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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第四章 ~ランクS編~
123/496

122 あぁ我が生徒たちの成長③

二日間お待たせしました。

再開いたします。

「どうやら使い魔を圧縮空間に留める魔法みたいね。どっちが使い魔を(ないがし)ろにしてるのよ」

「バラードの身体は人間の世界では生きにくいの。それに、バラードも同意してくれてるわ。それよりタラヲちゃんがバラードの前に立てないみたいだけど? どうしてかしら?」

「くっ、ほら! 早く来なさい!」

「わわわわわわわわわ我輩の事かっ!?」

「他に誰がいるのよ!」


 ちらりと俺たちを見るタラヲ。


「止めぬのかっ? 今この場を止められる力を持つ者はお主たちしかおらぬぞっ!? 止めぬのか!?」ってタラヲの顔に書いてあるように見えたが、俺は心を鬼にしてそれを無視した。

 ティファもタラヲもまだまだ成長途中だ。この試合(喧嘩)を止める事は、その成長を止める事に等しい。俺はそう考えていた。


「お、ちょうどいい頃合いだったらしいな」

「ブルーツ、来たのか?」

「ララもだぞ!」


 ブルーツに肩車されたララが言った。


「おー、ホント最近仲がいいなお前たち」

「ははは、まぁな。ララの素早さは脅威だが、戦闘は単調で危なっかしいからな。ちっと教えてやってんだ」

「ブルーツは教え方が雑だけど優しいぞ!」

「魔法士であれだけ動けたら凄いですよ!」


 俺たちの呑気な会話をよそに、タラヲは全てを諦めた様子で、しょんぼりとティファの下へ歩いて行く。


「なーアズリー? タラヲ可哀想だぞー?」


 指を差して「止めないのか」という意味の言葉に、ブルーツが上を向いて答える。


「あの二人が大人だったらアズリーも止めんだろうが、あぁいうのは経験して理解した方が結果として未来の自分に歯止めがかかるんだよ。だからアズリーは今止めないで明日以降の二人を止めようとしてるんだ」

「おぉ~。よくわからないぞー?」

「ハハハハハ、まぁそりゃそうだっ。っと……始まるみたいだな」


 ブルーツの言った通り、リナの杖を握る拳に力が入った。

 だがタラヲはまだティファの下には着いていない。相当嫌なんだろうなぁ……。


「スウィフトマジックは使わないから安心してね、ティファ」

「余裕言えるのも今の内なんだから……」


 両者腰が下がったところで、戦闘開始。

 まずはティファの先手、リナはどうやら受けに回るようだな。バラードも腕を組んでいるだけだ。タラヲを睨みながらな。

 しかしその強烈な圧迫感はティファにも届いている。

 さて、ティファの宙図(ちゅうず)速度はどんなもんだろう?

 これは六芒星の……魔術陣か。かなりの速度だが、初手に放つ魔術としてはあまりよろしくないな。


「ほいのほいのほい! 剣閃集降!」


 魔術陣の中から無数の剣撃が飛ばされる。

 これは……やっぱり公式通りの魔術か。もしかしてあの文献や資料の中にはそういった内容のものが入ってなかったのか?

 それともティファの独創性の問題で、公式無視のコードを組み込むことが出来なかったのか。

 ま、これは追々考える事だな。


「ほほい! アースコントロール!」


 下級魔法であれば、あの速度で出せるのが今のリナの宙図(ちゅうず)

 高ランク魔法士に愛される万能なアースコントロールは、今後も改良の余地があるな。


「知ってたわっ。ほほい、パラサイトコントロール!」


 おぉ、防がれる事を予期して片手宙図(ちゅうず)をしていたのか。しかもあれは相当な速さだ。

 宙図(ちゅうず)速度はもしかしたら互角か?

 土壁に阻まれていた剣撃は勢いを止めたが、剣撃が終わった訳ではない。その残りがリナへと向かう。


「リナさん危ないですー!」

「甘いな。リナに体術を仕込んだのは、ベティーだぜ?」

「リナならあれくらい弾けるぞー!」


 魔力を込めた杖の先端が、りんと音を放って響く。

 土壁を潜り抜けた剣撃はリナの手によって弾かれ、叩かれ、打ち返される。


「はは、リナのヤツ、戦士としてもランクAでやっていけるんじゃないか?」

「おうよ、既に剣技の指導にも入ってるみたいだぜ?」

「本当かよっ?」

「あぁ、ランクSの昇格審査前にベティーと始めたそうだ。どんなに魔力は尽きても、顔の怪我だけは最優先で治してたってさ。まったく、誰のためなんだろうな? ハハハハ」

「ホント、誰のためなんでしょうねー? ホホホホ」


 ブルーツとポチが凄くむかつく視線をこちらへ向ける。

 ララは首を傾げているが、なんとなく俺には想像出来てしまう。くそ、顔が少し熱い!

 返された剣撃は、ティファが後方に跳ぶ事によって回避された。

 おぉ、ぎこちないがティファの体術も中々だな。戦士レベルでいうならランクDというところか。

 そういえばティファのレベルはいったいどんなもんなんだ? ポチが視線を戦闘へ戻した隙を狙って鑑定眼鏡を発動する。



 ――――――――――――――――――――

 ティファ

 LV:41

 HP:296

 MP:600

 EXP:130019

 特殊:攻撃魔法《上》・補助魔法《中》・回復魔法《下》

 称号:生徒《優》・魔法士・ランクD・首席

 ――――――――――――――――――――


 世の中には天才っているんだなやっぱり。レベルより特筆すべきは攻撃魔法だろうな。

 補助魔法や回復魔法と違って攻撃魔法はバリエーションが豊富だ。それ故に下、中、上と段階を上げるのが中々に難しい。

 この年でそれが出来ているという事は努力もそうだが、相当なセンスが必要だ。

 体力が少ないのは年齢のせいもあるだろうが、身体の成長とともに多少体力が向上するから、ここは長い目で見るべきか。

 さて、ついでに成長したリナも見ておくか。


 ――――――――――――――――――――

 リナ

 LV:63

 HP:991

 MP:1610

 EXP:441039

 特殊:攻撃魔法《上》・補助魔法《上》・回復魔法《特》・疾風・軽身

 称号:妹・剣士・魔法士・魔法教室卒・ランクA・学生自治会長・(はや)き者・静かなる魔法士(サイレントウィッチ)

 ――――――――――――――――――――


 へぇ、あの時のウォレンに比べても大差ないステータスだ。

 学生自治会長の称号は大きい。それにベティーの教えがしっかりといきている。

 こりゃ、経験で勝負が決まってしまうな。リナのヤツ、今は受け身の姿勢だが、いつでもティファを倒せる状態だな。

 先輩としての余裕というより、ティファの成長を度合を確かめたいというとこか。

 それよりも……俺はあっちのが気になってしまうんだが……――――


「きっ、貴様! 我輩の前でふんぞり返っているではない! そしてその見下すような目はなんだ! 我輩を前にいい度胸だ!」


 竜を前に本当にいい度胸をしたチワワーヌだ。

 まぁ、あれはあれで開き直っているだけかもしれないけど、バラードの方はまるで子犬がキャンキャンと吠えてるようにしか捉えてないような目だ。

 実際そうなんだけどな。


「この狼王ガルムを前にその態度、万死に値するぞ!」


 そういえばこの前もそんな事を言っていたな?

 狼王ガルムと言えば、ランクS入りも検討されているランクAの危険モンスターだ。あのチワワーヌがそうだとはとても思えないが。

 はて?


 ――――――――――――――――――――

 タラヲ

 LV:10

 HP:10

 MP:10

 EXP:9999999

 特殊:吠える・鳴く

 称号:呪われた狼王・揺るがない誇り(プライドフィックス)・ランク圏外・最下級使い魔

 ――――――――――――――――――――


 ………………どうなってるんだこりゃ。

 経験値からなるレベルも、レベルから考える体力や魔力も、どう考えても低すぎる。

 どれも見た事も聞いた事もない称号だ。

 呪われている称号なんて特にだ。一体何をどうやったらこうなっちまうんだ?


「ふはははは! 我輩の威圧を前に一歩も動けぬと見た! 下がれ! すぐに我輩の前から消えるのだな!」


 この言葉に流石のバラードも呆れたのか腹が立ったのか、腕組みを外して息を吸う。

 ブレスか? いや、賢いバラードの事だ――――


「ふんっ! でしゅ!」

「ぐおっ!?」


 圧縮した空気の圧力で吹き飛ばしたのか。

 ごろごろと転がるタラヲはまるで子供の遊びに使うボールみたいだ。お、止まった。


「ぐぉおおおおおおっ……っ! 身に走る衝撃、身体の内を蝕む大地の怒り! ふふふ、それ程までに我が身を嫌うかっ」

「つまり痛いんでしゅよね?」

「そうだ! あ、いや、違う!」


 呪い、か。少し調べてみよう。

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