219 新たな出会い?
「いやぁあああああああああああああっ! 何ですかあの牛!? トゥースさんくらいの大きさありましたよ!」
「あぁ、確かにそうだな。ざっと六メートルくらいか? だけど安心しろシロ」
「え、何です!? 何か秘策でも!?」
パァっと明るくなったポチに、俺は笑みを浮かべる。
「トゥースよりは強くないからな」
「いやぁあああああああああああああっ! あれってアレですよね!? 天獣! 赤帝牛ってやつですよね!? あんなのと戦ったら私死んじゃいますよ!」
「はぁ……ったくしょうがねぇな。いいか、これを聞いて安心しろ!」
「おぉ! 何か必殺技でも!?」
一瞬で泣き止んだポチに、俺は再び笑みを浮かべる。
「お前も天獣だ」
ばちんとウインクを送ってやると、ポチの涙は弧を描くように、そう、それはまるで噴水のように飛び出たのだった。
あれ、どうやるんだろう?
そんなやりとりを何回、いや、何十回と続けた後、宿の中でレオンにミルクをやった。
「もう、せっかくの観光が台無しですっ。ぷんぷんですよ、私は!」
「おー、それは何よりだ。何だかんだ言っても逃げ腰にはなってないみたいで安心したよ。なぁチャッピー?」
「えぇ、流石母上です!」
「そ! そうですかぁっ?」
でへへと喜ぶポチに気持ち悪さを感じたが、俺はその後黙ってしまったチャッピーの方が気になった。
「……? どうしたチャッピー?」
「去り際に見たあの目、あの牛は敵です!」
これは珍しい。
チャッピーが殺意を向けてくるモンスター以外に敵意を示したのは、レオンのオムツ以来だ。
……ん? 待てよ? 確か天獣って、天獣同士で縄張り争いをしていたとかいう逸話だか伝説があったな?
チャッピーは無意識でそれを感じたって事か?
しかしそう考えると、ポチはそうでもないような? ……むぅ、わからん。
「にしてもお前たち……ソレ、相当気に入ったんだな」
「「え?」」
「それだよそれ。そのサングラスってやつ」
ポチは泣き終わった後再び掛けていたし、チャッピーなんかずっと掛けている。
「これは紫死鳥必須のアイテムだと思います!」
「私も気に入りました! 父上から送って頂いた素晴らしい品、生涯大事にします!」
「お、おう。気に入ってもらえたのなら何よりだ」
「だっ!」
「お前もな、レオン」
レオンの愛嬌に癒されて思わずにやけそうになる。
しかし、不穏な魔力の揺らめきが俺にそれをさせなかった。
「シロ、気付いたか?」
「えぇ、勿論です。しかしこれは……酷いですね?」
「あぁ、ご飯を強請るシロみたいに荒ぶった魔力だ」
「なっ、私こんなに下手な監視はしませんよ!」
まぁポチの食欲はこんなもんじゃないからな。
にしても、ダグラス家の戦力が一気に減ったというのは驚いたな。
ポチは窓近くの椅子にお座りし、度々サングラスが落ちそうになっているのを支えながら窓の外を見ている。
レガリアに着いて半日ちょっと。遂に俺たちに監視が付いた。
が、しかし無名やチキアータのような手練れではなく、本当に監視者なのか? という不安を覚える相手である。
だが仕方ないか。チキアータがあの後どうしたのかはわからないが、あの連中は未だにトウエッド付近にいるだろうからな。
あの襲撃チームと無名がダグラス家の全戦力って事なのか? そういう事なら有難い事だ。
監視者はブライト少年以下のレベル帯だろうし、これなら尾行を巻く事も難しくないだろう。
「まぁ念には念を……って事で、交代で相手の動きを把握しておこう」
「では私からやりましょう」
「チャッピー? 別に構わないけど、大丈夫か?」
「あの程度の相手なら問題ないでしょう」
別にわがままを言った、という訳ではなかったが、チャッピーがすすんで見張りを引き受けた事には少し驚いた。
なるほど。独り立ちが早い紫死鳥なだけはあるか。
俺とポチは、チャッピーに見張りを任せ、暗くなる少し前に仮眠を取る事にした。
で、起きたら――――
「おかしいな」
「おかしいですね」
「あぅー?」
「そうだなレオン。チャッピーがいないなー」
俺はレオンの手をにぎにぎしてあやしながら言った。
「ってそんな場合じゃない! 何やってんだアイツは!?」
「あれ? でもマスター、あれ……」
窓の外、ポチの前脚が指す空を見ると、大きな羽で円を描くように飛んでいるチャッピーが見えた。
あんなところで何やってるんだ?
「あ、戻って来ますよ!」
俺たちが起きた事に気付いたのか、チャッピーは窓から部屋へ降りて来た。
「おはようございます父上、母上」
「あぁ、起きた時いないから驚いたぞ。何かあったのか?」
「えぇ、宿の外で見張っている人間。それ以外にも怪しい者が定期的に宿の前を歩いていたので、空から確認していました」
へぇ、ちゃんと見張りをやってたんだな。
感心感心。先ほどチャッピーを疑った俺を殴ってやりたい。
そんな俺の気持ちに気付いたのか、ポチは俺の頬をぷすりと爪で刺した。
……痛い。が、ポチも少し頭を低くしたので、同じ気持ちだったのだろう。
こちんとデコピンをポチにくらわす。俺はニカっと笑い、ポチも――――
「いったいですぅ!? ちょっとマスター、もう少し手加減は出来なかったんですかっ!?」
ポチの唾まみれになった俺は黙って顔を拭く。
むぅ、まだ聖戦士の力に慣れてないのかもしれない。
レオンに接する時は注意しなくちゃいけないな。
おっと、そろそろ時間だな。
俺は体内時計の魔術の反応を身体で感じ、ポチに宿を任せて窓から跳び出した。
「…………ふぅ、どうやら監視者には気付かれずに出られたみたいだな。ま、チャッピーが出来たんだから今の俺に出来ないはずもないか」
「あじゅりー?」
「そう、アズリーは今結構強くなったんです」
きゃっきゃと笑うレオンに話しかけながらレガリアにある屋根を伝って行く。
ポルコの指示だと……確かレガリア北の湖だったか。
……はて? レガリアの中には湖はないようだが……もしかして北区ではなく、街から北という事なのか?
むぅ、勘違いしてしまったな。もしかしたら遅れてしまうかもしれん。
「レオン様、少し飛ばしますよっ」
「ごぉ!」
レオンを魔力の壁で覆い、脚に力を込める。
「ほい、オールアップ!」
地から足が離れた時、自身に強化魔法を掛け、効率的に街を北上していく。
にしてもオールアップの宙図速度も本当に向上したな。
称号の恩恵だというのもあるが、こうも急に力を付けると、自分自身の力だと受け入れ難い感じがする。
なんだかもどかしい。今は、魔法や魔術の幅が広がったと考えればいいか。
ポチは驚いていたが、俺はあの赤帝牛を前にしてもそこまで怖さを感じなかった。
まぁリーリアが一番怖い存在だったから、というのもあるが、そのリーリアさえも手を伸ばせば届きそうな、そんな感覚にまでなったのだ。
そんな感覚になった俺でも…………やはりトゥースはまだ高い壁のように感じる。
……おのれ、あの筋肉ダルマの底は一体どこにあるんだ?
「っと、よし、五分前行動。素晴らしいっ」
「うぅ!」
レオンも昼寝をしていたからか、こんな時間でも元気いっぱいだ。
……後で寝かしつけるの大変だろうなぁ。
さて、看板を見るに……ここはレガリア湖という場所のようだが、現代にはなかったものだな。
時を経て干からびてしまったのだろうか?
おや? あそこに誰か座っているようだな?
向こうも気付いたようだ。見たところ脅威は感じられない。
ふむ? とても人の良さそうな顔をしたお兄さんだ。
「あ、あの! お! お名前は!?」
「………………」
どうしよう、新手の口説き文句だろうか?
俺は男には興味がないというのに。
名前……か。まぁここは言っても問題ないだろう。
見たところ他に人も見当たらないし、おそらくこの人がポルコが引き合わせたかった相手、もしくはそれに所縁する人間という事だろう。
「ポーアです」
「ぇおーぅ」
「おぉ! 凄いなレオール、ちゃんと自己紹介出来たじゃないか!」
瞬間、目の前にいた男の顔が激変した。
それはもう開いた口が塞がらないような驚きようで、数歩下がった後にまるで何かのカラクリのようにカクンと跪いた。
「わ、私の名前はハチヘイ~ルッ! ポーア殿におかれましては、お迎えの際、お約束の言葉を頂く事になっております! 何卒っ!」
「あ、えっと……アダムスとフルブライド……?」
「た、確かに承りました! はは~ぁ!」
……これが街中だったらと思うとゾッとするな。
「使い魔は使い魔使い」がジャンル別の日間ローファンタジーで、初登場9位!
そして四位、三位と上がり、投稿二日目で二位まで上がりました!(もう五位まで落ちちゃってるけどね!)
ハイファンタジーではアズリーも頑張るぞぉおお!
という意気込みと共に、書籍化の進捗をば!
アズリーの六巻たぶん出ます! だって原稿を出版社でチェックしたから!
まだ発売日等々は未定なので、また公開情報があれば随時お知らせする予定です!
そんなこんなで店舗特典や巻末特典、初回特典のSSのネタ募集します!
感想やメッセージ、Twitter等でネタください! 切実です!
後程、頂いた感想の返信していきます!
遅れて申し訳ありません!
全部見てますからね!
では! 宜しくお願いします!




