271 魔の王
2017/12/20 本日一話目の投稿です。昨日更新出来なかったので、本日もう一話更新予定です。
遠隔化した攻撃ではあるが、これを受けても尚あの闇の球体がそのままなら、かなり厄介な相手だ。さて……どうだ?
リーリアの魔断ち一閃。
ジョルノのブレイブレイド。
ポチの極ブレス。
そして俺の――――
「――――ちょっと! ポチ・パッド・レーザーって何ですかマスター!?」
「一点集中型の水魔法だよ!」
「私の極レーザーのアイディア盗んだんでしょう!?」
「参考にしたんだよ!」
まったく、何故ポチはこんな時でも俺に突っかかってこられるのだろう?
飼い主の顔が見てみたいものだ。
ジョルノとリーリアの警戒は解かれる事はない。
勿論、俺だって、ポチだってそうだ。いや、ポチはわからないか?
いやいや、相手は魔王。警戒を解く方がおかしい。
直後、俺たちは闇の球体の方から硝子が割れるような音を聞いた。
砂が霧散し、やがて姿を現わす闇の球体。
「駄目か……」
リーリアが下唇を噛む。
「いや〜? それとなーく効果はあったみたいだよ?」
くいくいと人差し指を球体に向けるジョルノ。
その指先を目で追ってみる。
「っ! 罅が入ってます!?」
ポチがそう叫ぶや否や、ジョルノが行動を起こした。
「はぁああああっ!」
ブレイブレイドの連射。
微調整の難しい勇者専用ともいえる特殊技能を三、四、五連射か。ただでさえ縦横無尽に放たれる十二の連撃だ。ともなると、あの球体には六十にも及ぶ斬撃が飛ばされているはずだ。しかもそれを一箇所に集中させている。
驚異的な練度だ。
俺とリーリア、そしてポチは、ジョルノの気迫に呑まれ、次の行動が遅れてしまった。
「っ! ポチ・パッド・ボム!」
「ンキャアアアアアアアアアアアアッ!」
ポチも極レーザーを放ち、リーリアは…………走った!?
直接攻撃を叩き込む気か!
相変わらず強引だな!
俺たちは、闇の球体に向かうリーリアの身体に遠隔攻撃が当たるのを避けるように散開し、第二陣の攻撃の止めを待った。
「はぁっ! 大地割り!」
耳を劈くような高く、しかし鈍い音。
本来であれば、文字通り大地すら割る程の威力。
集約した攻撃があれだけ強固な存在に当たるとなれば、この重厚な音も納得だ。
「よし!」
最初に気付いたのは直接攻撃を放ったリーリアだった。
「あっ!」
二番目は俺。
球体の上部に大きな罅。いや、割れた!
「はぁあああああっ!」
中には深淵しか広がっていないような気味の悪い空間が見える。
しかし、リーリアは構う事なく、直接攻撃を叩きつけていた。
反対側からもジョルノが飛びかかっていた。
流石勇者。リーリアの動きに合わせて――――
「「――――ぐっ!? は…………」」
俺の目が捉えたのは、ジョルノとリーリアの背中に一つずつ、何かが生えてるような…………っ!
直後、視界に広がる血液。
あれは――腕!?
「「……っ! だぁ!」」
ジョルノとリーリアは一瞬見合って互いに互いの蹴り足を蹴ったのだ。
魔王の腕が抜ける。
蹴った反動によって、二人の身体は宙を舞った。
「くそっ! シロ! ジョルノを頼む!」
「お任せを!」
この時俺とポチは、死地に飛び込む覚悟だった。
ジョルノとリーリアが、防御すら出来ずに致命傷を負ったんだ。魔王の戦力は計り知れない。
だが、俺とポチは動かない訳にはいかなかった。
早くしないと…………二人の命が消える!
そう思ったからこそ俺の行動は早かった。
大地に落ちる前にリーリアを抱え、同時に究極限界発動。
「ハイキュアーアジャスト! リーリア! リーリア! 頑張れ! 死ぬな!」
「マスター!」
「ハイキュアーアジャスト! ジョルノ! くそっ! 息をしろ!」
しかし、ジョルノの口からは息が抜けるような音しか聞こえてこない。
「聖生結界!」
究極限界状態だからこそ宙図は必要ないが、これだけ迅速に回復対処をしても間に合うかどうか……!
「ッ! ガァアアアアアアアッ!!」
俺の隣でポチが巨大化し、奴に向かって極ブレスを放射していた。
「ふ……ドリニウム……鉱の、鎧も…………形無しだな…………かっふっ!」
「馬鹿野郎! 喋るなリーリア!」
リーリアは何とか回復しそうだが…………ジョルノ!
そうだ! ジョルノの腹部の穴を魔力で騙せば……どうだ!?
「ぐふっ……すー…………」
「よし! 呼吸は戻った!」
俺は二人を抱え、時間を稼いでるポチを横目に安全な場所へ移動しようとした。
だが、まるで耳元で囁かれたかのような声が届く。
「ほぉ、人の身でそこまで魔に通ずる者も珍しい……」
「っっっ!?!?」
思わず跳び退いた俺だったが、ポチは未だ極ブレスを吐き続けていた。
このままじゃポチが危険っ!
「シロ! 離れるんだ!」
「ンガァアアアアアアアアアッ!!」
だが、ポチは攻撃をやめなかった。
馬鹿、何をしてるんだ!
俺は二人を下ろし、聖生結界を張った。そしてすぐにポチの下へ一足飛びした。
「っ!?」
ポチがブレスを吐きながら後退している。
まるで、見えない圧力に押されているようだ。
「この者も、獣にしては芳醇な魔を宿している……」
次の瞬間、闇の球体は禍々しい漆黒のオーラを発しながら、静かに縦に大きく罅割れた。
やがて、ポチのブレスが止む。自発的に止めた?
いや、ポチのあの様子……疲労感? っ、違う!
「離れろポチ! 吸魔だ!」
だが、ポチは全く動かなかった。蛇に睨まれた蛙……そんな印象を受けた。
「それは困るのだよ……」
深く、透き通った声。悪魔とは思えないような……しかし、悪寒を感じずにはいられない。
そして、闇の球体が、崩れるように二つに割れ落ちる。
「くそっ!」
俺はポチの尻尾を掴み、強引に振り飛ばした。
「ぎゃん!?」
「謝らないからな!」
ポチはジョルノたちの方へやった……が、ここにいると危険。と、また跳び退こうとしたら、後方から強い魔力を感じた。
っ! これは!? 俺が以前紫死鳥に使った魔力の意識誘導!? だが、俺よりずっと強力だ……っ――――
「――――ぬぅううううおおおおおおおっ!!」
強引に跳び退き、そのプレッシャーを回避すると、球体があった方から、小さな笑い声が……ほんの一瞬だけ聞こえた。
割れた球体からは闇のオーラで纏われた歪んだ存在が現れた。
「なるほど、そなたが唯一この場に立てる者か。部下に欲しいくらいだ……」
やはりこれが魔王……!
「ふむ、もはやこれは不要だな……っ!」
魔王のその声を聞いた後、闇のオーラは一瞬にして消え去った。
そして現れたのが……――――
「――――余はルシファー。全ての魔を統べる存在である」
これで…………、
「余を前に尚も動ける事、称賛に値する。褒美だ。そなたの名を聞こう?」
これで……、
「ん? 余の声が届いてない訳ではあるまい?」
これで、完全じゃないのか!?
「ポ、ポーアだ!」
「ん~? んーんー…………ふむ? 違うな。余はそなたの真名を聞いているのだ。わかるな?」
気付いている。……偽名である事を。
未来から来たという事は気付かれてはいないと思うが……バディンも言っていた。悪魔は皆特殊な目を持っていると……!
「……アズリーだ」
俺が名乗ると、ルシファーは不気味な笑みを浮かべた。
筋肉質な黒い身体は他の悪魔と変わらない。だが、瞳は青白く、短いながらも金の髪を靡かせている。
あれ…………この雰囲気どこかで……?
「アズリー……なるほど、そなたがあの神の犬か」
「犬ならそっちの方でノビてるよ」
「あれはそなたの使い魔か。ふむ、あれも色濃い血を持っている。これは……そなたの力か?」
天獣への種族改変についてもわかるのか。
だが、それにしても…………!
「類稀なるその魔力。そなた本当に人か? いや、ふむ、おそらく人なのだろう」
こんな魔力……立っているのがやっとだぞ!?
「部下たちの仇、などとは言わぬ。その力、余に見せてみよ……!」
ハハハハ……俺、今日死ぬかもしれないな。
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