↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第八章 ~聖戦士編・後編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

255/497

252 好みのタイプ

 俺はポーアもといアズリー。

 今日は最近仲良くなったポチとジョルノの後ろを付けている。

 どうにも俺の前に姿を見せなくなってしまった気がする。

 さっき仲良さそうに歩いてる二人を見かけて追っているが、相手はあのジョルノだ。

 ポチはともかく、勇者ジョルノの後ろを気取られずに付けるというのは至難の技だ。

 インビジブルイリュージョンを使っては逆に目立つし、魔力の揺らめきを察知されてしまうだろう。

 ならばこそ、こうして藪の中を獣のように這っている訳だ。

 ふっ、咄嗟に開発してしまった範囲拡聴の魔術があれば、離れていてもあの二人の会話が聞こえるのだ。

 自分の才能が恐ろしい。

 まぁ、これは前に研究していた拡声魔法から構想段階までいってたから早かっただけなんだけどな。

 ……む?


「アハハハハ、そうなんですよジョルノさん。その時マスターったら私の背中で寝ちゃって、でも私は全然気付かなくて走ってて、ようやく気付いたら背中にマスターがいないんですよ!」

「ハハハハ、へぇ。それでその後どうしたんだい?」

「十日間会えませんでしたっ! おかげで私、百食くらい食べられなかった計算ですよ!」


 随分とおかしい計算だな、ポチ。

 しかし、随分と懐かしい話だな。

 あれは三、四百年くらい前の話だったろう?

 あの時、ポチが慌てまくってなければ念話連絡が上手く働いたんだろうけど、精神不安定になってたからいつまで経っても見つからなかったんだよな。


「それだけだったらまだ良かったんですよ! でもその後マスターったら大泣きしながら私に抱きついてきちゃって! もう大変だったんですから!」

「ハハハハ、ポーアさんもシロ君に会いたかったんだろうねぇ~」

「ふふん! 仕方ないから私がマスターを『おーよしよし』とあやしてやったんです!」


 おかしい。

 何かが食い違っている気がする。

 あの時ポチは「ごは~~んっ!!」とか叫び、泣きながら俺に抱きついてきたはずだ。


「他には他には?」


 ジョルノも興味深々らしいな。

 俺とポチのくだらない話なんて、八百年分あるんだ。

 早々ストックが切れる事はないだろう。


「マスターが滝に飛び込んじゃった話とかどうです!?」

「いいね~!」


 お前を助けに飛び込んだんじゃなかったか?


「マスターがキラービーの巣を頭から被(かぶ)った話もありますよ!」

「おぉ!」


 お前が奴らの蜂蜜に手を出さなきゃそうならなかったはずなんだけどな。


「マスターが――――!」

「へぇ!」

「マスターが――――!」

「出てくるねぇ~!」

「マスターが――――!」


 ぐぬぬぬぬぬぬ…………おのれポチ!

 まさかそこまで自分を美化出来るとは思わなかったぞ!

 これはちょっくら出て行ってお仕置きをしてやらなきゃいかんな!


「何をしている、ポーア?」

「ひゃいっ!?」


 ワナワナと震える俺の肩を一瞬で止めたのは太い声だった。

 振り向くとそこには巨大な赤い牛がいた。


「何だウェルダンか」

「何だとは心外だな。怪しい人間がいると思ってこちらを見に来てみればお前がコソコソしていたのではないか。む? あれはジョルノとシロ……?」

「やば……! おいちょっとこっち来い!」

「な、何だ何だっ……?」


 ………………ふぅ。どうやら気付かれずに済んだみたいだな。

 しかし、俺が怪しい人間とはウェルダンめ……!


「何だポーア。何故あの二人を前にコソコソする必要がある?」


 訝(いぶか)しむウェルダンに、俺は適当な言い訳を考えていなかった。


「あ、えっと……その、だな?」

「ん? 一体何だというのだ? まさかお前、魔王軍に操られているのではないだろうな?」


 さて、どう言い訳したものか。

 下手に言い訳しても蹴り飛ばされるだろうし、正直に言っても怒られそうだ。

 ここはなんとか切り抜けなくてはいけない。

 魔法のように切り抜けられる言い訳はないものか。魔法のように……魔法?

 おぉ、そうだ! ポチにお仕置きが出来て、ウェルダンも何とか出来そうな魔法が一つあるじゃないか!


「いやな、ウェルダンに会わせたかった相手がいるんだよ?」

「会わせたかった相手? 魔王軍の幹部だとでも言うのではなかろうな?」

「まさかまさか……でも、決して損な話じゃないと思うんだよ」

「……わからんな? 一体誰に会わせたいというのだ?」


 首を傾げるウェルダン。

 俺は口元に人差し指を持っていき、ウェルダンを静かにさせた。


「ほいのほい――ほい!」


 ふ、ふふふふふふ。

 いつぞや使った魔法だが、これはいい仕返し……もといお仕置きになるだろう。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「そうなんですよ~、それでマスターがぁ――!」

「うんうん!」


 よーし、そろそろ効果が表れるぞ?

 というかまだ話してたのか、アイツめ……。


「……おや? シロ君その姿は…………?」


 ジョルノは気付いたみたいだな。


「おい、いつまで目隠ししていなければならないんだ、ポーア!」

「おっと、もういいぞ。さ、アイツ(、、、)がウェルダンに会わせたかった相手さ!」

「む? 何だジョルノと――――――っ!? な、何だアイツ(、、、)はっ!?」


 ウェルダンの見据える先。

 そこはジョルノがいた場所。

 そしてポチがいた場所でもある。いや、正確にはポチはまだあそこにいる。


「それで~、マスターがぁ~――――おや? ジョルノさん、どうしたんです? 私の顔に何か付いてますか?」

「いや、シロ君…………その姿は一体……?」

「え? どこか変ですかぁ?」


 自分の身体の変化に気付かないってのはこの魔法の良い点であり、悪い点でもあるな。


「おぉ! おぉ!? おぉおおおお~っ! 何だアイツのあの美しいフォルムは!?」


 しっかし、ウェルダンのヤツかなり興奮してるな。

 そんなに好みのタイプ(、、、、、、)だったのか。


「美しい! 美しいぞ! 正にアイツは理想の相手! こんな辺境の地でこれ程の美貌を持った相手に会えるとは思わなかったぞっ! ふん! ふん! ふんふんふんっ!!」


 …………あれ? ちょっとやり過ぎた?


「いや、だってシロ君……その姿、まるで……」

「まるで?」

「最高の牛(、)っ!! 見つけたぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!!!」


 大地と空気が震える程の声でウェルダンが叫んだ。

 そして大地と空気が割れる程の勢いで…………ウェルダンが牛になったポチに向かって行った。


「ハハハハ、それじゃあシロ君。僕はこの辺でぇ~♪ ごゆっくりっ!」

「へっ?」


 ジョルノは逃げるように消えて行き、ポチは未だに重大な事態に気付いていない。


「はぁはぁ! はぁはぁはぁっ! そこの女子(おなご)っ!! 名は何というっ!?」

「あれ~? ウェルダンさん? 名前って……ははは、何を言ってるんです?」


 うーん、これはまずいかもしれないな。


「いや、今の我らに名前など必要ない! 是非! 是非! 子々孫々繁栄を願い! 真剣な交際を希望するっ!!」

「……へ?」

「さぁ! さぁ! さぁ! こふぅうううううううっ!! ふん! は! ふん! は!」


 ウェルダンのヤツ、息が荒すぎじゃないか?


「いや、男は黙って直進あるのみっ!! 行くぞっ!!」


 一体どこへ向かうと言うのだろう?


「あぶ、あぶ、あぶ!? 危ないですぅううううううっ!?!?」


 ウェルダンの突進をサッと避けたポチは、倒れる木々を見て戦慄している。

 当然だ。俺も正直驚いている。

 あれはどう見てもいつも以上の力が出ている。


「ふ、ふふふふ! 赤帝牛である俺の動きをかわすとは素晴らしい! さぞや優秀な仔牛が生まれる事だろうっ!!」

「は、ははははは…………な、何を言っちゃってるんですか、ウェルダンさんっ……? は、はは、ははは……」

「ふはははははは! 既に我が名を知っていたか! そうかそうか! 運命など信じるつもりはなかったが、これがその運命というやつか! 素晴らしい! 素晴らしいぞっ!!」

「はは……………………だ、だ……――かっ……」

「むぅ!? 何か言ったか女子(おなご)ぉ!? こふ! こふぅうううっ!!」


 突進の準備のように足場を均(なら)しているな、ウェルダンのヤツ。


「誰か…………誰かっ!! 助けてくださぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!?!?」

「グモォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

「嫌ぁああああああああああああああああああああああああああっ!?」


 た、大変な事をしてしまったかもしれない…………。


聖ヒロイン、ピンチ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』
おっさんは、魔王と同じ能力【血鎖の転換】を得て吸血鬼に転生した!
ねじ曲がって一周しちゃうくらい性格が歪んだおっさんの成り上がり!

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。