◆235 奮闘、アズリー!
いつも「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」を読んで頂き、ありがとうございます。
作者の「壱弐参」と申します。
ご質問があったので、久しぶりの前書きです。(一応過去の前書きなどに記載はしましたが、それから話数がかなり進んでしまったため、改めての説明&補足となります)
サブタイトルの前に付いている「◆」は、アズリーの視点外。つまり三人称視点の時に付けています。
大規模な戦闘となる場合、各地での出来事をアズリーの「目や耳、その他の感覚器官」だけで捉える事が出来ないため、アズリー視点の一人称と、三人称を使い分けています。
同様に、サブタイトルの前に付いている「◇」は、他者の視点で進むお話です。これは主に「◇074 我輩はガルムである」のように、タラヲ用に使用しているものですが、「◇065 それぞれの時間」のように、ガストン、アイリーン、オルネルの視点で進んでいく事もあります。アズリーを除く、タラヲ以外の視点はあまり出したくないのですが、物語の進行上書く事はあります。
サブタイトルの前に記号が付かないお話は、原則的にアズリーの視点で進みますが、例外として「069 力」だけは物語の都合上、後半を三人称で書いております。こうした例外な話に対しては、その話の前書き部分【ここ】に記載するようにしております。
ご理解、ご協力の程、宜しくお願い致します。
アズリーが耳を、ポチが目を押さえぎゃあぎゃあと喚いている頃も尚、モンスターの緊張は続いていた。
しばらくしてアズリーの耳と、ポチの目が回復し終える頃、ようやく悪意に満ちたモンスターの顔に戻る。
モンスターとしての個が軍となり、その奥底で魔王軍という強力な殺意に変わり、のそり……のそり、そして再び大地を揺るがす行進を始める中、ポチは主を強引に振り落とし、右脚を振るった。
「肉球スターンプ!」
「ほげぇっ!?」
猛威を振るう天獣の突っ込みに、宙へ浮き、真横に十数回の回転を体感するアズリー。
「ぐぅおおおおっ!? いってーな! 何すんだ犬ッコロ!」
「見てわかりませんか、馬鹿マスター!? 幸せの! 一撃です! どうです!? うれしいでしょう!?」
「別の喜びの方が大きくて今そんな事どーでもいいわ!」
「むかぁあああっ! 私の肉球を頬に浴びる事より嬉しい事なんてマスターにある訳ないでしょう!」
「どんだけ自分の肉球を高く見積もってんだお前! そんなんせいぜい腹枕と同じくらいじゃねーか!」
「そ、そんなに!?」
左脚で頬を押さえ、右脚の肉球の価値に驚愕し、うっとりと見つめるポチ。
(くそ! ポチの中の肉球の価値が更に上がっちまった! どんだけ高いところにあるんだよ、腹枕! い、いや、今はそんな事に意識を囚われている場合じゃない!)
「いいから早く! また魔王軍が来ちまう!」
「それどころじゃありません!」
「あるよ!」
ポチの理不尽さに顔を歪めて怒るアズリー。
「もう仕方のない人ですね! ご指示を!」
そう言いながらポチは首を下げアズリーの騎乗を促す。
「ったく! 攻撃は全部俺がやる! このまま魔王軍の懐に飛び込むぞ!」
「つまり乗り物になれとっ? そんな道具みたいな扱いなんですか、私!?」
「いいじゃねぇか! 最終兵器ポチ! ほら、カッコいいだろう!!」
「おぉ! 最終兵器ポチ! カッコイイですーっ!!」
目を輝かせて尻尾をぶんぶんと振るポチに、アズリーはそれはそれは深い溜め息を吐いた。
「進路は!?」
「ジョルノが受け持つ中央、その奥からリーリアがいる左翼奥まで突っ切る!」
「で、出来るんですかそんな事!」
「最終! 兵器!」
「ポチッ!! 発進しちゃいますー!! アォオオオオオオオオオオンッ!!」
ポチは高らかに遠吠えを放ち、憶する事なく迫る魔王軍の懐へ飛び込んで行った。
その間、アズリーはポチの背でブツブツと呟き、そして空を仰ぎながら頭を捻っていた。
(えーっと? あれがここでそうなって、あの公式無視を超えるような度外視レベルの魔法力があれば、ここをこーして……暴発や暴走する魔力すら、強引に抑え込む事が可能ならば、今まで出来なかった指向性を細かく設定出来る。だからポチ・パッド・ブレスの威力をそのまま、いや、反発の相乗効果でそれ以上にし、被害を恐れずに…………こうして!)
「ほいのほいのほい! ポチ・パッド・ブレス!!」
瞬間、アズリーの手から凄まじい威力の衝撃が放たれ、魔王軍の進行を飲み込んだ。
魔王軍に、先程のホーリーワールド以上の損害を与え、再び魔王軍が足を止める。
あまりの威力故、アズリーの肩の関節がぐきりと鳴り、脱臼してしまう程である。
しかし、アズリーは肩の痛みよりもポチ・パッド・ブレスの威力に驚き、目を丸くさせた。
それはポチも同じであったが、ポチは何かに気付いたように背にいるアズリーに言った。
「あれ!? 水魔法が何で宙図で発動出来るんですか!? スウィフトマジックじゃないと出来ないんじゃ!?」
「あ、あぁ。魔力暴走の部分開放だ! いちちち……ぬりゃ!」
ぐきりと肩を鳴らし、はめ込むアズリーだったが、ポチはそれだけでは理解していないようだった。
「わかりません!」
「それも後だ後!」
説明に時間がかかると思ったアズリーはそう言い、ポチは納得出来なさそうな顔を一瞬した後、なんとか飲み込む事に成功する。
「ちゃんと後で説明してくださいね!」
「任せたまえポチ君!」
ジョルノを見習うように爽やかな笑顔を見せるアズリーだが、前を向き走るポチにそれは見えなかった。
その後も高威力の魔法を放ち、ジョルノがいる中央、その奥。リーリアがいる左翼、その奥へと斜めに突っ切ったアズリーに、最奥にいる悪魔の目が赤く光る。
その姿は人間のようで、白いローブとそのフードを被り、顔は隠れている。俯きながら歩けば一般人からは人間だと思われるだろう。
どす黒い魔力のオーラを溢れさせ、溶けるようにローブが消えて行く。そして一糸纏わぬ男の姿を見て、ジョルノが片目を瞑って「やっぱりね♪」と呟いたのだ。
当然その声はアズリーに届かない。魔王軍の大半を引き付けているアズリーとポチはそれどころではなかったからである。
「どこの馬鹿マスターですか! こんな危険地帯に突っ込もうって言ったのは!?」
「悪かったなぁ! ここの馬鹿マスターだよ!」
アズリーとポチが踏み入れた戦地、魔王軍の精鋭が揃う最恐の場所。
(平均ランクSってところかっ? つーか目で見える範囲にはほとんどランクSとランクSSしかいない! 端々に見えるランクAモンスターが霞んで見えるくらいだ!)
やはりランクSSのモンスターは、力を得たアズリーにとっても驚異となり得る。
動きは鋭敏、力は絶大、状況判断能力にも優れている。今のアズリーの実力であれば対応する事は困難ではない。しかし、これらの戦力に徒党を組まれた場合、全てに対応する事が出来ないのだ。
だからこそポチは怒ったのだが、謝罪しながらもアズリーがこれを後悔する事はなかった。
何故後悔しないのか、それはアズリー自身もわからなかった。だが、アズリーの手前で狂喜という名の剣を振るうリーリアは、その理由の一端に気付いていたのだ。
(急に魔王軍からの圧が減った…………アイツか)
「このぉ! 私を前にぃいいいい!! 生意気なんだよぉおおおおお!! 餓鬼がぁっ!!」
スマッシュスラッシュを放ち、剣の面でモンスターを弾き飛ばすリーリア。
そう、アズリーは魔王軍の攪乱を考えていたが、それは意外に大きな戦果をあげていた。
今や魔王軍にとって、強大な力を持ったアズリーが最大の敵である。
主力がアズリーに意識を向ける理由としては至極当然だった。
そしてそれは、結果として、ジョルノ、リーリア、赤帝牛の負担を軽減する、最大の戦果となったのだ。
「ほい! 空間転移魔法・カウント4&リモートコントロール!」
左翼のリーリア近くまでやってきたアズリーは、かつて炎龍、ロードドラゴンと戦った際に使った戦法をここで放った。
空間転移の魔法陣の一つは足場に、一つは赤帝牛の近くに、一つはジョルノの近くに、最後は自分が元いた場所に。
魔力を土台とする事で設置型魔法のデメリットを究極的までに昇華したアズリー。
それはここで非常に強力な戦力となったのだ。
元いた右翼の場所からこれを放っては魔王軍の混乱は微々たるものだろう。
しかし、一たび攪乱した後に行えば、威力は絶大である。
空間転移魔法陣が各場所の地面に到達し、起動を知らせる光が見えた頃、アズリーは背後にいる魔王軍に再びポチ・パッド・ブレスを放った。
「っ! くぅううううううっ!! もうちょっと制御に魔力を割かないとダメか!」
再度魔法式を調整したポチ・パッド・ブレスでも手が痺れてしまう。
プラプラと手を振るアズリーに、ポチが叫ぶ。
「ちょっと! 尻尾が少しじゅってなりましたよ! じゅって!」
「じゅう~ってならなくてよかったな!」
「おぉ! 本当ですー!」
「よし! 今だ、乗れ!」
何故か喜んだポチは、アズリーの指示によって空間転移魔法陣の上に乗る。
起動し、二人の姿が消え、赤帝牛の近くの空間転移魔法陣へ移動する。
「よぉ、生きてるか!?」
「……フーフー! 我が角にかけて、モンスター如き前で倒れるはずもない!」
「おぉ、意外に声は普通だな。はははは、その調子なら大丈夫だな。ほれ、飲んどけ!」
アズリーは懐からポチビタンデッドを取り出し、液体を魔力で包みながら赤帝牛の口に運んだ。
魔王軍の前だからか、一瞬かつ強引なアズリーの動きだったが、赤帝牛が動揺する事はなかった。
すぐに身体の変化を感じ取った赤帝牛は、再び鼻息を荒くし、背後に迫るモンスターの首を蹴り散らす。
アズリーが左翼奥から消えた動揺がリーリアに時を与え、更なる数のモンスターを減らす。
その後、アズリーとポチは空間転移魔法陣を行き来し、その場で各パーティメンバーを助け、ポチビタンデッドを渡し、魔王軍を翻弄し続け、味方を援護した。
それが落ち着いた頃――元いた場所、つまり右翼へ戻り、再び魔王軍の掃討を始めようと動こうとした時、アズリーの正面を強力な攻撃が襲う。
咄嗟に水龍の杖で受けたアズリー。
ダメージこそないものの、ポチの身体ごと吹き飛ばされ、水龍の杖は粉砕されてしまったのだ。
しかし、その事に意識を向けるより早く、アズリーは正面から受けた攻撃に動揺した。
身体から噴き出る漆黒の魔力。背中は丸まりながらも巨大化したポチに跨るアズリーが見上げる程の巨躯。
アズリーを襲い、水龍の杖を粉砕した筋骨隆々の黒い裸体の男。
想像を絶する戦力を前に、ポチの脚は、ジリジリと下がっていく。
「……貴様、何者ダ……」
黒く巨大な悪魔が、自ら足を運び、アズリーを最大の脅威と認めた瞬間だった。
前書きをそれなりの量書いたので、この話は後書きでもみっちりと書きたいと思います。(読み飛ばしてもOKです)
感想、活動報告へのコメント、メッセージ、お気に入り登録、評価ポイント、レビュー(まだない)、励みになります。
この度「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」のお気に入り登録数が17,000件を超え、総ポイントも40,000ポイントを超えました。
PV数は間も無く1,500万PVとなり、ユニークPV(読み返して頂いている数?)も190万PVを超えました。
半端な数字もありますが、間も無く初書籍化作の「転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士) 」のポイントを超せるんじゃないか、と思ったら嬉しくて書いてしまいました。
この章もかなりのところまできたと思います。
アズリーの努力が報われるところまで書けたのは、皆様の応援があったからだと思っています。
コミカライズも始まり、六巻という未知の巻数まで書く事が出来ています。
編集さんに媚びをうりながら、七巻、八巻を目指して頑張ります。買ってくれたら尚喜びます。PC前で土下座します。あ、購入報告も嬉しいです。
感想の返信も全ての方に返信させて頂いておりますが、返信までに時間がかかってしまう場合もあるのでご了承頂けると幸いです。
長くなりましたが、これからも「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」を宜しくお願い致します!
ついでに同時連載している「使い魔は使い魔使い」も宜しくお願い致します! 壱弐参




