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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ 作者:壱弐参

第四章 ~ランクS編~

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117 二番目の優秀な生徒

昨日は投稿できずすみませんでした。
上記理由につき、本日は二話の投稿となります。
こちらは4月18日分、一話目となります。ご注意ください。
 俺はガリガリと引っ掻かれているドアを開ける。
 すると、ひょこひょこと歩くチワワーヌが参上した。

「ぬぅ!? 貴様、何者だ!? この狼王ガルムであるタラヲに何の用だ!?」

 至極変なチワワーヌだ。

「可愛いですー!」

 凄く変な我が使い魔がそう言った。

「あら、可愛いわね」

 ベティーもそれに続いた。可愛いかな?

「可愛い……だと?」

 おっと、プライドが高そうだし、怒らせてしまったか?

「当然ではないか!」

 違った。
 何だこの訳のわからない空間は……。まずは状況を整理しよう。おそらくここに寝ている女の子はティファ。
 そして自分を狼王ガルムだと言うこのチワワーヌはタラヲと言うらしい。

「とりあえず私たちは下に行って知らせてくるから、アズリー、アンタはここでお留守番ね。さ、行くわよポチ」
「はいですー!」
「あ、おいっ。……ったく、行っちまった。なぁ、お前は一体何なんだ?」
「ぬぅ、貴様があのアズリーかっ!?」

 おや、怒らせてしまったか? 何だろうこの使い魔は? よくわからない性格をしているな?
 にしても俺を知ってるって事は……ティファが話したのか? それとも嫌な噂でも出回ってるのだろうか?

「あぁ、そうだけど……」
「ぬぅ………………貴様っ!」
「はい」
「な、中々良い胸をしているではないかっ!」

 ………………………………………………………………………………ん?
 何故俺は今、胸に関する褒め言葉を頂いたのだろうか?
 んー…………あ、そうか!

「ふっ、この大胸筋の事だな!?」
「ふっ、何の事かはわからぬが、そういう事だ!」
「みよ、このマッスルコントロールを!」
「おぉおぉおぉおぉおぉ!? 胸が……う、動いているっ!? 貴様、相当な魔力の使い手と見たっ!」
「魔力なんて無粋なものではないっ! これこそが純粋エネルギー、筋力の賜物だ!」
「き、筋力…………っ!」
「何…………やってるんです?」
「……………………………………やぁ、イツキちゃん」

 とても恥ずかしいところを見られてしまった。
 見ろ、あの目を。珍種のモンスターを目の当たりにしたような目だ。あれはきっと触手タイプだろう。

「アズリーよ、続きだ」
「い、今はそういう時じゃない」
「何故だ、解せぬぞ!」
「うるさい」

 それはイツキのいるドアの方からでも、タラヲの野太い声でもなかった。ましてや俺から出た言葉でもない。
 俺のサイドチェストのポーズは未だに崩せていない。腕を離しフロントリラックスからサイドリラックスへともっていきながら振り返ると、そこには目を擦り、眠気が残る脳と戦いながらこちらを見るティファの姿があった。
 目の光は鋭く強くなったものの、我が生徒はそこまで変わっていな――――

「タラヲ、何勝手に入ってるの? 茹でて食べるわよ?」
「すみませんでした」

 うん、結構変わってるかもしれない。
 大変だ、目が合ってしまったぞ。何だろう、とても……とても固まっていらっしゃるような、そんな感じだ。
 とりあえず挨拶を――

「やぁティファ、元気そうだね」

 咄嗟のあまり、かなり軽い口調になってしまったと思う。
 だがティファは首を傾げて、目元を(こす)っている。疲れているのかどうやらぼーっとしているようだ。
 おや? おもむろに立ち上がったぞ?
 フードを被りなおして…………無言で……通り過ぎた。更にイツキちゃんを通り過ぎ、ドアから出たタラヲを抱きかかえた。

「ぬ、どうしたティファよ。ふふふ、そうか、ついに我輩の魅力に――――」

 と聞こえたところで大きな音を立ててドアが閉まった。
 その後聞こえたのは「ひぁっ!?」というタラヲの小さい悲鳴と、猛烈な勢いで走ったであろう大きな足音だった。
 部屋に残された俺とイツキちゃんは、互いに見合う。

「何…………やってるんです?」
「フロントダブルバイセップスだね」

 首を傾げずにいるイツキちゃんの冷たい目を見て、俺はアイリーンの「魔力循環の法」を極めようと思った。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ちょっとアンタ、あの子に一体何したのよっ。真っ赤な顔になって店を出てっちゃったわよ?」
「何か凄かったですよ! 涙目になっちゃって、可哀想でした! 馬鹿マスター!」

 何とも酷い言われようである。
 いや、言ってるのはうちの使い魔だけなんだが。
 もしかしてポチと一緒にいると、俺の愚者ポイントは加算され続け、浄化される事はないんじゃないだろうか?
 って、そういえばこんな事、前にも考えたような気がする。
 ポチズリー商店の一階に行くと、食堂で皆が俺を迎えてくれた。

「よぉ、ランクS、おめでとさん。どうせ向こうでも暴れたんだろっ? ハハハ」
「ブルーツ、元気そうだな」
「おうよ! ははは、まぁ座れよ」

 俺の左右にはポチとベティ―が座り、ブレイザー、ブルーツ、春華、ナツ、ララとツァルも座り、食事の支度を待っていた。
 リナは入学式の後始末で忙しいらしく、どうやらまだ戻って来てはいないらしい。
 後で様子を見に行ってみるかな?

「アズリーッ、なっ、なっ? 後で畑を見にくるといいぞ! ララとお師匠様の会心の出来だぞ!」
「おぉ、それじゃあ後で中庭に行こうか」
「「いや、アズリー殿。フォールタウンの方だ」」
「で、では明日見に行くという事で……」
「絶対、絶対だぞっ!」
「あぁ」

 ララはエメラルドの瞳を輝かせて言った。この時、ツァルが俺に目配せをする。
 なるほど。やはりフォールタウンにはあれから異変は起きていないみたいだ。
 つまりあの時のクリートの狙いは、氷漬けにされた聖戦士リーリアの遺体。もしくは破壊という事だったんだろう。

「アズリー君! アズリー君! 春華がね? ランクCになったんだよっ! それとねそれとね? ナツもランクEになったのー!」
「おぉ、そりゃ凄いなナツッ! それじゃ今夜はお祝いだな! 春華もおめでとうっ」
「ふふふ、あい。ありがとうございんす。でも今日は、アズリーさんとベティーさんのお祝いでありんすよ?」
「もぉー、春華ってばわかってるじゃないっ! でも、本当におめでとうっ」

 ベティーは春華に頬ずりして喜びを伝えている。
 目を瞑って嬉しそうにそれに抗おうとする春華も、こうして見れば歳相応に見える。

「へへ、それとなアズリー? 今日はお()ぇを驚かせようと、ゲストを呼んでるんだぜ?」

 ブルーツ嬉しそうにブレイザーに合図を送る。

「ゲスト?」
「まぁ、もうゲストとは呼ばないのだがな」

 ブレイザーは意味深な言葉を俺に伝えると、すっと立ち上がって、食堂の扉を開けた。
 あぁ、そうか。この穏やかな気配は彼のものだったか。
 俺は立ち上がって彼等を出迎える。そしてこれからブレイザーが話そうとする事を予想しながら、綻んだ顔を隠すように俯いた。
 そして顔を戻し再び彼等を見据える。

「お久しぶりですな。アズリー殿」

 フォールタウンの長、いや長だったライアンの登場。
 そしてその隣にいるレイナもにこやかに頭を下げる。

「ライアンさん、レイナさん。お久しぶりです」
「よぉアズリー! 元気そうじゃないか!」
「兄さん、恥ずかしいからそういう事はやめて頂戴。まったく……久しぶりね、アズリー」
「リードにマナも、鍛えてるみたいだな。それに――」
「お久しぶりです、アズリーさん! あの、この度は、本当におめでとうございます! それにポチさんも!」

 勢いよく頭を下げるアドルフ。どうやらこの場に少し緊張しているみたいだな。

「あ、どうぞ。掛けてください」

 皆の着席を促し、俺の対面に座ったブレイザーが話し始める。

「今回、ライアンたち(、、、、、、)を呼んだのは他でもない。銀の事だ」

 いきなりのライアンへの呼び捨てに、ポチの耳がピンと立つ。
 ばっと俺に振り返るが、俺は「ブレイザーの話を聞け」とアイコンタクトを送った。

「この度、ライアン含むこの面々が、正式に銀に入る事になった」

 なるほど、銀のリーダーという立場からの呼び捨て発言という事か。

「そして、ブルーツ、ベティー、春華と話し合った結果、ライアンに、銀の副リーダーを任せる事になった」

 という事は……ベテイーのヤツ、この事を黙ってたな?
 ついさっき戻って来たのに、今日この短時間で話す事は出来なかったはずだ。
 俺の視線に気付いたのか、ベティーは舌を出してウィンクした。おのれ、中々に様になってるが、気分としてはとても可愛くない。

「まっ、そういうこった」

 兄妹揃ってウィンクしてくる。気持ち悪いぞお前たち。

「それはおめでとうございます」
「ナツも! ナツも入ったのー!」
「おぉ、ついにか! おめでとうナツ!」

 複雑な心境なのかブレイザーはナツのチーム入りに関しては苦笑している。
 そりゃそうか、子供が戦うご時世とはいえ、高難度の依頼をこなすチームだ、ナツがこれから経験する事はあまりにも多い。
 それを強いる事になる……となると、素直には喜べないのだろう。
 懐くあまりに仲間意識とは違った情が沸いたのだろう。まったく、本来は戦いに身を置く将来となった子供たちの受け皿として協力を申し出てくれたはずなんだが、気持ちはうまくいかないって事か。

「しかし……ブルーツもベティーもよかったのか? ライアンさんには悪いけど、銀に身を費やしてきたのは二人だろ?」
「「性に合わねぇ」ないわよ」
「あ、そう」
「無論私もそう勧めた。だがこの二人の意思は変わらなかった」
「これからは銀の一員として、アズリー殿の手助けをしたいと思います」
「でも、それじゃフォールタウンの生き残りの人たちは――?」
「安心しろってアズリー」

 リードが俺の言葉を遮る。

「あいつらの事も俺たちが銀に入る事で解決だ。チームが大きくなる事によって依頼の幅も増えるし、安全マージンもとりやすくなる。結果としちゃ収入は増えるし、ブレイザーさんと話して、そっちにも金を割ける事になってる。チームの強化も進められるしな」
「ハハハ、春華にランクで負けてっからなリードはっ」
「う、うるせぇ! さっさと強くなってブルーツくらい飛び越えてやらぁっ」
「はっ、やってみな、ランクE」

 間に挟まれたマナが少し可哀想に見えてきた。
 ブルーツにベティー、リードにマナ……この二つの兄妹はとても似ている。性格も勿論だが、関係もな。
 だが、実力はかなり離れている。この二人の成長も楽しみだな。

「はははは。そういう事です、アズリー殿。微力ながら……よろしくお願い致しますぞ」

 やはり引き付ける笑顔。こりゃ強力な戦力が銀に入ったな。

「そしてこれは三人にも初めて言うが――」

 三人とは他の銀のメンバーにも内緒だったという事か。
 もしくは話し合うタイミングを見計らったか。ブレイザーはそういった時期を読む事に長けているからな。
 この場でそうすると決めたのならばそれが正解なんだろう。

「来年、魔法大学の卒業に伴い、イデアとミドルスのチーム入りが内定している」
「おぉ、そいつぁいいぜ!」
「へぇ、やっぱりあの二人入るんだ」
「そうでありんすか。あのお二人が……」

 三者三様に驚いて……ない。三人とも入るべくして入るんだと確信していたようだ。
 そうかイデアとミドルスが…………………………ん?

「えぇっ!? 何だってっ!?」

 だってあの二人には白黒(びゃっこく)の連鎖の契約があるだろっ!?
因みにサイドチェスト、フロントリラックス・サイドリラックス、フロントダブルバイセップスはボディビルの競技の中にあるポーズの四つです。検索するときっとアズリーのポーズが脳内で花開くでしょう。(検索後のリアルマッスラーを見た後の抗議は受け付けておりません。自己責任でお願いします)

簡単な説明は下記。

①サイドチェスト=チェストとは胸の事。胸の厚みを強調させるポーズ。肩の大きさも見えて、とてもお得なポーズです。
②フロントリラックス=正面に立つ自然体。
③サイドリラックス=普通に横を向く自然体ポーズ。より逆三角が強調されます。
④フロントダブルバイセップス=上腕二頭筋を曲げた正面からのポーズです。よくあるムキムキポーズですね。(因みに因みに、アズリー二巻の表紙でアズリーがしているのはバックダブルバイセップスです)

アズリーは、きっとたぶんどこかの文献で知っていたのでしょう。……おそらく。

二話目も鋭意執筆中です。今しばらくお待ちください。
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