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Stay Here  作者: 多手ててと
遠征

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41.アプローチ(1)

私は毎年クリスマスの時期は家族と過ごしている。今シーズンは年が明けたら早めに日本に戻りたかったので、クリスマス前は早めに帰国した。なお昨年私は日本の経営・管理ビザを取得しているので出入国は比較的簡単。


ヒースロー空港まで出迎えてくれた両親と一緒に私は自宅に戻った。


「牧場の買収に少し手間取っているようだね」


「ええ、やはり商慣行の違いにもっと慣れておけばよかったと思うの」


牧場買収の話がほぼまとまっていることはお父様もご存知だと思う。そしてなぜ私が仕事を遅らせて日本に残ろうとしているのかも。先ほどの会話は釘を刺されたということだと思う。


「まあ、年が明けるまではゆっくりしていきなさい」


車の中ではそんなことを言っていたお母様が、さっそく翌日に私の部屋にいらした。とはいえ、まずは親戚の話とか社交界の話が始まるだろうから、その前置きの間に、私はどう言い訳するかを考えようとした。


それなのにお母様は挨拶もそこそこにこの話を切り出した。


「で、彼とはどうなの? サンライズカップの祝勝会に出た、という話までは聞いているけれど」


いきなりこの話になるということは、両親にとって私の結婚が一番の悩みの種に違いない。


「あれから会えていないの」


「連絡はとっているの?」


私は首を振った。


最初に会った時に貰ったカードに連絡先が書いてあったけれど、あれはもう1年以上前のこと。私はいまだ連絡できないでいる。


「どうすれば自然に連絡が取れるのか、それに会えてもどうすればいいかわからないの」


私の帰国直前にグランフェリスの中央初遠征(東スポ2歳S)があったので、連絡をとって一緒に行けば良かった。でも私の羞恥心が邪魔をして声をかけることができなかった話をした。


「そうね。ソフィアにとっては初めての恋だものね」


私はうつむいた。お母様に恋愛相談をして味方につける。その方針は間違ってないと思うのだけれど、現時点での成果は無かった。考えてみると両親も政略結婚……。でも大学の友人に相談しても上手くいかないと思う。


クリスマスは生家で落ち着いて過ごすことができたが、その後はいろんなパーティに出席する羽目になった。主に上級階級の子女が集まるもので、両親が私が参加することにしていた。これは毎年のことなので帰国するまでは気にしていなかったけれど、毎晩のように予定が組まれていることには閉口した。


友人たちと旧交を温めることはできたけれど、殿方との付き合いはやはり上手くいかなかった。嫌悪感を隠すのが精一杯だった。


おそらく両親は私の男嫌いが直った可能性を期待していたのかもしれない。私自身はその可能性が低いことはわかっていた。日本でも男性の不躾な視線はとてもイヤラシイと感じていたから、母国でそれを再確認したというだけだった。


「やっぱり例外はあの人だけなの」


3回目のパーティに出席した後、自分でもあざといと思いながらお母様の手を握りしめて訴えた。


「そうね。私もソフィアの想いが叶えば良いと思っているわ」


お母様は相変わらず私の味方だけれど、お父様がNoと言ったらそれに従うだろう。タイムリミットを意識しながら行動する必要がある。


「あの人もそれなりにユーマさんのことは気にしているみたい。ご友人の方からも話を聞いているみたい」


お父様が彼のことを調べることはわかっていた。だが「ご友人」というのは気になる。お父様が身元調査するなら探偵社などプロを雇うはずだ。調べられることはとっくに調べているはず。


「その……お父様の『ご友人』は信頼のおける方なのかしら?』


お母様は少し笑って答えてくれた。


「ソフィアも知っているでしょう。ユキシマファームのオーナーよ。直接ユーマさんに接触されたそうよ。日本人はお節介だって。あの人が口を滑らしたのにね」


そう言ってお母様が笑う。


雪島ファームは我がガウェンディシュ家の日本進出の重要な協力者。その陣頭に立つ私も当然とてもお世話になっている。


「競馬場での態度など好青年だとお聞きしたそうよ。牧場での振る舞いも良いし、特に相馬眼にかけては折り紙付きのようね」


それを聞いて私は胸をなでおろした。


「良かった。お父様は何かおっしゃてたかしら」


「悪くはないと思うわ」


お父様はまだ判断を決めていないだろう。


東洋人。庶民。米語すらおぼつかない。✗(クロス:日本だと×)が付いているチェクリストの項目は少なくないはず。


だが私の意思を無下にするのも本意ではないのだろう。しぶしぶながら彼を私の、その、将来の夫候補のひとりとして考えているのではないかと思う。


でもこのままもたもたしていたら待ってはくれないだろう。やはり私がもっと積極的にならないと進まないみたい。


年が明け日本に戻る日が近づく頃、お母様から「慎み深いアプローチ」なるものを教えて頂いた。これまでより実践的なものだった。


これでも現代の一般的な恋愛としては極度に奥手なアプローチだと思う。だがこんなことをお母様が元からご存知だったはずがない。多分奥様方のネットワークが機能したのだ。私は奥様方の格好の餌食になったと思われる。当然お父様もご存知の上の話だろう。


そうしている間に年が明け、私は京成杯を観戦するために日本に戻ることにした。

先週、「41.京成杯(6)」として投稿したものは私のミスです。

そのほとんどが「40.京成杯(5)」と重複していました。


重複していない部分を「40.京成杯(5)」に追加して、「41.京成杯(6)」は削除しています。

その続きが本話です。時系列が戻っているのでわかりにくいかもしれませんが。


申し訳ありませんでした。

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― 新着の感想 ―
 馬より恋愛だと…(๑╹ω╹๑ )
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