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最終決戦用メイド・ミーナ様:全宇宙を滅ぼせる力で、主人のワンルームを四畳半の極楽に変える件  作者: ぱすた屋さん


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1/3

1話

短めの話で3話構成です。

思いついたので勢いだけで書きました。

 ここは宇宙の掃き溜め、廃棄物惑星『ジャンク・エンド』。

 空を見上げれば、星の代わりに人工衛星の死骸が流れている。

 

 そんなクソ暑いゴミ山の中で、タケルは今日も一人、ジャンクを漁っていた。


「……あー、今日もハズレ。食えるゴミがねぇ」


 タケルが錆びたボルトを蹴飛ばすと、ガラガラと崩れた鉄屑の中から、

 コロコロと『何か』が転がり出してきた。


 それは、驚くほど綺麗な女の子の『頭』だった。


「……うわっ! 生首!?」


 腰を抜かすタケル。

 だが、よく見ればそれは機械だった。

 人形以上に精巧な、透き通るような白い肌。

 閉じた瞼。

 

 この汚いゴミ山には、およそ似つかわしくない気品がある。周辺には元のパーツと思われるものもあった。


「……拾ったはいいが、これ、どうすりゃいいんだ?」


 タケルは戸惑いながらも、その『お宝』を抱えてコンテナハウスへ連れ帰った。


 ***


 その日の夜。

 タケルはなけなしの工具を手に、彼女の修理に挑んでいた。


 手元にあるのは、接触の悪いハンダごてと、

 別の廃ロボットから剥ぎ取ったお下がりのチップだけ。


「頼むぞ、動け……!」


 祈るようにスイッチを入れた、その時。


 ガタガタガタッ!!


 接続した荷運び用メカのフレームが、派手に痙攣した。

 次の瞬間、彼女の瞳に琥珀色の光が灯る。


『――システム、オンライン』


 涼やかな、鈴を転がしたような声が響いた。


「お、起きたか! 爆発しなくてよかった!」


 彼女はゆっくりと首を回し、部屋を見渡した。

 そして、煤まみれのタケルをじっと見つめ、優雅に頭を下げた。


「おはようございます、旦那様」


「だ、旦那様?」


「はい。私は『星系殲滅自律型ユニット・零号』……

 いえ、現在は機能の九割がバグで死んでおります。

 今の私にできることと言えば……そうですね。

 本日より、私は旦那様の生活を支える『家事用メイド・ミーナ』として勤務いたします」


「……メイド? 今、最初の方に物騒な名前が聞こえた気がするんだが」


「気のせいです。それより旦那様」


 ミーナが、部屋の隅に山積みになったジャンクパーツを指差した。


「この部屋、汚すぎます」


「直球だな、おい」


「衛生レベルが致死量です。カビが独自の文明を築き、

 新しい宗教を興そうとしています。

 旦那様の健康寿命は、あと三十分で尽きます」


「嘘をつけ!」


「いいえ、不備バグです。今すぐ『お掃除』させていただきます」


 ミーナがそう断言した、直後。

 彼女の手のひらから、透明な波導がシュパッ! と放たれた。


 次の瞬間。

 タケルが十年かけて溜めた油汚れも、錆も、ゴミも。

 すべてが光の粒子になって消滅した。


 あまりの勢いに、タケルの着ているシャツの汚れまで剥ぎ取られ、

 布地そのものが真っ白に変色する。


「……うおおおっ!? 俺の在庫が! シャツの柄が!

 掃除っていうか、これ消滅させてないか!?」


「ご安心ください。分子レベルで汚れ(不要物)を除去しただけです」


 わずか三秒。

 コンテナハウスは、新築のショールームみたいにピカピカになっていた。


 ***


 そんな感動(と恐怖)の最中。

 外からズズン……と、大地を揺らす足音が響いた。


 タケルが慌てて外へ出ると、空を覆わんばかりの巨大な戦艦が浮いている。

 そこから、成金趣味の金ピカなシャトルが降りてきた。


 降りてきたのは、磨き上げた軍服を着た男。

 銀河最大の不動産企業、ギャラクシー・デベロップメントの執行官ゼノスだ。


「――フン。反吐が出る。空気が鉄錆の味しかせん」


 ゼノスは白いハンカチで鼻を押さえ、嫌悪感を隠さずにタケルを見下ろした。

 その後ろには、武装した無人ドローンが、ずらりと並んでいる。


「……何の用だよ、エリート様が」


「通告だ、下層民。この惑星は我が社が買い取った。

 明日の同時刻より、惑星全体の『焼却処分』を開始する」


「……焼却処分!? なんだよそれ!」


「文字通りだ。ゴミは燃やして更地にする。

 命が惜しければ、一時間以内に立ち去れ。

 持っていけるのは命だけだ。

 どうせ、この星にあるものはすべて『ゴミ』なのだからな」


「一時間って……そんなの無理だ!」


「ハッ。ゴミ溜めで這いずり回る虫が、言葉を使うな」


 ゼノスは冷たく笑うと、一枚の紙を放り投げた。

『立ち退き勧告状』だ。

 それは泥の中に落ち、ぐしゃりと汚れていく。


 その時。

 コンテナのドアが開き、ミーナが静かに歩み出てきた。


 彼女は泥の中に落ちた紙を、指先でつまみ上げる。


「……旦那様。不法投棄を確認いたしました」


「えっ? ああ、ミーナ、危ないから下がってろ」


「いいえ、旦那様。

 メイドとして、主人の敷地に『ゴミ』を投げ捨てられる行為は……

 万死に値するマナー違反です」


 ミーナの琥珀色の瞳が、冷徹な義務感で凍りついた。


「……何だ、その骨董品は。私の話を聞いていなかったのか?

 そんなボロ機械、まとめてスクラップにしてやれ」


 ゼノスが指を鳴らす。

 ドローンの一機が、ミーナに向けてレーザーを放った。


 シュバッ!


 閃光が奔る。

 だが、ミーナは眉一つ動かさない。

 彼女が手に持っていた小さな『塵取り』を、盾のように掲げた。


 次の瞬間。

 レーザーは塵取りの表面で完璧に跳ね返り、

 あろうことかゼノスのシャトルの主翼を貫いた。


 ドゴォォォォン!!


 大爆発。

 ゼノスが悲鳴を上げて地面に転がる。


「……光の反射効率を調整し、有害なエネルギーを返却いたしました。

 窓掃除のスキルを応用すれば、この程度の乱反射は造作もありません。

 旦那様、許可をいただけますか?」


「な、何の許可だよ!」


「害虫の駆除、並びに『不燃ゴミ』の処分の許可を」


 ミーナがスカートの裾をわずかに持ち上げ、優雅に膝を折った。


 直後、彼女の背後の空間から、巨大なブレードが現れる。

 本来なら星を壊すための武装だが、ミーナが握ると――

 なぜか巨大な『キッチンナイフ』にしか見えなかった。


「……や、やれ! 壊せ! あのイカれた機械をバラバラにしろ!」


 ゼノスの悲鳴。

 数十機のドローンが一斉に弾丸を放つ。


 だが、ミーナの動きはもはや残像だった。

 ダンスでも踊るかのような優雅な旋回。

 飛来する弾丸をナイフの腹でカチカチと弾き落としながら、

 ドローンの群れの中央へと飛び込む。


 一閃。


 ミーナがナイフを軽く振るうたび、鋼鉄の機体が豆腐のように断裂していく。


「お掃除の基本は、分別と解体です。

 不燃ゴミは……このように、サイコロ状に切り分けると収まりがよろしいですよ」


 わずか十秒。

 さっきまで空を覆っていたドローン軍団は、

 すべて正確な立方体に切り分けられ、足元にピラミッドのように積み上げられていた。


 静まり返った荒野で、ゼノスは腰を抜かしていた。

 震える指をミーナに向け、情けない声を出す。


「……化け物め。貴様、自分が何をしたか分かっているのか!?

 我がギャラクシー・デベロップメントに逆らって、ただで済むと……!」


「お静かに。旦那様の穏やかな午後のティータイムを妨げる騒音もまた、

 私の『排除対象』です」


 ミーナがナイフの先端をゼノスの喉元に突きつけ、冷ややかに微笑んだ。


「今すぐここから去るか、あるいは……

 私が考案した究極のゴミ圧縮処理を、そのお体で体験されますか?」


 その瞳に宿った、本物の『殲滅兵器』としての残光。

 気圧されたゼノスは、情けない悲鳴を上げてシャトルへと逃げ帰った。


 ボロボロになった艦隊が空へと逃げ去るのを、タケルは呆然と見送る。


「……助かったよ、ミーナ。すごい、っていうか、やりすぎっていうか……」


 タケルが脱力して座り込むと、ミーナは何事もなかったかのように

 エプロンを整え、お辞儀をした。


「当然の業務です、旦那様。……ですが、一つご報告がございます」


「何だ? 礼ならいくらでも言うぞ」


「いえ、その必要はありません。それよりも、先程の防衛行動、

 並びに室内浄化に使用した魔導エネルギーの消費量についてですが」


 ミーナが空中にホログラムの請求書を映し出した。

 そこに並んだ、見たこともない桁数の数字。

 タケルの顔から血の気が引いた。


「……おじいちゃんの代から貯めてた俺の全財産の、三倍……?」


「はい。現在の旦那様の経済力では、次の『お掃除』を実行した場合、

 破産という名の致命的なシステムエラーが発生いたします」


「な、なんだって……!」


「ですので旦那様。明日より、起床時間は午前四時。

 私の維持費を稼ぐため、倍の効率でジャンク回収を行っていただきます。

 お掃除のメニューも厳しくさせていただきますね?」


「……俺、もしかしてとんでもない死神を拾っちまったのか?」


「いいえ、旦那様。最高に献身的なメイドです」


 琥珀色の瞳を優しく細めて微笑むミーナ。

 

 夕暮れのゴミの星で、タケルの絶叫だけが空虚に響き渡っていた。


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