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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
最終章「闘神の顕現と究極の依り代」

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あいかわらずなボクら


────── 2年後 ──────


帝国と共和国の国境にあるアウフラーゲン山の開発は順調に進み、多くの移住したドワーフたちの手による都市開発も並行して行われ、都市としての機能も整ってきた。


帝国ー共和国間の鉄路敷設は第一段階が計画通りに完了し、さらに延伸した鉄路は間もなく同盟国まで届こうとしていた。同盟国まで鉄路が接続すれば、同盟国の飛び地と成るアウフラーゲン山への人の往来も物資の輸送もさらに捗る事と成る。


当初の目的の国家間の貿易も予想以上の収支となり、輸出品目も増えて線路の複線化も検討されるほどの効果がもたらされた。特に帝国と共和国間では、其の気候差からお互いを避暑地、避寒地として過ごす者や出稼ぎなどでの交流が活発となった。



鉄路で好景気に沸く三国に対し、王都と王政が崩壊した旧王国は戦後の混乱の後、新王家の元にゆっくりと復興が進んでいた。



大禍津神との戦いによって崩壊した王都の再建は断念された。

破損状態があまりに酷く、瓦礫を撤去した後に建屋を再建するのは労力的にも財政的にも厳しかったからだ。


邪神戦後、旧ファルネ村裏の丘に移動した土の巨大結晶の周囲に自然と街が誕生し、徐々に拡張され現在では都市と言って差支えの無い規模までになっていた。

新都市の建築資材に旧王都の瓦礫が使用された為、瓦礫の撤去も粗方進み港湾施設をそのまま生かした港町として再開発も進んでおり、この港町も帝国との貿易の役目を担っている。


新王都の周囲には以前から小麦畑が広がってはいたが、長年の養分不足の為に収穫物は主にライ麦となっていた。それが土の巨大結晶の光が届く事になり徐々に地力が回復しており、現在では特上の品質の小麦が大量に収穫できる土地へと変貌していた。


この地力の回復には「農耕神」の側面もある「飯綱権現」の神体を構成していた物質が拡散、散布された事も大きく関係しており、その影響は王都全域に及んでいた。

余談だが、政樹があちらこちらで関わった土地で育てた農作物が驚異的な成長を見せたのも、白狐の加護ではなく「飯綱権現」の加護に依る部分が大きかったのである。



旧王国のアンネマリー女王から正式に王権を禅譲された、新王国のフィーネことミズキ女王は、当初女王と成る事に消極的だったが、家名再建と家臣団からの熱望により新王国の運営に取り組んでいた。


その際に旧王国内の優秀な人材も積極的に登用されて、国家の運営は非常に円滑に進んでいっている。



────────────────────


新王都の東門の外側に三隻の飛行艇が到着した。


一隻は「セイヴァー・マサキ・イヅナ号」、ツヴェルグ同盟国、エヴァルトラウティ王女自ら率いる近衛騎士、文官の使節団約20人が船から降りる。


一隻は「プリンセス・エヴァルトラウティ号改」アイントラハト共和国、フリードリヒ・ワイズマン首席宰相が行政官一行20人を同行させて新王都の大地に立つ。


もう一隻はサクヤ・イヅナがエヴァルトラウティ王女から貸与された飛行艇「応竜号」を駆り、シンノウ知州時に就任したサクヤが帝国の全権大使として家臣団を率い王都へと到着する。


元々サナダ家が治めるはずだった帝国タズィーム州だったが、当主のミズキが新王国の女王となった為、急遽それまでシンノウ州の知州事だったジョウザン公をタズィーム知州事とし、サクヤにシンノウ州を任せる運びとなった。


サクヤにとってはシンノウ知州事としての初の大仕事である。しかし、全く緊張はしていない、何しろ他国の代表たちも皆友人達だからだ。3人は下船したところで久しぶりに再会を祝し互いに挨拶を交わす。


「サクヤ殿、知州事になって以降忙しそうじゃのう?」

「ええ、流石に一領主と違いましてしなければならない事が山積みですわ。」

知州事としての忙しい日々を送る身としては今回の任務は息抜きになると笑顔のサクヤは、王女の近況を問う。


「殿下に置かれましては発展目まぐるしい領地のアウフラーゲン山のお名前を「イヅナ山」へ変更されたそうで御座いますね?」

「元々帝国からマサキ様へと譲渡された山じゃからのう。帝国と共和国の境であり、同盟国に貸与されている土地として、一番良い名前じゃと思うとる。」


三国の民がこの山を見て政樹の業績を忘れず、彼の無事を祈るようにとの思いが込めてつけられた名前と言う事らしい。


「フリッツ殿が首席宰相を引き受けるとは、一体どういった心境の変化なのじゃ?」

王女の質問にフリッツは傍らの弟ウォルターにちらりと視線を投げた後、


「なんか僕が国を留守にしてる間に、宰相の選挙が他薦でも可能って法律に代えられちゃってて、久々に帰国したらいきなり『首席宰相』になっておりまして・・・。」

おそらく法律を変更した張本人のウォルターは兄と視線を合わせない様になのか、新王都を珍しそうに眺めていた。


「この王都を囲っているのは城壁というより、ちょっとした邸宅の塀みたいな感じですね。防御力はほとんど無さそうですが・・・。」

当初は話を逸らそうとしていたウォルターだったが、王都の規模の割に控えめな壁に本当に興味を持った様だ。ため息混じりにフリッツが説明する。


「この辺りはね、元々マサキが周囲を野生の狼に警備させてるから犯罪者も入って来れないし、住民に至っては全員がマサキとアレックスが戻るまで自分達で街を守るんだって気概を持ってるからね。騎士団すら無用の長物扱いなんだよ?」


もう邪神の存在に怯えなくてもよい新しい世界の象徴とも言えるのがこの街なんだよ。との説明に頻りに頷くウォルターは胸ポケットから取り出した手帳に何やら書き込んでいる。


「そうそう、共和国の発展に役立ちそうなことはしっかりと控えるんだよ?なにしろ首席宰相を引き受ける条件はマサキとアレックスが戻ってきた時点で退任するって事だからね?あとは全部ウォルターに任せるんだからそのつもりでね?」


「・・・なんかとんでもない条件を飲んじゃったなぁ・・・」

どことなく顔色の悪いウォルターがぶつぶつ言っている所に、王国側の役人数名が応対に出向いてきた。その中の二人がにこやかに近づいて来て挨拶を交わす。


「お久しぶりです、皆さん。お変わりありませんか?」

「皆さまお元気そうで何よりですわ。」


出迎えに来たのは現在は新王国で要職に就いているヴァルとアリーシアだった。

新王国の役人、官僚は帝国出身者の騎士団員が多い。それ故、魔法職の人材が極端に少なかった為、旧王国の魔導士達は厚遇されている様だ。


「立ち話も何ですし、陛下の元へ向かいながら近況を報告しますね。」

ヴァルとアリーシアに導かれるままフリッツ達は王都内へと歩を進めた。





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