表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第五章 ~古の放浪編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

150/497

149 ブライト少年

 仕方なく懐に忍ばせてあったポチビタンデッドを飲み、昨日までの疲れをとる俺。

 そしてそれを前に、ブライト少年は嬉しそうに用意されたテーブルの前に腰掛けた。

 後ろから静かに付いて来る侍女が一人。てっきり若い女かと思っていたが、そう言えばここの主人は弟が大好きな訳だ。

 当然、若い女なんて近づける訳がない。

 ブライト少年の視界の隅に控えた一人の老女。名前はジエッタ。

 風格漂う歴戦のメイド……そんな感じだ。フルブライド家に長年仕えているのだろう。そうじゃないとジュンが任せるはずがないからな。

 頭をぽりぽりと掻く俺の後ろから、複数人の気配がする。これは、アルフレッド?

 振り返ると現れた仏頂面。背後には二人の執事が羊皮紙やペン、それに三冊の本。

 なるほど、魔法書や勉学用の筆記具か。

 それらを無言で置き、静かに頭を下げてさがって行く三人を見送ると、興奮が限界に達したのか、ブライト少年は勢いよく立ち上がった。


「ポーア先生! では!」


 男版のナツを見てるかのような無邪気っぷりだ。確かに初めて魔法が使えた時は興奮したが、子供となるとここまで変わるのか。

 俺は入門書と書かれた魔法書を手に取り、この時代における魔法の入門レベルを確認した。

 …………なるほど。読んでみて現代と大差ない説明だが、いささか説明が大味というかなんというか……。

 まぁ、これは少なからず進化してるという事だな。


「ではブライト様。ブライト様が描く魔法士とはどんな魔法士ですか?」

「んー……そうですね。圧倒的存在感で……戦況を一瞬でひっくり返せるような……そんな存在です」


 これまたデカい目標だな。

 確かにこの時代での魔法士の役割は大きい。魔法士自体が少ないからな。

 この町の冒険者ギルドでは俺しか見かけなかった程だ。やはりエルフがそういった部分を担っているのだろうか。

 ソドムでは何人か見かけたが……。


「でも、一番は……姉上のお役に立てるような、そんな魔法士になりたいのですっ」


 力を込めた拳を胸の前に出し、意気込みを見せるブライト少年。

 さて、どんな魔法士になるか楽しみだな。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ポーア先生、これは?」

「設置型魔法陣のマジックシフトです。この魔法陣の上にいれば、私の魔力が使い放題です」

「おぉ!」


 年齢の低いブライト少年が、レベル(いち)のブライト少年が魔法を発動するのは、中々に骨だ。

 街から出る事を許されない状況でレベルを上げろってのも無理な話な訳だ。

 色々考えた末、苦肉の策でマジックシフトを使う事にした。

 これによって少ない魔力で魔法を放ち、付いた良称号から当人に魔力を与えるという強引な方法だ。ある程度の魔法が使えるようになれば、マジックシフトを使わずに魔力回復魔法(ギヴィンマジック)のみで魔法の指導が出来るのだ。

 しっかし…………俺以外の魔法士だったら、もっと強引な方法になっただろうな。少しでもレベルを上げなくちゃ魔法の知識だけという事になってしまう。

 知識で得られる良称号もあるかもしれないが、俺はそれを知らないしな。

 ジュンが戻ってきたら戦闘の方も教え込みたいところだが、果たしてあのジュンがそれを許すかどうか……。


「では復習です。四大元素は?」

「はい! 火・水・土・風の四つです!」

「よろしい。先程教えた最下級攻撃魔法は覚えてますか?」

「はい! リトルファイア、ウォータードロップ、ストローストーン、ブリーズです!」

「魔法式は? ご飯だぞ!」

「は、え!? ご、五芒星です!」

「四つの魔法式に必要なものは?」

「具現式、移動式、発動式です!」

「ではリトルファイアから!」

「はい! えっと目標は!?」

「三、二、一……――――」

「――ご飯はどこですかっ!?」

ポチ(アレ)です!」

「ほいのほいのほい! リトルファイア!」

「ふんっ!」


 ブライト少年が見事に放ったリトルファイアを、ポチが下から上に払った爪で掻き消す。


「ご飯はどこですか! 何してくれちゃってるんですか、馬鹿マスター! あ、それよりご飯はっ!?」


 怒りが欲に負けるという面白いケースだな。相変わらずポチの行動は面白い。

 俺の周りで存在しない食事を探しながら鼻をすんすんとさせている。

 そしてより一層鋭い目つきになった。

 何だ、何かを見つけたのだろうか?


「紅茶ですね!? 良質な茶葉を使用してます!」


 ないはずの眼鏡をくいっと上げる仕草を見せた後、ポチは前脚でテーブルを差した。


「ふっ、わかりましたよマスター……紅茶がここにあるという事は…………即ち、この後ケーキが来るのでしょうっ!?」


 そんな輝かんばかりの笑顔で言われても何もねぇよ。

 おっと、それよりブライト少年だ。

 初めての魔法発動だし――――

 そう思い振り返った時、ブライト少年は自分の両手をじっと見つめていた。

 手を握り、そして開き、そしてまた握る。何度か同じ動作を見せると、震えながら口の端を上げた。

 瞬間、ぞくりという悪寒が俺を襲った。

 …………大変だ。早くもあの黒帝様の嫌な笑みが顔を見せ始めた。寧ろソックリだ。

 先祖だし、しょうがないと言えばしょうがないのだが、こんなに似なくてもいいのに。

 すぐに元の無邪気な表情に戻ったみたいだが…………やはりこの子、根は相当なブラック様だな。

 心から姉の事が大事なのには変わりないが、ブライト少年自身が隠している顔も多そうだ。


「で、では次ですね! その紅茶を使ってウォータードロップを!」

「あ、でも的を用意しなくちゃいけないですよ。シロはもうやりたがらないだろうし……」

「シロさん、ケーキを用意させましょう」

「むきーっ! 私そんなに安くな――」

「ジエッタ、ホールで用意してあげてください」

「どんと来いです!」


 早くもポチの扱い方を心得たブライト少年は、この早朝の魔法指導だけで、四大元素の攻撃魔法の初歩を身に付けた。

 俺より早く朝食を済ませたブライト少年は、魔法書を一ページ一ページめくりながら終始そわそわしている。

 魔法という存在が、それ程までに大きな衝撃を与えたという事か。

 朝の魔法指導で、風魔法の中の特殊初歩魔法のボルトを習得。というかブライト少年が勝手にやったんだけどな。

 これにて最下級と呼ばれる初歩を身に付けたブライト少年は、俺の昼食中に魔法の入門書を読破。一字一句間違わずに暗唱する程、驚異的記憶力を俺に見せつけた。

 理解力はリナ並み、記憶力はティファ並み、応用力はララ並みだ。

 ちょっとやばいくらいに天才かもしれない。

 一番長い昼食後の魔法指導。

 遂に回復魔法に手を出し始めた。

 回復魔法には初歩と呼ばれる最下級魔法が存在しない。なので、下級魔法のキュアー、リカバーをじっくりと教え込んだ。

 するとブライト少年に異変が起きた。あれ程簡単に最下級魔法をこなしていたのにもかかわらず、回復魔法には相当時間がかかったのだ。魔法公式を覚え、手に魔力を込めるだけでも内在的なモノが反発し合って発動しにくくなる現象がある。

 魔法士間で、これを「魂性(こんしょう)の不一致」と呼んでいるのだが、コツさえ掴めばどうという事もない。

 俺も魔法大学に入学し。少しビリーに回復魔法を習ってからはそれが改善されたしな。

 結局、午後の魔法指導では、ブライト少年に明日以降の予習をしてもらった。

 魔法の底は深く広い。下級魔法、中級魔法、上級魔法と上がる度に、それは難しく、より広がっていくのだ。

 さて、ブライト少年のステータスはどうなったかな?


 ――――――――――――――――――――

 ブライト

 LV:1

 HP:88

 MP:199

 EXP:6

 特殊:

 称号:弟・生徒・見習い魔法士・求道者・カリスマ・黒帝(童)・天才(偏)

 ――――――――――――――――――――


 どこかの黒帝と似たようなステータスだな。

 しかし天才か。今までこの称号を持った人間に会った事がない。今日だけで確かにその片鱗は見た。称号の力もあってか、レベル一の体力と魔力じゃないなこれは。

 …………もしかしたら俺は、とてつもない偉人に出会ったのかもしれないな。

次回は現代かもしれませんし、そうでないかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』
おっさんは、魔王と同じ能力【血鎖の転換】を得て吸血鬼に転生した!
ねじ曲がって一周しちゃうくらい性格が歪んだおっさんの成り上がり!

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
[良い点]  ポチビタンデッドの文字を目にする度ポチへの愛を感じるともに、ポチがビタン転んでデッドしてしまいゾンビになって蘇る幻が脳裏をかすめます。夏ですね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ