トイレ襲撃 対セレジア ②
「よお!! 出してるかい!!!!」
大きな音をを立てトイレへ侵入した。
扉は二つ閉まっていた。合計4つの内一番手前と一番奥の扉だ。予想していなかった展開に俺は一瞬だけ固まったが、直感を信じて一番手前の便所に決め、扉の真ん前に立った。
俺はゲンチアを抜刀した。刀と鞘が擦れた音がトイレの中に響き渡る。《印加》を発動し、ゲンチアの能力である《破壊》も同時に発動する。
コンコン
俺は左手で2度ノックした。
そして間髪入れずにゲンチアをまっすぐに突き立て、一気に扉に深く差し込んだ。
刀身は中にいるはずのセレジアを斬りつける…………はずなんだがな……。
突き刺した刀はすぐさま金属に弾かれ、速度を失い、静止した。
明らかに刀による対処だった。下から上へ弾かれたところを見ても間違いなくセレジアの反撃だった。
すぐさまゲンチアを引き抜こうとするが、横方向の力が意図的に加えられ、思うように動かなかった。その一瞬の遅れがセレジアを勢いづけた。
セレジアは一瞬で扉の蝶番と鍵を叩き斬り、思い切り扉を蹴り飛ばした。
「あぶね!!」
俺はとっさに《排他》し、刀の刺さった扉を上方へ受け流した。
大きな音を立てて、背後の洗面台やら鏡やらを破壊するゲンチアの刺さった扉。扉がなくなったトイレの中にいるのはもちろんセレジアだったが、その姿に無防備さはかけらもなかった。
「おい!! せめてパンツくらいずり下げてろよ!!」
下着も、ましてや戦闘服の下も下げていない状態で、右手には桃色に色づいた刀が握られていた。
「もう少し遅かったら危なかったですわ」
セレジアはゆっくり個室から出てくる。
「けっ!! すこし早かったか。それとも本当は光の速さでクソしたんじゃねえのか!?」
そう言った瞬間、俺はすぐさま後ろを振り向きトイレの扉に刺さったゲンチアを握る。
セレジアの殺す気のない殺気を背後に感じる。
割れた鏡にはセレジアが上から斬撃を振り下ろすのが見えた。
間に合わせる!!
俺はゲンチアへ《印加》し、《破壊》を発動し扉から容易く引き抜く。さらにゲンチアを握りながら《排他》と《加速》を使いながら左方向へ転がり、セレジアの攻撃を間一髪で避けた。
「無駄のない動きですこと」
つくづくゲンチアの能力が《破壊》で良かった。でなかったら俺は今武器なしでこのセレジアの前に立ってるか、頭から真っ二つになってるかのどっちかだ。
「えらく本気だな、おい。そんなにクソするとこ襲われて不満か? あ?」
「どう捉えてもかまいません。ただ、ひとつ言っておくと……大と決めつけるのだけは心外ですわ」