死なないとわかってても恐怖は感じる
ネルの師匠との勝負に勝って、蔵にある杖をもらう事になった。
蔵の中は意外にちゃんと整頓されているようで、何本もの剣が棚に置かれている。
杖はないかと探すと、端の方に長い杖が1本樽に入れられていた。
小さい杖も何本があったが、大きい方に目が行くのは仕方ないだろう。
それにしても長杖だぞ?管理が雑じゃないか?
見た目は特に何も装飾はなく普通の長い木に見える、特徴といえば先の方がL字に曲がっているだけだ。
早速杖を手に取り鑑定する。
[世界樹の怒り]
自然を軽んじる者は自然に殺される。
持続時間4分
1、MP200
2、MP400
3、MP800
4、MP1600
5、MP3200
今までと表記がだいぶ違う、やはり長杖は異質な物らしい。
MPの左にある数字は何だろうか、増えるごとにMPも倍に増えているし、嫌な予感しかしない。
まぁ、これにするんだけど。
「アキ、いいの見つかった?」
「ああ、これにするよ。 どんなのかは師匠さんに聞けば分かるかな?」
蔵を出て師匠さんの元へ、戻ってきた。
「それを選んだか…でも…うーん…」
そりゃ、そうだろう。
魔宝具店で売っていた長杖は、最低でも金貨200枚からだった、ただであげるのはさぞ悩む事だろう。
「いいだろう。 アキ、もう一度戦ってくれ。 次はその杖を使ってだ」
どういった杖か聞くと、木を自在に操る事ができるそうだ。
横の数字は本数だったか。
一本で試してみると、俺の目の前から太さ50cmはある木がニョキニョキと生えて来る。
地面には何にも影響がない事から召喚しているのだろう。
操ってみると、先の尖った木が思った通りに動いてくれる。
射程は10mはあるだろうか、効果時間が終わると木は徐々に薄くなって、何事もなかったように消えた。
「私が戦った時は3本の木が私に迫ってきて、それを私はバッサバッサと切り刻み、最高に楽しい試合だったのを覚えている!」
この人あげる事に悩んでいたんじゃなくて、もう一度戦いたいとか、そんな理由で悩んでたな。
「さっき戦ったばかりたからな、今からは無理だろう。 今日は泊まって行くといい! ユジャくーん。 2人追加だ!」
師匠さんが家の中に叫ぶと、大人しそうな男の人がエプロン姿で出てきた。
「師匠の旦那さん。 師匠と同じくらい強い」
ネルが隣でそう教えてくれた。
マジか、こんな大人しそうな人が師匠さんと同じくらい強いのか。
「君がアキくんだね、僕と同じ匂いがする子だね、マキネさんに勝負でも吹っかけられなかったかい?」
「大丈夫、師匠、手も足も出なかった」
「ほう、それはすごい。 僕も手合わせしてもらっていいかな?」
「遠慮しときます。 卑怯な手を使ったんで、勝ちと誇っていいものか」
「いやいや、君は見た目的に魔法使いだろ?卑怯な手を使ってなんぼさ」
なんか、久しぶりにまともな人と出会った気がする。
「アキ、師匠と戦ってくる」
ネルは縁側をぴょんと降りて、生徒と試合をしていた師匠の元へ走っていった。
「アキくん、苦手な物はあるかい? 出来るだけ入れない事はできるけど」
多分昼食の事だろう。
「ないです。 そうだ、これ使ってください」
アイテムボックスから灰色熊の肉を出して、ユジャさんにあげる。
「いいのかい? ありがたく使わせてもらうよ」
みんなで昼食を食べた後、少し休憩したところで師匠さんが早速始めようと言い出し、俺の腕を引っ張って庭に連れ出された。
MPってこんなに早く回復するものだろうか?
まあ、いいか。
師匠さんの武器がさっきまで使っていた物と変わっていた、刀のような薄い刃物になっている。
あれが本来の愛刀だろう。
「じゃあ、行きますねー!」
合図を送って、まずは3本の木を正面と左右に退路を断つように伸ばした。
上か下、どう避けるかで残り2本の木を召喚せずに待機させる。
「は?」
衝撃的な現象に声が漏れる。
正面から襲いに行った木が半分に割れた。 そして、その割れ目の間を一直線に走ってくる。
俺は慌てて左右に伸ばしていた木をハサミのように閉じると、師匠さんはその木の上に乗った、それを好機とみて、師匠さんを空に打ち上げる。
空中なら避けれないし、切る力も入らないと思い、待機させていた2本の木も使い、五方向から一気に攻撃をするが、師匠さんは刀から片手を放し、その手で木を掴み逆立ちするようしにて回避し、木をバラバラにする。
「ハハハハハ!!楽しいな!アキ!まだ出てくるとは思わなかったぞ!」
怖い怖い怖い!化け物かよ!体感どうなってんだ!
師匠が地面に着地すると、一つの足跡を地面に残してその場から消えていた。
これはこの前訓練所でネルにやられた技! 身長的に下はないから上か後!
そう思い後ろから木を召喚して、頭上を護るように俺を囲う。
しかし、すでに遅かったようで後ろから抱きつくように捕まり、首に刃物の裏を押し付けられていた。
「前の魔法使いより楽しかったぞ!満足した!」
俺は死んだかと思った!
弟子たちが歓喜の声を上げるが、俺の心臓はバックバクだ。
「アキ、私もあれと戦いたい」
ネルが近づいてきて戯言を言いよる。
「もうしません!!!!」
山の頂上だったからか、全力で否定する叫びはやまびこになって反響した。




