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第1話 海の中は巨大なダンジョン

 食糧の備蓄は完璧、潜水系スキルにも慣れた。

 準備を終えた私たちは、本格的に海の中へと潜っていく。


 ちなみに、万が一にも水が家の中に入ってきたときに備え、私たちは水着に着替えておいた。

 ルリとまおーちゃんも水着を持参していたので、それに着替えてもらう。


 まおーちゃんと一緒にゲームで遊ぶルリは、紐が多い大胆な水着姿。

 スラリとした体型とふくよかな胸にビキニをかぶせただけの格好に、ミィアとスミカさんは驚いていた。


「おお〜! ルリ、スタイルいい〜!」


「一気に大人っぽくなったわね! セクシーなルリちゃん、さらに美人さんだわ!」


 テンション高めの2人。

 対照的に、ルフナは腰に手を当てクールな表情をした。


「ルリも胸が大きかったんだなぁ。その胸だと、肩こりとか、体を動かすときに邪魔だとか、いろいろ不便もあるだろ」


「……たくさん、ある……でも、一番困る、のは、ちっぱい系キャラのコスプレが、できないこと……」


「胸が大きいのも、いいことばかりじゃないよなぁ」


 小さな水着に大きな胸を持つ2人の会話。

 細身のルリと、ちょっとだけ筋肉質のルフナという、違うスタイルの良さを持つ2人が並ぶ光景。

 美しかっこいい2人を前に、シェフィーと私は呆然としていた。 


「どうしましょう、海の中という別世界で、別世界な会話が繰り広げられています!」


「あれは決して私たちが踏み込めない世界。だからこそ、きちんと眺めないと」


 別世界の光景は、きちんとこの目に焼き付けないとね。


 さて、まおーちゃんは水着が恥ずかしいのか、テーブルの下に隠れちゃっていた。

 なんだかネコみたいでかわいい。

 そんなまおーちゃんを引っ張り出したのは、ルリとミィアだ。


「……大丈夫、まおーちゃん、かわいい……」


「みんなの前においでよ〜! みんな、まおーちゃんのこと褒めてくれるよ〜!」


 2人に誘われて、まおーちゃんはテーブルの下から出てきてくれた。

 まおーちゃんは黒色のスク水っぽい水着を着ていて、背中には飾りか本物か、ちっちゃな黒い翼が生えている。

 シェフィーとスミカさんは心奪われたらしい。


「はわわわ! これもまた別世界です! かわいすぎです!」


「フフフ、思わずムギュってしたくなっちゃうくらい、かわいいわね」


「まおーちゃん! ムギュってしますよ! ムギュ!」


 ビキニにパーカーを羽織ったスミカさんには頭を撫でられ、花柄ワンピースの水着を着たシェフィーにはムギュっとされるまおーちゃん。

 そんな光景を見て、私は限界に達した。


「ど、どうしよう……お人形さんなシェフィーが、お人形さんなまおーちゃんをムギュってしてる……あっちではルフナとルリが並んでるし……尊い……」


 かわいすぎる光景と美しかっこい光景が同時に目に入り込んでくる。

 どうしよう、意識が遠のいてきた。


 私はもう、ぶっ倒れる直前。

 ミードンがいたら確実に意識を失っていたところだよ。


 なんとか私が持ち堪えていれば、みんなが忘れかけていた大事なことをルフナが口にした。


「それでルリ、イの勇者がどこにいるか、あたりはついてるのか?」


 急に真面目な質問をしたルフナに、ルリは自分のバッグからメモ帳を取り出し答えた。


「……これ、イショーちゃんが残してくれた、メモ……ここに、イショーちゃんが向かった場所への、ルートが、書かれてる……」


「見せて見せて〜!」


 文房具屋で買ったようなメモ帳を、ミィアは興味津々に覗き込む。

 私もチラリとメモ帳を見てみると、そこには詳細な地図とイラスト、そしてびっしり書き込まれた文字が。


 手書きとは思えない市販の海図レベルの地図には、太い矢印が引かれている。

 矢印の先には、神殿ぽいイラストと大きなバツ印が書かれていた。


「これ、宝の地図みた〜い!」


「スミカさん、このメモを頼りにイショーさんの居場所、見つけられる?」


「この矢印に沿ってバツ印のある場所に行けばいいのよね。それなら見つけられると思うわ!」


 自信満々に笑ったスミカさん。


 ということで、海に潜った自宅は海底へと向かった。

 光が届かないくらいに深く潜っても、スキルのおかげで周囲の景色は見えている。

 仮に目に見えない何かがあっても、万能ソナーがあれば問題なしだ。


 しばらくして、まるで潜水艦のように海の中を進む自宅の前に、大きな岩が現れた。


「あ! メモにあるイラストと似たような岩がありました!」


「ワンちゃんみたいな形の岩だ〜!」


 その特徴的な岩こそが、イショーさんを見つける手がかりだ。

 ワンちゃん岩からは崖が続き、自宅は崖の縁を進み続ける。


 メモ上の矢印に沿うこと数分後。

 進行方向を指さしたルフナが言った。


「見ろ、巨大なアーチがあるぞ」


「あそこをくぐるのね」


「おお〜! お城の門より大きい〜!」


 自宅の何倍も大きなアーチをくぐって、私たちはさらなる海底へ。

 地上にはない不思議な光景を見るのが楽しくて、私たちは窓のそばから離れられない。

 そんな私たちの目前を、個性豊かな魚たちがすれ違った。


「お魚の群れだ〜! みんな透明だよ〜!」


「ホントです。はじめて見るようなお魚がたくさんいますね。お魚さんたち、どこに向かっているのでしょう?」


「驚いたな。シェフィーが魚を見ても部屋の隅っこで丸くならないなんて」


「あ! 言われてみればそうです! お魚、もう慣れちゃいましたね。どうしてあんなにお魚が怖かったのか、もう分からないくらいです」


「これでシェフィーもお魚とお友達になれるね!」


 あれだけ怖がっていた魚と友達になるシェフィー。

 想像するだけで微笑ましいね。


 にしても、さっきから私の心はワクワクしたままだ。

 外を眺めながら、私は思わずつぶやく。 


「海の中って、ワクワクするようなものばっかりだね。まるで——」


「……まるで、ダンジョン、みたい……」


 まったく同じことをルリも思っていたらしい。


 そう、海の中はまるでダンジョン。

 ずっとゲームの世界に入り込んだみたいで、ワクワクしないはずがないんだ。


 ワクワクしたまま海底を進むことさらに数十分後。


 唐突に、何かに押されたように自宅が反対方向に動き出した。

 数百メートルは反対方向に押し戻された自宅は、海底に腰を下ろす。

 スミカさんは困り顔。


「まいったわね。潮の流れが強すぎて、この先に進めそうにないわ」


「え? 地図ではこの先がバツ印みたいだけど?」


「そうなのよね。でも、進めないんじゃどうしようもないわ……」


「この先の進み方について、メモには記述がありませんね」


「……イショーちゃんが集めた、情報、まだ足りない、のかも……」


 メモ帳を眺めて、ルリも困ったような表情をしている。

 一方、ルフナは腰に手を当て、頼れるナイトさん風に口を開いた。


「少し辺りを探ってみよう。何かヒントになるものがあるかもしれない」


「うんうん! ルフナの言う通りだよ!」


「はぁあああ! ミィアに褒められたぞ! 生涯の思い出がまたひとつ増えたぞ!」


 頼れるナイトさんはどこへやら。

 水着姿で悶えるルフナは、まおーちゃんに見せていいのかちょっと悩むよ。


 ともかく、私たちは窓に張り付き、辺りを探ってみるのだった。

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