティファの説明に、アズリーは得心する。


「あぁ、確かにそうだよな。魔王が復活ともあっちゃ大学を続けるのも難しいもんな。となると魔法大学関連のティファの良称号は諦めた方がいいか……」

「はい。これで私もこっちにいられますっ」


 嬉しそうに意気込むティファ。

 そんなティファの反応に、タラヲが一々驚いている。


「魔王が復活したというのに何故ティファは嬉しそうなのだ!? 解せぬ! 解せぬぞ! がしかし、この復活は我輩(わがはい)への挑戦と見た! ついに狼王と魔王の雌雄が決するぞ! ふはははは! 我が魔爪にて魔王を切り刻んでくれる! なぁティファよ!?」

「黙ってて」

「くぅん?」

「五月蠅い」

「はい」


 そんなやり取りにアズリーが苦笑する。

 そこに、トレースが念話連絡で呼んだブレイザーとベティー、そしてララとララに巻き付くツァルがやってきた。


「どうしたのよアズリー?」

「急用らしいな」


 ベティーとブレイザーが呼ばれた用件を尋ねる。


「あぁ、二人とも。呼んで悪いな。……で、何でララ?」

「私もわからないぞー?」


 ララが首を傾げながら言う。

 すると、それを代弁するようにツァルが口を開く。


「「何でもレジアータへの空間転移魔法が必要だとか?」」

「あぁ、そういう事でしたか。ララがレジアータへ繋がる魔法陣を持っていたんですね」

「「そういう事だ。ララ、ここに魔法陣を」」

「はい、お師匠様っ!」


 ララが空間転移魔法陣を描いている中、アズリーはブレイザーとベティー。そしてドン・キサラギの前に行き、ガルムの手紙を見せた。

 すると、ブレイザーとベティーがニヤリと笑った。


「なるほど、だから我々を呼んだのか」

「兄貴がアレじゃね~。ま、しょうがないっか!」

「他の者も呼ぼう。ナツもいた方がいいな」

「おっけ~、任せて」


 ベティーが念話連絡により銀に招集を掛ける。

 そして、ガルムの手紙を見ていたドンが呟く。


「これは面白い……!」


 人間の力はか細く弱い。

 だが、(つむ)ぎ合わせた糸は、より太く、より強靱になっていく。

 ルシファーの復活を知りつつも、アズリーの瞳は……静かに、しかし着実に燃えているのだった。

荒木風羽先生による『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ と、ポチの大冒険』第三巻は明日2月12日発売です!!

宜しくお願い致します。



また、コミック アース・スター様にて、三巻の続きであるコミカライズ19話も読めます!

19話のイラストを荒木先生が描いてくださったので、下に貼ります。(転載許可頂きました)







挿絵(By みてみん)


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