ゴッズの苦悩
サン・ガルディア王国の徴税官、ゴッズ
冷酷な男で、スカンピア村から強制的な徴税を行った
だが、彼は本当に冷酷な人間だろうか?
仕事中に私情を挟まないだけで、本当はもっと違う人間性をしているのでは?
これは、酒屋でゴッズが部下の兵士に愚痴る物語である
(ちなみに120%妄想です)
「辞めてやらぁ!!こんな仕事、辞めてやらぁ!!」
王都から離れた酒屋、大きな声が響く
誰かと思えば、ゴッズだ
ゴッズの周りには、いつもの兵士たちがいるが、泣きわめくゴッズの背中をさすっている
「お、落ち着いてください。ゴッズさん」
「畜生…あの間抜け第九王子め……
鉱山奴隷行きをちらつかしやがって
なんだよなんだよ!一番圧力をかけるのに適しているって!
俺は圧力鍋じゃねんだぞ!!」
ゴッズはこの酒屋の常連である
もはやこの情景は、この時間帯の日常風景である
店員も客も、誰一人として気にしていない
「もう何回目だろう…
人を脅しつけて物を奪って
怖いよもう、人を人として見れなくなりそうで…!」
兵士たちは、もう人を人として見ていないのでは?と思ったが
心の内にしまい込んだ
「クソ、あのクソボケ王子め、ぜってーぶっ殺してやる!!
あいつの顔面にツルハシをぶっ刺してやる!
鉱山の落とし穴から這い出てきてやる!!
なんだったら化けて出てやる!!」
事実、アルフォンス第九王子が聖女を名乗る怪しい人物を連れてからは
その怪しい人物を妄信する貴族たちにより、権力が増幅している
もうすでに、アルフォンスの手で理不尽に鉱山に送られた人間は両手では数えきれない
「ま、まぁ落ち着いてください。
明日は久々の休みですし、お酒を飲んで忘れましょうよ」
「休み……リゾート……スカンピア……
ああああああ!!!俺の馬鹿!!!」
兵士は完全に話題を間違えたと思った
直後に度数の高い酒を注文した
「最近噂に聞くんだよ
あの村、急速に発展していて温泉が気持ちいって
どうしてあんな酷いことしてしまったんだ!!」
これは絶対長くなるなと思い
兵士たちはさらにおつまみを注文した
「住民の声は聞こえてたんだよ
でも、鉱山奴隷のことを考えると、どうしても引き上げ命令を出せなかったんだ!
本当に俺は馬鹿だ!どうしてあんな非人道的なことをしたんだ!」
兵士は注文したおつまみを食べながら
仕事中の時とこの時のゴッズは人が違いすぎると思っていた
もはやゴッズの話はあまり聞いていない
「絶対行けねぇ……行ったところで
追い返されるのがオチだ……
クソォォォ!!もう飲みまくってやる!!」
数日後にも影響が起こりそうなレベルで
ゴッズは酒を飲みだした
兵士たちは、介護がとても大変になりそうだ、と思いながら酒を飲んでいた
数日経った深夜、王都を発つ馬車があった
大きな馬車にはゴッズと、3人の兵士がいた
「本当によかったんですか?」
「……あぁ、俺はこれ以上、悪魔になりたくない
いや、普通の人間に戻りたい」
カーキ色のコートも、軍帽みたいな帽子もつけていないゴッズは
あてもなく、ただ馬を走らせている
「気づいたんだ
俺はスカンピア村で強盗をしていた時
喜びを感じてしまっていた」
3人の兵士は、返事を返すわけでもなく
ただ厳かに聞いているだけだ
「はは、皮肉だよな
嫌々やっていた仕事が、それに喜ぶを見出すなんてな」
馬車にぶら下げられた、劣悪品のランタンが照らす
もう王都は見えない、どこに向かっているかはわからない
「もうあの王子の元で働くのはいやだ
だけど、恥を忘れてスカンピア村に行くのも無理がある
ならば夜逃げだ」
……この判断はあっていたのか
ゴッズは氾濫に巻き込まれることはなかった
だが、ゴッズたちの姿を見たものは、もう王都にはいない
どこにいるかは、わからない




