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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第九章 ~激動編~

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286 再会

2018/1/31 4話目の投稿です。ご注意ください。

 アイリーンと別れ、ベイラネーアを去った俺たちは、昼前、レガリアの手前、レジアータに着いていた。


「お疲れ様ー」

「はい、お疲れ様ですー!」

「それじゃあ早速――――――」

「――――――ご飯ですか!?」

「まぁ、それもあるけど――――」

「――――ご飯ですね!?」

「っ――」

「――ご飯! ……あ……」

「お前、わざとやってるだろ?」

「ぶー! いいじゃないですかー! お腹空いたんですー!」


 ポチは不満を漏らすようにそう言った。


「まぁ走り通しだったからな。よし、それじゃあまずは飯にするか」


 その後、ポチの頭を捻らせたお店選びに一時間も付き合わされたのは、何故だろう。何故だろう。

 最終的に「ディルムッドキッチン」という食事処に入った。何でも、ポチ曰く「匂いが違う」だそうだ。

 嗅覚は戻ってないはずなんだが、どうやら食に対しては別のようだ。


「ったく、さっさと食いたかったんじゃないのか、お前!」

「だってだって、レジアータってあまり来ないからどのお店に行くか迷うじゃないですかー! 色んなお店に行くのは乙女の嗜みですよ!」


 止まらないの食欲と楽しみの間違いじゃなかろうか?

 俺はポチの止まらない口を見ていた。すると、ポチが肉と共に野菜をふんだんに口に運んでいたんだ。


「ってあれ? ポチ、お前そんなに野菜好きだったっけ?」

「何かここのお店は違うんですよ! トウエッドで言う「箸が進む」とはこの事を言うんですね!」


 口しか進んでないぞ?

 ポチが美味しそうに食事をしていると、店主と思しき男が嬉しそうに近付いて来た。


「ようこそ、ディルムッドキッチンへ。お味はいかがでしょうか?」


 優しそうな雰囲気を漂わせた笑顔の似合う店主だ。


「あ、えっと……うちの使い魔が珍しく野菜を食べているので、相当美味しいんじゃないかと。あ、勿論私も美味しく頂いています」

「それはよかった! ここは最近開いたばかりなんですよ。是非またいらしてくださいっ」


 道理で綺麗な店だと思った。

 椅子やテーブル何かは中古みたいだが、店の外観は綺麗に見える。

 元の時代に戻ってもあるのだろうか? もしあれば、是非来てみたいものだ。味の進化を、文字通り味わえるかもしれないからな。

 店主の雰囲気も好感持てるし、いつか皆で来てみたいものだ。


「ありがとうございましたー!」


 店主の嬉しそうな声を背に、俺はお腹を(さす)りながらディルムッドキッチンを後にした。


「新規開拓成功でしたね! 現代にもあるならまた来たいですー!」


 口回りを舐めながらポチがそう言った。

 やはりポチも気に入ったみたいだな。


「ご夫婦で営業されてるようでしたよ」

「へぇ、それは気付かなかったな?」

「マスターからは反対側でしたからね。奥のカウンターに奥さんらしき方がいらっしゃいました」

「ふ~ん、珍しく観察してたんだな」

「観察って程じゃないですけど、ちょっと気になったので」

「気になった?」

「お腹がポコンとしてました! 妊婦の方ですね、きっと!」

「へぇ~、それなら未来は明るいな! 現代でも営業してる可能性は高いぞ」

「楽しみですー!」


 ポチが俺の足下をくるくると周り、跳ねながら喜ぶ。

 ところで、現代に戻った時、俺たちはどこに飛ばされるのだろうか?

 また見当外れなところに飛んで時間のロスが起こるのは避けたいところだ。

 まぁなるようになるしかないんだけどな。


「それで、マスター? この後の予定はどうするおつもりで?」

「明日の早朝、遅くとも朝にはレガリアに着きたい。ここからレガリアなら、おそらく今日の夜に出れば間に合うだろう。それまではちょっと昼寝でもしていくか」

「つまりそれは夕飯抜きという事ですね!?」


 そうきたか。


「ったく、夕飯までに起きて勝手に食ってればいいだろう」

「お小遣いください!」

「百ゴルドまでな」

「餓死しちゃいます!?」

「一般人の一週間の食費だぞ!?」

「何たって私、天獣ですから!」


 天獣の胃袋っていうか青天井の胃袋って感じだよな。

 結局ポチに二百ゴルドを与え、俺とポチは一旦眠りについた。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


『………………久しぶりだな、爺さん』

『ほっほっほっほ、気付いておったか。おや、珍しくポチがいないのう?』

『今頃夕飯でも食べてるんだろうな』

『ふむふむ、それは都合がいい』

『何言ってるんだよ? 都合がいい時にしか現れないだろう、アンタ』


 大方、俺とポチが一緒に寝ている時間を避けたんだろうな。


『ほっほっほ、バレておったか』

『口元がにやけてるのがバレバレなんだよ。ったく』

『まぁ許せ。…………さて、何から話したものか? いや、先に貰うモノを貰っておくか。さぁ』


 神の使いの爺さんが俺に手の平を向ける。


『………………やっぱりここで渡すのか』

『アイリーンの記憶。それを消す上で考案していた魔法があるのだろう?』

『最初、テンガロンやチャーリーたちの夢に現れた後、話を信じてもらえなかったからという理由で記憶を消したと……爺さんは言っていた。それを行えるのは神の使いだからだと思っていた。だが、あの時点では神の力は非常に弱いものだった。そんな力はなかったんだ。だから俺が今から渡す公式を使った。なるほど、俺のこの魔法の発明時期をこの時代で定着させてしまえば、あの時の微弱な神の力でも発動する事が出来た』

『……そういう事じゃ』


 爺さんがそう言うと、フードからようやく片目を覗かせた。


『初めまして……神様(、、)

『ほっほっほっほ! そこまでバレていたか。やはりアズリーを選んで正解だったな』

『これだけ接触があれば嫌でも気付くさ。今まで行動と案内……俺たちをあの聖戦士の時代に飛ばしたのも、俺の研究結果を使って時空転移魔法を発動させたんだろ? ポチズリー商店の日々の祈りによって蓄えた力で』

『見事じゃ』


 時空転移魔法は魔力さえあれば発動足り得る魔法だ。

 しかし、俺を過去に飛ばす力がなかった。それで俺という駒を使い、自身の力を少し回復させ、俺とポチを過去へ飛ばした。覚醒石と限界突破の魔術を持ち帰らせるため、俺と魔王を戦わせるため。

 あの時代で魔王が死に、神の力が戻ったから、魔法も何も使わずに俺とポチをこの時代まで飛ばす事が出来た。勿論、俺の身体の回復付きで。


『その顔と、口調が本物って事でいいのか?』

『力が衰えているからな。本来は身体も若々しいのだが、力の衰えと共に身体もこうなってしまうのじゃ。口調は擬態じゃと思ってくれて構わない』


 なぁにが擬態だよ。まったく。


『さて、その魔法はワシにも、アズリーにも非常に重用な魔法だ。表舞台でこそ使われぬが、今この時の譲渡をもって、世界に道を作る魔法とも言えよう』

『…………はぁ』


 俺はそんな深い溜め息を吐き、座りながら小さな宙図(ちゅうず)を描く。


『ほいのほい、メモリー・エディット。ほらよ』

『うむ……確かに受け取った』

『それでアイリーンの記憶を、頼む。使い方に注意だぞ。下手すれば頭ぶっ壊しかねないからな。まぁ限られた状況下でしか使えないから敵相手には無理だろうけどな』


 光りに包まれたような白い世界。

 俺はその真ん中でごろんと寝転がった。


『ふむ、今日は座布団もお茶もなし……か。残念じゃのう』

『いいだろう別に。それで、まだ話す事があるのか?』

『現代の方がな、少しばかり危ういかもしれぬ』

『なっ!?』


 唐突な神の言葉に、俺はがばっと起き上がった。


『何でそういうのを早く言ってくれないんだよ!?』

『落ち着け。たとえ早く伝えたとしても戻れる時は固定されてしまっている』

『っ!? つまり……今ここで帰ろうが、この時代で何かを成してから戻ろうが、戻れる時と場所は固定されちまってるって事か!?』

『そういう事だ』


 ……なんてこった。

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