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ネイビス:第五問
[?]に入る数字を答えよ
[FACDE]=[1???1?1??4]
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「『青い蝶』っていうのは、三、四年前に現れた切り裂き魔に付けられた名前だ。
この街がどうして『リッパーズ・ストリート』なんて呼ばれてるか知ってるだろ?」
「……一応は」
放課後、まだ数人が残る教室の一角で、一つの机を前後で挟むようにリクとミズキが座っている。
話題は脅迫者『Ripper』のサポーターとなった『BlueButterfly』についてだ。
ミズキの問いに、少しだけ言葉を濁しながらリクが答える。
「五年前、この街に一人の切り裂き魔が現れた。
イギリスのシリアルキラーをなぞって『ジャック』なんて呼ばれてたよな。
数人の犠牲者を出して結構大きなニュースにもなったこの事件自体は、一年後にはもう収束していた。
だけどその後、今に至るまでいくつもの切り裂き事件が起きたんだよ。
虐めとか虐待とか、通り魔とか強盗とかね。犯人は何かしら『切り裂く』っていう体で事件を起こすんだよな。
……まぁ、要するにジャックの模倣犯って感じなの、みんな」
ミズキの説明に、リクがかつてニュースで見た映像を思い出す。
「なんだかお偉い先生だかが言ってたよな。
『この街のストレスや悪意が、分かりやすい切り裂き魔という形をとるようになったのだろう。
そして、まるで伝染病みたいに何人もの切り裂き魔を生み出した』、とかなんとかって。
何言ってるのか、この俺の頭脳を以てしても訳が分からんが」
「とりあえずもっともらしい理由を付けたかったんだろ、センセイ方は。
んで、『青い蝶』ってのは、後続して生まれた切り裂き魔のうちの一人で、予想される犠牲者はジャックよりも多いって言われているんだ。
他の切り裂き魔がかわいく見えるほどの、本物のシリアルキラーだぜ」
二人の間には、わら半紙で刷られた課題プリントの裏紙が伏せている。
裏地からはうっすらと一桁の点数が透けて見える。
通常通り残念な結果だったリクの小テストプリントをメモ帳としているようだ。
その紙には、『Ripper』と『BlueButterfly』の文字が書かれていた。
この二人のうちの『BlueButterfly』の方を、シャーペンの後ろでミズキが軽く叩く。
「『青い蝶』って、まだ捕まってないんだっけ?」
リクが問うとミズキが渋い顔をして頷く。
「そう。複数の死人が出てるのに、詳細はまだ何もわかってない。
見つかってないだけで、被害者はもっといるんじゃないかって言われてるんだ。
数少ない生き残りも詳しいことを喋らない、というか喋れないで、結局みんな死んじゃったらしいよ。
なんか色んなドラッグ混ぜたのを飲まされて、その中の一つが記憶障害引き起こすんだって。
化け物に襲われたとか無茶苦茶な証言の中で、唯一複数共通して出てきた証言が「青い蝶に磔にされた」。
だから、その切り裂き魔に付いた名前が『青い蝶』」
「証言が取れないって、もうちょっと頑張って欲しいよなぁ。
職務怠慢じゃねぇの、警察」
「いきなり増殖した切り裂き魔たちに加えて、やくざや暴力団抗争と、数年前は荒れてたからな。
そんな余裕なかったんじゃない?
今は黒狼がいるし、模倣犯の数も減って来たからどうなるか分からないけど」
「でもまた新しい切り裂き魔、出たじゃん。『Ripper』と、俺らを襲った奴ら」
「……病気だな、この街は」
うんざりしたようにミズキが背もたれにもたれかかって伸びをする。
病気、という言葉に、リクは撮影所のスタッフが言っていた言葉を思い出す。
三十年前に新しく形成されたこの街が抱えた問題は、予想以上に大きかった。
多くの人間が流入した結果、学生を含む若者がいくつかのチームに分かれて覇権を争い、その後ろでは彼らの、いわゆるケツ持ちをする暴力団対が覇権を争い、さらにその後ろでは、彼らと多額の資金で密接に繋がった街の権力者が覇権を争う、という目も当てられない醜態だった。
それが発覚したのがつい数年前である。
だが発覚したからといって収束するわけではなく、いくつかの問題は闇に葬られるか、放置されて忘れ去られるのを待っているというのが常だった。
リクの言っていた『お偉いさん』とやらは、このような世代をまたぐ不安定な社会の軋轢こそが、明確で分かりやすい『切り裂き魔』という形になって現れ、そして人から人へと伝染していった。と、この街を評している。
そんな背景を思い浮かべながら、リクは今回の事件に視点を向ける。
「『BlueButterfly』と『Ripper』が繋がったってことはさ、プレイヤーは今後この二人から狙われるってこと?」
「どうだろうな。
『BlueButterfly』が何を考えてるか全く分かんないし、そもそも本物の『青い蝶』じゃない可能性だって強いだろ?」
「そうなのか?」
プリントの裏に、三角を二つ繋いで、間に短い曲線の触覚を加えただけの簡単な蝶々の絵を描き込んでいたリクが目を上げる。
「だって『青い蝶』が現れたのって三年か四年前だぜ?
そんで、『BlueButterfly』がネイビスのプレイヤーだったってことは、多分だけど陽光内の人間だろ?
仮にこの『BlueButterfly』と切り裂き魔の方の『青い蝶』が同一人物だったら、こいつは少なくとも中学生の頃から誰にも見つからずに人を襲ってたってことになるじゃん」
「そっか。
何件も殺人事件を起こして、それでもまだ捕まってないんだもんな。
中学生じゃ無理かぁ。
ということは、この『BlueButterfly』は偽物ってこと?」
リクが言いながら描いた蝶々の頭にクエッションマークを添える。
顔に似合わず、まるで女子みたいなことをするな、とミズキは口には出さずに笑いながら答える。
「断言はできないけど。なんせ正体不明の切り裂き魔だし。
偽物だとしたら、『Ripper』のヤツが捻りも入れずそのままの名前で切り裂き魔、つまり『Ripper』とかって名乗っちゃったから、この『BlueButterfly』もそれに乗っかる形で名乗った、とかも考えられるかなぁ。
とりあえず恐怖心は与えられるだろ?
誰が好き好んで『青い蝶』に立ち向かいたがるんだよ」
「ふーん」
納得したようなしないような声を出すリクによって、蝶々の横に新しい蝶々が描き加えられる。
「『BlueButterfly』の目的はとりあえず置いておいてさ、俺らはどうしたら良いと思う?
『Ripper』は、「もう『BlueButterfly』がいるから一位だし、脅迫しないよー!」
……なんてことにならないかな」
窓から吹き込む風にめくられるプリントを手で抑えながらリクが聞くと、ミズキが首を傾げる。
「さぁ、ならないんじゃないかな。
暫定一位といってもまだゲームは終わっていないんだから、追い上げてくるプレイヤーは脅迫対象だろ。
方針は変えなくていいんじゃないか?」
「そうか。俺を脅迫した奴も『Ripper』を抜かせって突っついてくるかもしれないし」
シャーペンを置いたリクが、机の上にパタンと倒れる。
柔らかい茶色の髪が風になびく様は、どこか大きな犬を思わせる。
「ほら起きろよ。もうすぐランキング更新だぞ」
「んー?」
「ランキングの更新は一時間おきだろ? ほら……お、更新されてるぞ」
携帯の画面を上にしてリクの頭の横に置く。
まるで寝起きのようにもぞもぞと頭だけを動かして、リクがその画面を覗きこむ。
そこには、コードハント:ネイビスの一位から十位までのコードネームが表示されていた。
「あぁやっぱり。一位が『Ripper』になってる」
画面をつつきながらミズキがため息をつく。
以前見たときは、ランキングの一番上に書かれていた名前は『BlueButterfly』だった。
それが今はなくなり、『Ripper』となっている。
『BlueButterfly』の名前がなくなったということは、どうやら彼ないし彼女はゲーム自体降りたらしい。
そうすることで『Ripper』の信用を得たのかな、とミズキが呟く。
「俺は……お、あったぞ。きゅう……っ!」
コードネームの『Luis』を見つけて順位を言おうとしたリクの口を、顔ごとどつくかのようにミズキが塞ぐ。
「だからな……」
「わ、分かってる分かってる。俺が誰かバレちゃいけないんだよな」
「分かっててこれだもんなぁ。
さて、この新しい展開に掲示板の方はどうなってるかな」
半ば心配、半ば呆れた表情でミズキがぼやきながら、端末を操作して掲示板に移動する。
「おぉ、『Ripper』がまた書き込んでる。なになに?」
最も湧いているコメントの投稿者は『Ripper』となっていた。
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【投稿者:Ripper】
[俺を追い抜こうとする奴は容赦しない。お前らはこのまま大人しくしていろ]
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「やっぱり脅迫を辞めるつもりは無いようだな」
『Ripper』の書き込みを見てリクが呟く。
ミズキの言うとおり、『Ripper』は一位になったことで、今度はその地位を守るためにプレイヤーを襲うつもりのようだ。
「みたいだな。他に話題になってるのは……これはサポーター募集かな」
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【第二問サポ急募】
[誰か第二問目サポ頼む!
そこから全然進んでないんだよ。お礼は2000pt。
サポしてくれる人はチャット来て]
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コメントの題名と本文はこれだけだったが、このコメントに対して多くの賛同者がいるようだ。
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[これ分かんないよな。俺もそこで止まってるわ]
[あれって学校外ですよね。あの写真だけじゃ特定出来ない]
[ネイビス鬼畜過ぎ]
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このようなコメントが連なっている。
「第二問かぁ。みんな、そこで止まってるんだ」
「俺はちょうど学校帰りに見つけたからな。あった、これこれ」
ミズキがリクの問いに端末を操作して一枚の画像を見せる。
そこには何の変哲もない電柱が一本だけ映されている。
他には、やはり何の変哲もない民家と、電柱が落とす影が写り込んでいた。
現在のリクは、ミズキというサポーターのおかげでこの問題はクリアしている。
「確かにかなり分かりにくかったな。
普通の電柱だったし、俺もほとんど偶然見つけたようなもんだよ」
「へぇ、運が良かったんだ。
でも、なんでこのコメント、こんなにレスが付いてるんだろう」
確かに、サポーター募集だけならば普通は多くて十件前後のやり取りで終了するが、このコメント数は五十に届こうとしていた。
ミズキはツリーを辿ってコメントを目で追って見る。
「あ、これじゃないか?」
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[クーガ知ってますー]
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一つ、どこか頭の悪そうなコメントが目についた。




