リリア・クレイとの邂逅
サン・ガルディア王国の第九王子のアルフォンス
自己中心的で傲慢な人間であり、一方的に婚約者をフッて置きながら反省のひとかけらもない
だが、最初からそこまで落ちぶれているのだろうか?
ただでさえ狭い視野を、さらに狭くさせた何かがあっただろうか?
これは、アルフォンスが男爵令嬢リリア・クレイと出会う話である
(ちなみに120%妄想です)
退屈な宮廷教師の退屈な授業が終わり、俺は3階の廊下で黄昏ていた
窓からは星霜の結界の幻想的な光が差し込んでいた
壁に寄りかかり、国王の肖像画を眺める
いつかは、あそこに俺の肖像画が飾られるんだ
それも、こんなしょぼくれた古臭いものではなく
本物の画家の手で書かれた、この世で唯一の尊い肖像画だ
「あんな低レベルの授業、俺には必要ないんだよ」
俺は、第九王子とかいう程度の低い階級で胡坐をかいてばかりではない
国王になって、ゼジリアよりいい女と結婚して
そしてこの国をより素晴らしいものにする
「……俺でも、やっぱ孤独というのは苦しいな」
国王…父上は、兄上や自分のことばかりだ
兄上も兄上だ、あいつらに話しかけられるときは毎回雑用を押し付けられる
ゼジリアは論外だ!あいつの顔を見るたび、自分の階級の低さを突き付けられる気分だ!
それにドジが酷く、何度火傷を負ったか!何度足を踏みつけられたか!
宮廷教師も、従者も馬鹿ばかりで、一切話が通じない!
国王になれば、この孤独も解消される……はずだ
「…最近こんなこと考えてばかりだな
今の不満じゃなくて、未来の希望だろ!俺!」
絶対になって見せる、国王に
いや、絶対なる、絶対だ
だけど、やはりそばにいて安心する人が欲しい
…あんな奴をあてがわれた位なんだ、もしや…
「…いや、天才が故の孤立だ、嫌われる勇気だ」
俺はここから逆転劇を見せつけるんだ
俺をなめた兄上に、俺を無視した国王に
何より、俺のプライドを幾度も傷付けたあの女に
気分を落ち着ける時、俺はいつものスポットに行く
今日もそこに行こう
テミス貴族女学園の噴水
この学園はいくつもの名家の女が在籍している学園だ
そしてこの噴水は、学園の発展と共に何度も改装された巨大噴水だ
一日に何百キロの水が噴き出ている
俺の思う最強の権力の示し方は噴水だ
いずれ、俺が国王になったらすぐにこれを超える噴水を作ってやる
周りを見てみると、なぜだか周りがざわついている
俺のカッコよさに周りは黙っちゃいないのだろう
ハッハッハ、やはり俺は、国王にふさわしい人間なのだろうな!
「あの、すみません、ここ学園の敷地内ですが…」
「だからなんだと言うのか、俺は第九王子にして次期国王
アルフォンス・サン・ガルディアだぞ!」
「いえ、あの、生徒が不安がっていますので……」
「あぁ!?だからなんだよ、俺は次期国王だって言ってるだろ!」
「先生ぇ~、どうかされましたぁ?」
突然、甘い声が耳に入った
声がした方を見ると、天使、いや、もはや普通の天使ではない
聖なる癒天使猫姫、と言うべきだろう
もはや言葉では言い表せないくらい美しい彼女がそこにいた
「あぁ、リリア・クレイさん
今不審者の対応をしているのですが、話を聞いてくれなくて
自分のことを次期国王などと言っていて、かなり危険と思われるので、離れた方が…」
「そ、そうだ、俺はこの女に用があったんだ
話があるから、こいつを借りるぞ、いいな!?」
「いえ、ですから…」
「…そうでした、私、この人と話したいことがあったんですぅ
ねぇ、先生ぇ?」
俺を追い出そうとした不敬な教師は、彼女の言葉を聞き顔を赤らめる
分かりやすいんだよ、お前
「……えぇ、わかりました、問題のないように」
俺の咄嗟の嘘にまんまと騙されやがって
俺はやはり、国王になるべきなんだな!
「それじゃあ、話をするか」
「はぁい!」
俺たちは噴水の淵に腰掛け、話を始める
「まずは自己紹介からだな
俺は次期国王のアルフォンス・サン・ガルディアだ!」
「わぁ~、かっこいいですわ~」
「ハッハッハ!そうだろうそうだろう
それで君は確か…リリアだったか?」
「そうです!」
そうして、なんだかんだ会話は弾んだ
兄上や国王からは酷い扱いを受けていること
自分の立場に納得がいっていないこと
そして、ゼジリアなんかが婚約者になっていること
それら全部は会話の自然な流れで話した
「それで最悪なもんだ!毎日最低2回は熱々の紅茶をぶちまけられる!
酷い時には6回はやらかすし、時に顔にもかけられる!」
「酷い話ですわぁ~、実は私も…」
「え!?リリアもか!?」
「そうなんですぅ、実は教科書を隠されたり、水をかけられたり…」
「なんてひどい奴なんだ!あいつは!
絶対婚約なんか破棄してやる!」
「その時は、代わりに私と婚約してくれたら、なんて」
「それ、ありかもな
リリアと結婚できたらなー」
「何か、出来なさそうな理由でもあるんですか?」
「実はゼジリアって、聖女なんだ
だからか婚約されられたらしくてな
多分勝手に破棄したら国王がうるさい」
そういうと、リリアは少し考え込むしぐさをした
なんだろうかと思っていたら、意外なことを聞かされた
「私、聖女かもしれないんです」
…は?
それって、もしリリアと婚約を約束できれば
ゼジリアとの婚約を破棄できる…?
いや、待った
あの愚かな宮廷教師も言っていたではないか
話を鵜呑みにしていいのは鳥だけだって
一応、確かめておこう
「そうか、なら確かめさせてもいいか?」
「あぁ、えっと……
いいですよぉ」
俺はリリアの手に触れ、簡易的な魔力検査をする
魔力を流し込んでもらって、その魔力を感じる検査だ
感覚的なものだが、強弱をある程度は計れる
そして魔力を調べてみたが…聖女として申し分ない魔力だった
だが…違和感が強い
人間同士であれば、魔力は似通っている
そのため、違和感を感じることはほとんどない
この魔力の違和感の強さ…まさか
リリアは、人間ではないということ…なのか…?
「どうされたんですかぁ?」
考え込んでいるうちにリリアに話しかけられ、顔を見た
いや、見てしまった
彼女の顔を見ていると…なぜだか考えるのが億劫に感じてしまう
なぜなんだ…? いや、それも面倒だ…
「私、聖女ですよね?」
「…あ、あぁ、そうだな」
なぜだか、身の危険を感じる
俺は、今すぐにでもその場を立ち去ろうとした
「すまない、時間がもうない」
「そうですか、では、ここで待っていますね」
夕日が赤く差し込み、リリアを照らす
だが、彼女の笑顔には、何かどす黒いものを隠している気がする
胸騒ぎが収まらない、どうするべきか…
宮廷に帰っても、リリアの顔が頭から離れない
既に使用人に2回もぶつかってしまうほど上の空だ
接していて大丈夫な人間か?
それを、明日確かめに行こう
会って、何もなければ大丈夫だ
大丈夫だ、きっと………




