認識の違い
1~9部を読みやすいように、会話の間隔を広げました。これからも読みやすいように文字との間隔を広げていくつもりです。
太陽の位置を見るに大体、十時頃、俺はミーナとアルティナに引きずられて元いた小屋に戻ってきた。
「で、これに着替えろと……?」
俺はキャリアスさんに渡された制服へと視線を移し、バサッと広げた。触っていてわかったが、かなり質の良い素材で作られている。なにせ触り心地がいいし。
そして俺は制服に刺繍されている薔薇のデザインを確認して気が付いた。
「……これ、薔薇の色がミーナ達とも違うな……」
俺の持つ制服は、背中に刺繍されている薔薇の色が白色になっている。花言葉は【純潔】、【深い尊敬】とかだったと思う。
「あ、この白色のデザインはEクラスのものですね」
「そうなのか…?」
ミーナに聞いたところ、Eクラスの他にも黄色やピンク、赤など結構な種類があるらしい。Sクラスだけは色が二種類あり、それ以外のクラスは色が一種類だけなのである。
でもまぁ、Sクラスの薔薇のデザイン……片方が虹色になっているせいで、それを一つの種類の色と判断するのはどうなのかと疑問を覚えるが…。
「それじゃあ、ちょっと着替えてくるよ」
「あ、はい。分かりました。では、私たちは外で待ってますから着替え終わったら呼んで下さいね?」
「あいよー」
俺はそう返事をするが、「あ、」と声を漏らして出ていこうとするミーナとアルティナに一言。
「覗くなよ…?」
俺は少し顔をニヤつかせながら言った。
それを聞いたミーナとアルティナが揃ってこけそうになった。
「誰もマナの着替えに興味はないから…」
アルティナがジト眼で呆れたように言った。その隣では、ミーナは顔を真っ赤にして俯いている。
「いやぁ、ミーナは初心だなぁ…」
「だが、そこが良いところでもある」
「全くその通りだな」
「もう!二人ともからかわないで下さい!」
俺がアルティナと一緒にミーナの反応を見て楽しんでいると、ミーナは怒ったように大きな声で叫んだ。本気で怒ってないことは態度を見れば分かるので実に可愛い。
「ほら、アルティナ!もう行きますよ…!」
そう言ってミーナは急ぐようにアルティナを連れて外へ出ていった。誰もいなくなった小屋に静寂が満ちる。
「さてと、着替えるか…」
そう呟くと俺はメニュー画面を表示する。そしてそこから装備欄を開き、パーカーから学院の制服へと装備を変更した。
装備を変更した瞬間、身体の周りが淡く光ったかと思うと瞬時に服装が入れ替わり、着替えが完了した。
学院の制服は小さ過ぎず、大き過ぎずといった感じの絶妙なバランスで身体にフィットする。思っていた通り、かなり着心地が良い。
そしてそこまでやって俺はあることに気が付いた。
(つい、ゲーム感覚で装備変更したけど、この世界でも可能だったのか……)
本当に今更だなと自分自身に少し呆れる。
普通に着替える事も出来るだろうけど、時間が掛かるので、今後は装備変更のやり方で素早く終わらせようと心に決めた。
そして、着替え終わった俺はミーナとアルティナを呼び、小屋の中へと入れた。
「どうだ…?一応、着替えてみたんだが…」
俺は入ってきたミーナとアルティナへと感想を求めてみる。
「はい!とてもお似合いですよ…!」
「まぁ、制服のお陰で少しは男に見えるようになったな…」
ミーナは笑顔で褒め、アルティナは何か失礼な事を言っている。どういう事でしょうね、怒らないからちゃんと先生に言ってみなさい。
なんて馬鹿やってる場合ではない。俺はメニュー画面を開けて装備欄を見てみると、そこにはパーカーから学院の制服に変わっていた。
――――――<装備欄>――――――――
・学院の制服
・なし
・なし
・なし
・なし
―――――――――――――――――――
そういや、制服以外装備してなかったな…。また今度何か装備してみるか…。
俺は学院の制服の性能が気になったので詳細を確認した。
―――――――<詳細>―――――――
《学院の制服》
・魔法耐性UP (中)
・物理耐性UP (中)
・詠唱補助
・魔法攻撃力UP (小)
・物理攻撃力UP (小)
・状態異常耐性UP(小)
・伸縮自動調節
―――――――――――――――――――
結構、魔法が付与されている。攻撃力より防御力の方が効果が高いのは、不慮の事故などで死者を出さないためなのだろう。
制服のサイズがぴったりなのは、伸縮自動調節というのが付与されているからだろうなと俺は納得した。
不意に、この制服一体いくらするんだろうなと考える。そして制服ということはこれが生徒全員が持っている事になり…………そこまで考えたところで俺は驚愕した。
そして今この瞬間、キャリアスさんが相当なお金持ちだということを確信した。
「で、やっぱりこれ着たまま学院長室まで行かなきゃいけないのか?」
「「当然だ(です)」」
「こういう時って君たちほんと息ぴったりだな…」
俺は苦笑しながら言う。何にしても俺にとってはここでの生活が重要になるので、出来る限り言うことはするつもりだ。
「ではマナさん、着替え終わったことですし、早速学院長室に行きましょう…!」
「そうだな…。面倒な事はちゃっちゃと終わらせたいし」
ミーナの提案に同意すると俺たちは学院長室へと向かった。
―――――◇◇◇―――――
もう何度も歩いた廊下を通り、俺たちは学院長室に辿り着いた。
相変わらず大きな扉を見て、俺はコンコンと軽くノックをした。
「どうぞ」
中からすぐに返事がきたので、俺たちは「「「失礼します」」」と言って扉を開けて中へ入った。
「…………何してるんですか、キャリアスさん」
俺は思わず問い掛けた。貴重そうな調度品などが置かれた部屋の中、キャリアスさんの周りにある机や床に書類が散乱しており、この一帯だけ汚い印象を受けた。
更にキャリアスさんは机にうつ伏せになっていてピクリとも動く気配がない。そしてその近くでサラサラと書類仕事をこなしていく眼鏡を掛けた女性が一人いた。その女性がこちらへと視線を向ける。
「学院長は少しお疲れの様ですので……宜しければ私が用件を伺いますが…?」
書類仕事をこなしながらそう声を掛けてきた。そういやこの部屋に入る時、返事をしたのは、この人だったのか…。声が同じなので納得した。
「こんにちは、イリーさん。私達は学院長にここへ来るように言われたので、やって来ました」
「イリーさん…?あー、もしかして学院長の秘書をしているという人だったかな…?」
ミーナが笑顔で挨拶し、俺は思い出したように言った。
「はい。その通りですよ」
俺の質問にイリーさんが肯定した。
この人が、仕事を放り出して逃げたキャリアスさんを追いかけている人なのか…。いかにも秘書って感じの人なのに運動出来るのか。意外だ。そして御愁傷様です。
にしてもキャリアスさんがここにいるということはきっとイリーさんにどこかで捕まったんだろう。俺は自業自得だと思いながらキャリアスさんへと冷たい視線を送った。
「それと、あなた達が来たらこれを渡せと学院長から預かっていました。すぐ中身を確認しても構いませんよ」
そう言うとイリーさんは少し分厚めの封筒を渡してきた。俺はそれを受け取ると疑問に思った事をイリーさんに聞いてみた。
「そういえば用件知ってたなら、なんでさっき聞いたんだ?」
「様式美というものですよ。例え、相手の目的を知っていたとしても手順をちゃんと踏むべきだというのが私の考えなので…」
見た目通りというか、随分と真面目な人だなと思う。どっかの学院長とは大違いだ。
そんな感想を心の中で呟きながら俺は手渡された封筒を開封した。
そして封筒から出てきたものは、編入手続きや身分証明書のようなものなど、色々と入っていた。
もちろん、それらはこの世界の文字で書かれている。では何故、それらの文字を読むことが出来るのか……。それは俺の《特殊スキル》の一つ、【言語理解】の能力があるからだ。
そして、ある一つの違和感に気付く。それを確かめるために俺は声を発した。
「俺は文字が読める」
俺の唐突な発言にミーナ、アルティナ、イリーさんは首を傾げる。ついでにキャリアスさんを見てみるが反応なし。今までと同じようにピクリとも動かない。
「え、えーと、普通ではないのですか…?」
ミーナが俺の発言の意図が分からずに答えた。いや、俺の発言の意図を分かっていないのは他も同じか…。
「そうだな。人間なんだから少し勉強すれば文字くらい誰だって読めるだろう。それに文字は日常生活に必要不可欠だ」
ミーナ達は俺の言葉に耳を傾け、ただ静かに聞いている。その様子を見て俺は少し芝居がかった仕草と口調で続けた。
「さて君たちに問題だ。召喚魔法でこの世界に呼び出された俺は一体、どこからやって来たと思う?」
「…?……《始原郷》ではないのですか…?」
ミーナが当然のように答えた。アルティナとイリーさんもミーナの言う通りだという風にしている。
(ああ、やっぱり認識がズレていたのか…)
《始原郷》とはなんなのか俺には分からないが、ミーナの答えを聞いた俺は納得した。やはり感じた違和感は間違いではなかったと。
だとしたら、ちゃんと訂正しておかなければ後々面倒な事になりかねない。そう考えた俺はミーナ達の認識を改めてもらうために言葉を続けた。
「今ミーナが言った答えは間違いだ。俺は《始原郷》という場所ではなく、もっと別の場所から来た」
「…………………………えっ!?」
「…なんだと……?」
「……………………………………」
俺の発言に対しての反応は様々だった。ミーナは純粋に驚き、アルティナは少し半信半疑といった様子。イリーさんは訝しげな顔をして沈黙している。
そしてキャリアスさんはというと、ほんの一瞬ではあるがピクリと動いたのを俺は見逃さなかった。やはり起きていたのか…。
「それで、別の場所というのはどういったところなのですか……?」
今まで沈黙していたイリーさんが問う。その問いに俺は答えた。
「俺は地球という場所から来たんだ」
「ちきゅう……?」
ミーナ達が不思議そうにする。
「……その反応からするとこの世界では認識されていない場所だな。正真正銘の異世界だ」
そう言うと、自分の出身地を明確にするために、俺は言葉を紡いだ。
「俺の出身地について詳しく知っておいて欲しい。今から話すことは―――――全てが真実だ―――」
いつ投稿するかは未定です。そこまで時間をかけないようにします。




