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第十八話 俺が戦う理由は俺が知ってる、わるいがな!

魔族が語るこの世の理とは、

 下の戦況は気になるし、タストクリスが逃げ延びてしまっただろうことも気になるが、こいつを放っていくのも心配だ。なんと言ったっけ、俺と話しにきたってか? なんの話だろう。

「なんの話だ?」

訊いてみた。

「あなたのスキルについてのお話ですよ」

「俺の力がどうしたっていうんだ」

「あなたの力? いえいえ、神が与えたスキルの力です」

それで言うなら、このオリアルトの身体だって、元々は俺のものじゃなく転生でもらったものだ。俺の力は皆無ってことになる。

「その力、なんのためにあるとお考えですか?」

「魔族に虐げられた人々を救うため、だ」

「ほぉう」

ギャラガンは大げさに感心してみせた。

「魔族に虐げられた人々・・・・・・、なんで魔族が人を襲うんでしょう?」

アマンダが言っていた話だな。

「暖かくて豊かな土地に住むために侵略してる、と言いたいのか?」

ギャラガンは、今度は大げさに驚いてみせた。

「ほぉ、ご存じで。魔族は北の冷えて痩せた土地に閉じ込められている。だから南下しようとする。もう、これは定めです」

「正当化したいのか? 魔族が正義でも語りたいのか?」

おかしな話だ。

「いえいえ、この世界の理です。では、その構図を作ったのは誰でしょう」

「?」

「あなた、ひょっとして、魔族を作ったのはあなたがた人間が信仰する神と敵対する邪神かなにかだと思ってません?」

「違うのか?」

 下で大きな叫びと雄たけびが上がる。こいつがやってることは、おそらく時間稼ぎだ。俺を戦いに参加させまいとして。

「どちらも同じ神です。もちろん、われわれは、その創造主をありがたがったり信仰してりしていませんがね。抗い呪っているわけです」

「なんだと?」

神がわざわざ魔族を作って、人と敵対させているっていうのか。

「人や魔族は、食物を食べて生きています。他者の命を奪って、糧にしている。それは人も魔族も同じです」

まあ、植物を食べるのも植物にも命があるってことなんだから、間違っちゃいない。

「神は、どうしてると思いますか?」

「?」

ギャラガンは、思いっきり怖そうな表情をしてみせた。

「信仰心ですよ。人々の信仰心が、神の糧なんです」

信仰する者が多く、信仰心が強ければ、神のパワーが漲るっていうのは、納得できる話だ。

「神は、信仰心を煽るために魔族を作り、人間の敵にしたてた。魔族に襲われた人々は、神にすがる。平穏無事で平和な生活からは強い信仰心は生まれないですからね。

「魔族に力を与えたのも神なのに、おかしな話ですよね。そうして、神の力を見せるシンボルとなっているのがあなたがた聖騎士なのです。

「神から授かったというスキルを駆使して、魔族を打ち破る。その姿を見、話しを伝え聞いた者はあなたを称え、神に感謝する。そうすると神は潤う」

「敵を作り、ピンチを作っておいて、聖騎士を送り込み、救ってみせる。究極の出来レースですよ。あなたもわたしも、その駒でしかない。

「今回もそうです。神は我々にスキルを持つものを与え、人のピンチを作った。そして、あなたを登場させ、活躍させた」

「違うぞ! 俺がこの国に来て聖騎士になろうとしたのは、俺の意思だ! 神のお告げとかで来たわけじゃない!」

「あなたがこの国で聖騎士を目指すように、そそのかした人がいるのでしょう? 神はその人物に使命を与えたのですよ。七つ星のオリアルトを聖騎士に仕立てろ、と」

ヴォルトックのことか? たしかに俺に聖騎士にならないかと言ったのは彼だ。そもそも俺と入れ違いに死んでしまった本物のオリアルトと俺は別人だというのに、従者を続けているのだって不思議だった。司祭長がそうしろと言ったからだということだったが、そういえば司祭長もスキルを使って人の役にたつように、と俺に言っていた。司祭長は神に仕える身で、神の啓示を聞ける身だろうし、オリアルトを生き返らせようとして俺をこの世界に呼び込んだのも彼だ。ギャラガンが言ってるのはあの二人のことか?

「だとしたら、どうだというんだ。神の思い通りになりたくないから、俺たちが負けろって言うのか?」

俺は怒りをぶつけたが、手ごたえはなく、やつは笑みを浮かべた。

「いいえ。まさか。わたしは和睦を提案したいのです。神の思いのままに戦いをつづけるのではなく。人と魔族が共存するのです」

本気か?

「本当に和睦を望むなら、俺なんかじゃなく、王と交渉すればいい」

「ええ、でも王への使者は、あなたが切っちゃったでしょう?」

 あの、広間に侵入していた透明化スキルのガウツとかいうやつのことか?

「姿を消して天井に潜む使者など、居るか!」

言いがかりめいた非難に反応して怒りを爆発したら、スキルが発動した。

「ホーリーファイアーバースト」「ガン!」

下では戦いが続いているんだから、ちょうどいい支援になったはずだ。ギャラガンは範囲の内に姿があるのだが燃え上がらない。

「たしかにあなたのおっしゃる通り。では、わたくしが使者として王都に出向きましょう。ですからあなたは、今日わたしと話したことを王都の王たちにお伝えください。魔族が和睦の交渉を望んでいると」

 そこまで言うと、ギャラガンの姿がすーっと下がっていく。羽ばたいてもいないのに、すごい速さで後退していく。まっすぐ飛んでいくように。

「まて!」

 俺の空での移動速度は、結局走る速度でしかない。追いつくはずはなく、やつの姿は見えないほど遠くまで行ってしまった。だが、ギャラガンの声が、さっきまでと同じように聞こえてきた。

「和平提案の証に、今日はこちらの軍を引きましょう。もっとこっちが勝ってる時点で交渉したかったのですが、あなたのせいで押し返されてしまった。あなたが神の意のままに動き回るからです。あなたの責任だから、あなたにはせいぜい働いていただきますよ」

 それが最後の言葉だった。見回してもやつの姿はどこにもない。

 そして、やつの言った通り、下では魔族たちが撤退をはじめていた。


本当に和睦は成るのか? つづきます。

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