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ヴォイドの呼び声Ⅰ虚無の跫音  作者: 逆立ちハムスター


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26

──羊皮紙。

この手紙が無事届く事をヴォイドに祈って書いた。まあ特別信仰しているわけじゃないが。祈って損はないだろう?


本題だ。

配達人からこの手紙と大きな羊皮紙を各々受け取ったはずだ。

大きな羊皮紙は街の地下、取り柄アンダーグラウンドの地図だ。知ってるとは思うが、街の地下だけでなく周囲の森にまで繋がっている。全体像はあまりに大き過ぎる。断片的だが、他の区域の地図が欲しい場合はまた声を掛けてくれ。


その地図の見方だが、右下の◯が侵入口になる。

もう1つが安全な街への入口だ。

侵入口は左上に街の簡素な地図と下水への入り口を書いておいた。

アンダーグラウンドはこの都市が建てられた当初は使われていたが、今は忘れられ、使われていない場所だ。魔物には十分気を付けてくれ。まああんたなら心配ないだろうが。


×印は不安定な通路を示した。

ドクロは崩落した通路だ。

△は魔物が多く巣くっていると思われる箇所になる。

☆印だが、そこは昔、ブラックハンドが使っていた拠点と思われる場所だ。

詳しくは知らないが、あんたなら気になると思ってな。

以前、そこへ部下を送り、内部に入ろうとした事があったんだが、どうしても扉の開け方が分からず中には入れなかった。

リッヂのあんたなら何か知ってるかもしれないしな。

中に入れたら何があったか酒を飲みながらでも教えてくれ。

健闘を祈ってるよ。


モーク

──

「使える奴だ」

「ガル」


もう日が沈みそうだな。実に短いな。

有限の時の感覚が、少し残っている気がする。


「もう洞窟に戻れ。他の者と少し待っていろ。合図を送ったら、すぐに俺の元へ皆を連れてこい」

「ガル」

「向かう際は隠密だ。注意しろよ。近くまで来たら、同様にこの顔のにおいを辿れ「よし、もう行け」

モートが森の中へ消えていく。


一旦街に戻るか。

ノームの兄弟がいた街の城壁の潜り路へ戻る。


下りた鉄柵扉を叩く。

「おう、あんたか。待ってろ。いま開けてやる」

ノームの兄がレバーを引き、鉄柵扉が上へスライドする。

通り抜けるとすぐにレバーを戻し、鉄柵扉が下りる。

ノームの兄がこちらの方へ来る

「で、どうだった? 収穫があったのか?」

「関係していそうな集団を見つけた」

「おぉ。マジかよ。どれぐらいいたんだ?」

「それなりにいた。半端な兵力では手出ししない方が良いだろう」

「不安だな」

「この城壁とこの兵力、街は大丈夫だろう」

「一先ずは安心ってことか」

「また兵を送るのか?」

「詳しくは知らんが、まあそうだろうな。だがここの総督は問題に極端に無関心で困る」

愚痴をこぼし腕を組むノーム。

「それほどなのか?」

「俺がこの扉を開けたまま昼寝するぐらいさ」

「そいつは相当だな」

「前の総督の時は、そりゃあ良い街だったさ。今みたいに問題ばかり起きやしなかったしな」

「烙印以外にも問題があるのか?」

「そりゃもう山積みさ。この烙印に」拳を握り人差し指から立て数え始めるノーム「連続殺人だろ。吸血鬼が街に潜んでいるという噂に、子供の誘拐。それから…」

「まだあるのか?」

「ああ、だから言ったろ。山積みだって。あんたも気を付けな。この街は見た目以上に芯まで腐ってるからな」

「お前はこの街を出て行こうと思わないのか?」

「そりゃ出て行きたいさ。だが金が貯まるまで我慢してんだ」

「もうすぐこの街は良くなるさ」

「だといいな。まあ誰でも希望は抱くものさ」

「聞きたいんだが、ロブスター亭とやらを知っているか?」

「当たり前だろ。有名さ。この街の住人なら誰でも知ってる」腕を組んだまま片手を組み外し、手の平を広げるノーム。


ノームにロブスター亭の場所を教えてもらった。


「助かった。お前も気を付けろよ」

「ああ、じゃあな」

ノームは鉄柵扉側の壁へもたれかかり、腕を組んで目を瞑った。

その場を離れ、マーラのいるロブスター亭を目指す。


中心街から離れたこの場所は、この時間帯故に人影がまばらになってきているようだった。

道の端にテーブルが並べられ、青色の天幕の張られた露天が目に入る。

「毎度あり〜!」人間に叫んでいた少年が近付いてくる「ね、ねぇそこの旅人さん。僕の店をちょっと見てってよ!」

青いローブを着た人間の少年。ケリーと同年程だ。だが妙だ。

笑顔で手招きをし、天幕の方へ後ろ向きに歩き向かっていく。

「悪いが忙しい」

立ち去ろうとすると、少年が目の前まで駆けてきた

「アンデッドは時間をあまり気にしないでしょ?」

「何故そう思う?」

「あんたから死人のにおいがするからさ。特にその顔からね」

俺の顔を指差し、皮肉めいた笑顔を浮かべる少年。

「アンデッドを目の前にしても動じないとは大した度胸だ」

「へっへっ、あんがと」

人差し指で鼻を横にかく少年。

「それで商品はなんだ少年」

「おいらの名はルイン。言うまでもないけど、この店の店主さ」親指で自分の顔を指差すルイン「最高にイカす魔道具の数々と、将来価値の上がる美術品さ。さあ手にとって是非! 見てってよ」腰に手を当て、胸を張る少年。

手書きのパネルを読む。

モルスの描いた絵画か。

古びた小さな壺を手に取る。

「これは?」

「あ~あ! 流石だ! 非常にお目が高い! それは古代の邪悪で恐ろしい悪霊を封じ込めた壺さ。それさえあればどんなに強い霊が襲ってこようとも、たった一撃で封じ込めてしまう素晴らしい代物さ」

壺をテーブルに戻し首飾りを手に取る。

「あっあ~! 気付いてしまったようだね~。それは古代の偉大な魔術師リーケンが残した凄まじい魔力を秘めた首飾りさ。それさえあれば街を1つ消し去ることなんて容易い程の魔法が放てるようになるんだ。扱い方には工夫が必要だけど、買うなら今だけ特別に教えてあげても良い」

首飾りを戻し短剣を手に取る。

「おっと、おっと! おっと~!! それは危険だ~! どんな悪魔も一撃で葬ってしまう程の威力がある恐ろしい短剣さ~」

「いくらだ?」

「そうだな~。20金貨ってところかな?」

「性能のわりに、安すぎはしないか?」

「お客さんお金持ちだね~。でも金額に間違いはないよ。買うかい?」

短剣をテーブルに戻す。

「いいや、鍛冶屋のゴミ箱を漁った方がマシだ」

「あ~! 分かるよ、分かる。自分がこれから偉大な英雄になるのが怖いんだろ? でも大丈夫。この装備があれば必ずあんたの旅で助けになってくれるって」

「カモを探しているのなら他を当たれ」

「チッ! つまんね~の。 わぁったよ。冷やかしが済んだならさっさとどっかへ行ってくれ。商売の邪魔だ」

「それなりに楽しませてもらった。良い店だった」

「くたばれ」

ルインの店を後にする。


ルインは別のカモの男を誘い、短剣を売りつけようとしていた。

やはり何か引っかかるな。


再びロブスター亭へ向かう。

カモの男はルインに金貨を手渡し、短剣を受け取っていた。


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