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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第五章 ~古の放浪編~

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160 保守派と革新派改め

 自分の分の夕食だけは死守した俺だが、ポチは夜食分の食べ物まで要求してきた。

 最近食い意地張り過ぎじゃないだろうか?

 そして……何で太らないんだ?

 是非一度解剖してみたいところだ。

 自室のドアが閉まって間も無く、俺はジュンの部屋の前までやってきた。

 少し早めではあるが、別に問題はないだろう。

 控えめなノックを数回。

 だが、部屋から何の反応もない。変だな? 室内にいる気配はあるんだが……はて?

 今度は普通のノック。

 すると部屋の中からどったんばったんと音が鳴り響き、ドア越しにジュンの声が聞こえた。


『す、すまない。少しだけ待ってくれっ』


 いつもとは少し違う色の声だったが、部屋の中で何かを倒した音が聞こえた。

 ちょっと慌てている様子だし、驚かせてしまったのかもしれない。やはり早すぎたのか。

 俺はドアの前で一、二分程待つと、ジュンはドアの奥で一つ咳払いをした後、ゆっくりとドアを開けた。


「……っ!?」


 漏れそうな声を押し殺し、俺は目を丸くした。

 屋敷の中では厚手の鎧なり、軽めの鎧なり着てるはずのジュン。

 しかし、今俺の目の前に現れたのは……肩や胸元まであいている、薄黄色で刺繍の美しいドレスを着ていた。


「す、すまないポーア殿。慣れないものを着たのでな、着付けに時間がかかった」


 頬を紅潮させ、照れた様子でジュンが言った。

 ある意味今日一番驚いたかもしれない。ウエストは締まり、胸の膨らみも鎧越しからでは気付かなかったが、こうも女性的だと……この現場をポチに見られたら怒られそうだ。

 う~む、褐色肌がとてもドレスの色に合っているな。


「その……あまりジロジロ見られるのは恥ずかしいのだが……」

「あぁっ。す、すみません」


 目を瞑りながら言った俺に、ジュンはくすりとして笑った。


「うむ。ではこちらへ来てくれ」

「し、失礼しますっ」


 部屋の造りは俺やブライト少年の部屋と同じのようだったが、多少華やかだ。

 全体的にドレスと一緒で黄色が多い。カーテンやベッドのシーツなどにそれが表れている。

 ふむ、この色が好きなのだろうか?

 ……おっといかんいかん。女性の部屋をあまりジロジロ見てはいけないよな。というか、先程指摘されたばかりだった。

 細長い丸テーブルの手前に案内された俺は、ジュンが座るまで待とうと思ったが――


「構わない。座ってくれ」


 そう言われてしまったので、対となる丸椅子に腰を下ろした。

 ジュンはグラスを二つ、蜂蜜酒(ミード)と思われるボトルを持ってテーブルに置いた。

 瞬間、ボトルの先端が砕ける音がした。


「おっと……ハハハ……やってしまったな」


 台無しだ。

 ボトルを開けようとしたのに、力のあまり……破壊。

 幸い先端が取れただけだが、貴族の部屋にはありえない光景だな。

 流石、レベル百九十の戦士。いや、彼女の性格もあるんだろう。


「あ、いや。お気になさらず」

「すまない。ポーア殿も飲めるのだろう?」

「えぇ、少しなら」


 グラスを持ち、ジュンの酌を受ける。

 あれ? 本来は男である俺がやった方がいいんじゃなかったか?

 いやでも、ジュンの好意だ。有難く受け取っておこう。

 ジュンも自分のグラスに適量の蜂蜜酒(ミード)を注ぐ。

 先端のないボトルを置き、俺たちは部屋の隅にしか響かない小さな乾杯の音を鳴らした。

 数口飲み、ジュンからの話の切り出しを待っていると、俺は目の端に衝撃的なものを発見してしまった。

 あれはおそらく着替えの収納スペースだろう。

 その戸は閉じられているが、隙間という隙間から色々な色のドレスが……はみ出ている。

 何か、色々と勿体無い人だな、この人。


「すまない。部屋に男を入れる時はしっかりと着飾れと……亡き母の教えでな。その、変だったろうか?」

「そんな事はありません。とても綺麗だと思います」

「…………感謝する」


 噤むようにそう言ったジュンは、また一口蜂蜜酒(ミード)を飲んで顔を赤らめた。

 むぅ…………これはいかん。

 これはいけないような気がしますよポチさん。

 ポチが説教する姿を頭に浮かべ、嫌な汗を背中に感じた時、俺は自分から話を切り出す事を決意した。


「それで……今回の件ですが――」


 ビクンと反応するジュン。

 どうやら彼女はタイミングを見計らっていたようだな。不意を突かれたように見える。


「アルフレッドさんから保守派と革新派の事は聞きました。しかしそれ以上の事は聞いていなかったので、今回の件と合わせて聞きたいと思います」


 するとジュンは、椅子の背に身体を預けるようにして小さな息を吐いた。


「……そうだったな。この話はポーア殿……屋敷の者には聞かれたくなかったのだ。アルフレッドが知っているのも端的な事のみで、詳しい話を知っている者は少ない」


 なるほど、だから俺をこの部屋に招いたのか。

 仕事とはいえ夜に女性の部屋に近づく者はほぼいない。ジュン程の人間であれば、少々気を張っていれば怪しい人間は近づいたらすぐわかるしな。

 自らの家なのに信用出来る者が少ないというのも辛い話だ。


「アダムス家とフルブライド家。二つの貴族を筆頭に保守派。この保守派というのは元老院の中でも大きな力を持つ。聖帝ハドル(、、、)様はもうお若くない。今我々は、このハドル様の退位を革新派の連中と争っているのだ」

「退位って……そんな簡単に出来るものなんですか?」

「無論簡単な事ではない。国のトップがすげかわるのだからな。しかし、元老院のバランスが崩れればそうも言ってはいられない。本来、国の(まつりごと)はハドル様と我々元老院で決めている。だがこれ程大きな決め事となると、三つ目の権力が必要となるのだ」


 三つ目…………聖帝と元老院以外に大きな権力と言えば、昔から一つしかない。


「もしかして皇后?」


 静かに頷くジュンに、頭の中で段々と理解が深まってきたのがわかった。

 見えない意図が糸として繋がった感じだ。


「そう、革新派とは皇后派の事。ハドル様と皇后イディア(、、、、)様が仲睦まじかったのは遠い過去の事。魔王の胎動期に乗じて皇子ザッツ(、、、)様を聖帝の座につけたいのだろう」

「しかし何故です? こう言っては失礼かもしれませんが、聖帝がお若くないのであればいずれその皇子に継承権がいくのでは?」


 ジュンは静かに首を横に振る。


「事はそう簡単ではなくてな。聖帝様にはもう一人の息子がいるのだ」


 なるほど、それまたややこしい現状だ。


「亡き側室リューネ様と聖帝の間には一人の皇子が生まれた。その名はレオン(、、、)様。ポーア殿、どうかこの名だけは外部の者に知らせないでくれ」

「……という事は、もしかしてそのレオン様っていうのは……」

「ハドル様の隠し子だ」


 なるほどなるほど、それまたとてもややこしい現状だ。

 おそらく、これこそが公にもならず、この屋敷の者すら知らない現実。

 話を聞くに、まだ生まれたばかりなのだろう。……今更だが聞くんじゃなかったと少し後悔。


「かねてから皇后の野心に気付いていたハドル様は、身重となったリューネ様を隠し、やがてレオン様が生まれた。しかし、元々身体の弱かったリューネ様はレオン様を出産した時に亡くなってしまったそうだ。事が露見し、皇后や元老院に知れ渡るのは時間の問題だった。そして、ハドル様はその時に帝位第一継承権をレオン様としたのだ」


 そりゃ皇后も怒るだろうな。

 だが長年聖帝の座にいた者が大事な選択を誤ったりする事は考えにくい。

 皇后の性格やその血を受け継ぐザッツという皇子に、未来を感じなかったのかもしれない。


「皇后はすぐに元老院を抱き込み、聖帝の退位を元老院に提言した……」


 それで今に至るという訳か。

 要約すると、隠し子であるレオンを新聖帝に()けたいのが保守派。つまりは聖帝派。

 皇后の息子ザッツ皇子を新聖帝に()けたいのが革新派。皇后派って事だ。

 そんな事する前に魔王討伐の準備してくれよ、まったく……。


「そうなるともう時間がないのでは?」


 するとジュンは小さく首を振った。


「今元老院内部の力は拮抗していてな。議会に議題としてあがるのを防げている。時間の問題という事もあるが、この拮抗さえ崩れなければ、まだしばらくは持つだろう」

「それで今回のブライト様の件……でしたか」


 顔に陰りが見えたジュンは少し俯きながら頷いた。


「なんらかの狙いがあってそうしたとは思いましたが、そんな裏があったとは思いませんでした」

「ブライトを人質にとられては、私が反対を強く押す事は出来なくなる。そう考えたのだろう」

「……誘拐犯はチキアータと名乗っていました。心当たりは?」


 蜂蜜酒(ミード)のグラスをテーブルに置いたジュンが少し考えている。

 情報が少ないしな。


「使い魔に水龍、コバルトドラゴン。そしてその……おそらく弟子にミャンという少女」

「っ! ミャンッ?」


 どうやらジュンの頭の中に名前があったみたいだな。

 同一人物かどうかはわからないが。


「革新派の中にダグラス家という小さな貴族がある。その一人娘の名が確かミャンだったはずだ。その娘、カイゼルディーノを使役していなかったか?」

「どうやら当たりのようですね」

「……やはりか。昔カイゼルディーノの卵を(かえ)したと話題になったものだ」


 刷り込みによるモンスターとの使い魔契約。

 ランクSのモンスターならそれしかないからな。


「北に住むという腕利きの魔法士に弟子入りしたと聞いたが…………わかった。その件はこちらで少し調べてみよう」

「お願いします」

「それと…………一つ頼みがあるのだが――――」


 酒のせいか、ほんのり顔を赤らめたジュンだったが、この後彼女が言う言葉など、俺にとっては容易に想像出来る事だった。

 その日は、食堂での同席を許され、俺はジュン、ブライト少年、フェリス嬢と共に食事をとった。

 ブライト少年はその日の出来事を興奮しながら語り、フェリス嬢は食いつくように聞き、ジュンは微笑みながらその話を聞いていた。

 明日の準備を頼んだポチはどうしてるだろうか?

 明日の準備のための栄養補給しかしてないのではないだろうか?

 そうに違いないと思いつつ、食後のデザートを余分にもらって部屋に持って行こうとする俺は、甘いのだろうか。


「甘いですー! 頬っぺたが落っこちますー!」


 どうやら甘いらしい。

 明日はクッグの村へ行かなくてはいけない。

 フェリス嬢の父親ポルコ・アダムスか…………さて、一体どんな人物なのだろう。

突然の攻撃魔法集


【最下級系攻撃魔法】

リトルファイア(火)

ウォータードロップ(水)

ストローストーン(土)

ブリーズ(風)

ボルト(特殊風=雷)


【下級系攻撃魔法】

ファイア(火)

ファイアウォール(火)

ファイアースタンプ(火)

ファイアピラー(設置型火)

ウォーター(水)

アイスニードル(水)

アースニードル(土)

アースコントロール(土)

ウィンド(風)

ウィンドニードル(風)

エアウォール(風)

サンダー(特殊風=雷)


【中級系攻撃魔法】

ファイアランス(火)

ファイアアロー(火)

フリーズファイア(竜族特化火)

アイスランス(水)

アイスジャベリン(水)

アースランス(土)

アースジャベリン(土)

クロスウィンド(風)

ウィンドランス(風)

サンダーボルト(特殊風=雷)

サンダーランス(特殊風=雷)


【上級系攻撃魔法】

フレアボム(火)

ベノムデッド(毒火)

メテオウィンド(火風)

アイストルネード(水)⇒おそらく本編で出ていません

アース・スター(土)

アースブラスト(土)

デルタアース(土)

シャープウィンド・クロス(風)

ウィンドホール(風)

スパークレイン(特殊風=雷)

ヘルニードル(闇)


【特級系攻撃魔法】=大魔法

ガーネット・ヘル(火)

ヘブン・ヴァーミリオン(火)

ベノムファイア(毒火)

アイシクルヘルファイア(竜族特化火)

アイシクルショット(水)⇒おそらく本編で出ていません

ロックブラスト(土)

デュアルドラゴン(風)

ダイアモンド・カットラス(風)

シャープウィンド・アスタリスク(風)

ガトリングライトニング(特殊風=雷)

ボルテックウィング(風雷)

フルスパークレイン(雷)

ヘルスタンプ(闇)

ホーリーワールド(光)


【愚者固有攻撃魔法】

《中級》グラビティストップ(重力)

《上級》グラビティスタンプ(重力)

《上級》エレメンタルプリズム(四元素+雷)

《特級》ポチ・パッド・ボム(水?)

《?級》ポチ・パッド・ブレス(水?)

《?級》ゲート・イーター(闇)



ざっと思い出しながら書いてこんな感じです。

「これ入ってねぇよ」・「これ間違ってるんじゃね?」ってのがあれば、教えてくだされば次回更新時に足します。

※1:今回書いたのは「攻撃魔法」のみなので、指摘された魔法が別ジャンルの魔法の可能性もございます。

※2:「ジャベリン」と「ランス」はほぼ同じものだと理解して頂ければと思います。光源魔法の「ライト」と「トーチ」のように同じような魔法は存在します。理由は魔法開発者の違いだと考えてください。

※3:光や闇魔法についての質問は現状NGでお願いします。


補助魔法編、回復魔法編、特殊魔法編もその内公開して、まとめたものを書きたいと思っています。

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