絶対に笑ってはいけない軍 人形
<ジュリアの部屋1315時>
「ただいま」
「おいジュリア、セレジアが部屋を出たぞ! あれ仕込め」
「まじか……忙しいな……」
俺は自室に用意していた大きなダンボール箱を持つと、それを持って部屋を出た。
ちなみにフレインの部屋を開けられたのも、ダンテに頼んだ。フレインが俺の部屋にいた時に実行してくれた。空き部屋なんてそうそう無いんだから、絞り込むこと自体は容易かったそうだ。
ちなみにこの企画の「絶対に笑ってはいけない軍」だが、笑ってはいけないのは、俺たちジュリア、ダンテ側であって、セレジア、フレイン側ではない。もちろん俺たちが笑いを我慢するはずないだろ? だから俺たちが笑えば、あいつらが罰を受けるという理のなかった内容になっている。
あ? 絶対に笑ってはいけないのに笑ってるじゃねえかって? それは本家の番組にも言ってやれ!
<セレジアの部屋1344時>
部屋に戻ってくるセレジア。もちろん、警戒は怠らない。おそらくジュリアが部屋に入って何か細工をしていると予想している。
部屋に入ってデスクの上に置いてあるものに目がいった。
それは人形だった。
精巧にできたそれはセレジアにそっくりだったが、ある一点が過剰に表現されていた。
セレジア人形
「…………私の髪はここまで巻いてませんわ」
その時、廊下側からかすかに聞こえてくるジュリアの笑い声。同時に流れてくる例の放送。
「デデーン。セレジア、アウト」
「基準はわたくしじゃなくてジュリアさんが笑う事ですの?」
部屋を開けて登場するジュリア。
「そうだよ!!」
「理不尽です事」
セレジアは抜刀し、ジュリアに急接近し、素早い斬撃を繰り出す。
「おい! 本気になるな! まだ、引き出しネタもあるから見てみな!!」
そういい、ジュリアは廊下を《加速》し、逃げ去った。
「困りましたわ……」
セレジアは大して困ってなさそうな表情でそう言った。
<フレインの部屋1430時>
フレインは買うものがあり、少しの間だけ、部屋を留守にした。だが、ジュリア達が何もしないわけがないと考え、恐る恐るドアの鍵を開け、部屋に入る。
まだ、整っていない新しい部屋に、やはり見慣れないものがあった。
それは、人形だった。精巧に作られたそれは、明らかにフレインに似せて作られたものだったが、何かオプションが装着されていた。
フレイン人形
ニワトリを模したフードと、背中から生えている白い羽。
「えぇ…………チキン野郎って言われてはいるけど……」
フレインはもちろん笑っていない。だが、
「はははは!」
遠くからジュリアの笑い声がフレインの耳に届く。そして
「デデーン。フレイン、アウト」
例の放送が聞こえてきた。
「またか……」
ドアを開錠し、突入してくるジュリア。
「おら! おとなしく尻出せや! ちなみに引き出しネタもあるからな! 確認しとけ!」
「えぇ……」
ジュリアは、チャンバラ棒を少しだけ、フレインに向かいぶんぶん振り回すと、さっと部屋を出て行った。
「えぇ……。目的はケツを叩きたいじゃなくて、ガ◯使の雰囲気で笑いたいだけなんじゃ…………」