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黒旋律の歌姫  作者: 梔子
二章【再会編】
33/64

虐めちゃダメだべ!

恐ろしい化け物に追われ、不思議な扉の中に飛び込んだリオ。


そんな彼は現在。


「フィーバーだべー!」

「〇☆▲△◆#☆○!」


何故か、通路に設置されていたミラーボールの真下で踊っていた。彼の周りでは、ゴーレム達が一糸乱れぬダンスを踊っている。


リオがイエーイと腰を振れば、ゴーレム達も楽しそうにクルクルと回る。


彼等ゴーレム達は、カリダの踊りを長年見て、自分達もお気に入りのダンスを踊るようになったのだ。中心になって踊っているのは、十年前にカリダに乗られていたロボ君だ。


今も時々カリダに乗られているロボ君は、ゴーレムの中でもリーダー的な存在になっていた。


そんな彼はリオ少年を見て、幼いカリダを思い出し、彼をダンスに誘ったのだ。


最初は無機質なゴーレム達に囲まれ、リオ少年はチビリそうになる程に怯えた。だが、ゴーレムの一体が自身を改造して作ったスピーカーから楽しげな音楽を流すと、次第に気を許して彼も踊り始めた。


彼等が踊っているのは、昔懐かしのフィーバーダンス。蟹みたいな姿のゴーレム達も、器用にアームを使って踊っている。


彼等が楽しく踊っていたら……。


「イエーイ楽しいね!ヘイスケ。時々は僕も踊ってみようかな」

「皆喜びます」

「な!?お前誰だべ!」


いつの間にか自分の横で踊っていた少年に気が付いたリオは、ショエーと手足を上げて驚いた。


ヒョウヒョウと踊っているのは一人の少年。可愛いらしいピンク色のチャイナ服に茶色の半ズボンを穿いている彼は、まるで夢の住人のように美しかった。


その飛び切り美しい少年は、老長けた銀色の瞳をニンマリとさせた。赤い唇が弓を描く。


その美しさに硬直するリオ。片田舎の鼻水を垂らした少年には眩しいものである。動悸が激しく、まるで近所の牛に追い掛けられた時のように跳ねた。


「こんにちは坊や」

「坊やとは失礼だべ!お前も同じくらいだべ」

「ゴメンゴメン」


だがしかし、いきなり坊や扱いされたリオは頬を膨らませて怒った。坊やとは呼ばれたくない年頃なのだ。


先程のポヤーとした心地は吹っ飛び、目の前の少年に抗議した。少年の後ろの黒服を着た男が、微笑ましい物を見るような顔をしているのも腹立たしい。


いきなり現れた彼等に警戒もしないリオ。彼は生来、人見知りしない性格で、尚且つ深い事を考えない質である。


美少年達の雰囲気が話し掛け易いのも理由の一つだろう。



プンプン怒るリオを見てクスクス笑う少年は、謝ると懐から美しい球を出した。


「お詫びにコレあげるよ」


それはビー玉程度の大きさの球だった。全体は琥珀のように深みのある黄金色だが、赤や碧等の流線が孤を描いて、まるで天の川のように瞬きながら流れていた。


素材は良く分からないが、少年から渡されて触るとフンワリと温かい。


「それをあげるからさ、あっちにいる人に渡して来てよ」

「詫びと言いながら、用事を押し付けてきたべ!?」

「言うこと聞かないとヘイスケがガッ!てするから」

「しかも脅されたべ!」


少年の言葉に、ヘイスケと呼ばれた青年が申し訳なさそうに、ちょっとだけ拳を突き出した。黒いスーツを着た優しげな印象の青年だが、逞しくて拳も痛そうだ。


「ヒエエー」と恐れ戦くリオは、ゴーレムに抱き着いて怯える。何故か「都会の人は怖いべー!」と叫んでいる。


「はいはい。怯えないでよ。ほら、これあげるから」


少年が差し出したのは、不必要なくらいゴテゴテと飾りが着いた玩具の剣だ。鍔には竜がトグロを巻いている。


「ふぉおお!!」


両手で受け取ったリオは、歓声を上げながら剣をしげしげと眺めた。


少年にとって、カッチョイイ剣は凄まじく憧れる物だ。複雑な装飾なんて痺れる。村では良い棒を誰が持つか競っているが、そんなのは比べ物にならない。何せ自分は剣を持っているのだ。


目をキラキラさせているリオを見た少年は、微笑みながら改めて尋ねた。


「頼まれてくれる?」

「合点承知だべ!あっ!兄ちゃん、背中に括りづげてけろ!」


リオに頼まれた青年は、ニコニコと笑いながら、何処からか出した紐を使って、剣を背中に結わえてあげた。


ヒャホーイと跳びはねながら喜ぶリオに、美少年は紙に何かを描いていた。


「渡すのは金色の人だからね。君って字って読められる?」

「じ?」

「……絵で特徴描くから」


少しの間を開けた美少年は、紙に新たに書き込むとリオに渡した。


リオが見ると、そこには少女漫画のようなキラキラした画風で人と地図が描かれていた。


「天使様だべ?」


リオは首を傾げる。何故なら金色の髪の人物には大きな翼が生えていたからだ。


「さっきも言ったけど、あっちの通路の奥にいるから、それを渡してね」



「ひ……一人でだべ?」

「ゴーレム達と一緒に行ってきなよ。あと、悪い奴らがいたら、これを投げちゃって」


怯えたリオをゴーレム達が励ますように囲む。そんなリオに美少年は小さな巾着を沢山渡した。黄緑の生地にカラフルな星柄が描かれたソレからはフンワリと、甘くて香ばしい不思議な香りがした。


不快ではないが嗅いだ事のない香りだ。


「実は、その子は悪い奴らに虐められているんだ」

「な……なんだってだべ!?」

「それを君が救うんだ!君が、その剣と匂い袋で勇者になるんだよ!」

「お……おお!」

「ちなみに、紙に出る方法が描かれているからね」

「分かったべ!行ってくるべ!」


ターと走り出したリオは、ゴーレム達と一緒に暗闇の中に靴音を響かせながら消えていった。


「いやー。ちっちゃい子って、ちょろ……素直で可愛いねー」


■■■■■■■■■■■■


「何故泣く歌姫よ」

「あらあら大丈夫。皆優しいから安心してぇ」

「某のコロシアムで祝いの武道会をいたすぞ?」

「……!」

「ほら、泣かずに早く決めろ。もうすぐ期日だ」


リオが走ると、曲がり角の向こうから複数の話し声がした。一時停止したリオは、ゴーレム達と一緒にソーと覗き込むと、そこには黒い何かに囲まれた男性がいた。


「!?」


リオは目を見開く。


男性を囲む影は、まるで黒い霞みのような物体が人型になって、たなびいていた。


リオが驚いているのはそれではない。男性には、美少年が紙に描いた絵のように純白の翼があったのだ。


リオが覗き込んだ先、通路の途中に作られた談話スペース。そこのソファーに座り込んでいる男性は長身である。


痩せた体には、しなやかな筋肉がつき、手足を動かすと優雅に収縮するのが分かる。その体には純白の衣装を着ていた。


それは、まるで古代の人々が着ていたように、布を体に優雅に巻き付けたような服だ。体には繊細に華を透かし彫りにされた装飾品と鎖が巻き付き、彼はまるで人形のように飾り立てられていた。


しなやかな手には、指だけを覆うデザインの白いレースの手袋をはめている。


緩やかな癖があるフワフワの豊かな髪は、朝日を紡いだような清らかな金色。


背中に生える純白の翼がバサリと動く度に、風圧によりフワリとたなびいていた。


面長の甘く濃い顔立ちに、まるで雪みたいに白い肌。長い睫毛に覆われた垂れ目の醒めるような碧からは、ハラハラと透明な雫が落ちていた。



傍らには美しい虹色の竜が心配そうに見つめている。


顔立ちは整ってはいるが美形ではない。先程の美少年とは比べようがない。


だがしかし、美少年は俗っぽさがあったが、彼にはソレがなかった。


リオは知らなかったが、幼い頃より世間から隔離され、賢者に育てられ、その後神様に教育された彼は、世俗慣れしていない浮世離れした雰囲気を纏っていた。(彼には前世の知識があるが、病床にて死んだ少女は、思春期に入るか入らないか位の年齢にて病に伏せていた。自宅療養にて治療をしていた為に、そもそも世間知らずな部分があった。ネットという文明の利器があった為に、余計な知識はたらふく持っていたが)



その優雅な動作や纏う雰囲気が、静かに泣く姿が、彼を精霊のような夢幻じみた存在のように演出していた。


竜を従えた彼は、母親が話してくれた天使のようだと思った。その天使が悪い奴に虐められ、リオは憤る。


相変わらず天使に話し掛ける黒い影達。天使は話し掛けられる度にフルフルと首を振って、首にかけた首飾りを握る。


唇を噛み締める彼は、とても辛そうな表情をしていた。また、耐え切れなかった雫が頬を伝う。


虐めが大嫌いだったリオは怒りに頬を膨らませた。


「虐めは駄目だっぺー!」


叫びながら投げる匂い袋。ゴーレム達も加勢して匂い袋を投げている。


「うおおおお!?」

「きゃあああ!汚い!」

「うぎゃあああ!?」

「……!?」


凄まじい悲鳴があがる。人間に例えるなら、まるでゴキブリを投げ付けられたような反応だ。


袋の中身が非常に気になるが、とにかく黒い影達は悲鳴を上げて退散していった。その隙をついたリオは青年に駆け寄ると、青年の手を掴んで走り出す。


「こっちだべ!」

「?」


青年はリオを見て非常に驚いていたが、大人しくリオについて来た。青年に寄り添うように竜も走ってくる。


ゴーレムは美少年から貰った紙を見て先導しながら走る。時折、黒い影が襲い掛かってきたが、匂い袋を投げると絶叫を上げて退散した。


「キャー!?この子、また投げたわぁぁ」

「ぬ?冥王様はいかがなされた?」

「……(説明)」

「汚くてぇ、耐え切れないからぁ、お風呂に行ったらしいわよぉー」

「さようか」

「わたくしもぉ入りたいわぁ。帰るぅ?どうせ此処から出てもぉ、カリダちゃんには主を決めてもらえるんだしぃ。あのチビ汚い物投げてきて嫌になっちゃった」

「某も風呂に入りたいですしな。まあ、チャンスはいくらでもありますし…」

「……」


等と影が会話しているのを知らずに向かった先。ソコには巨大な扉があった。


リオが入って来た扉だ。



そのまま扉を開こうとすると、突然青年が立ち止まった。


「どうしたべ兄ちゃん?」


見上げると、悲しげに眉を潜めた青年は扉に触れた。すると、青年の手が甲高い音を響かせながら扉に弾かれた。


「……!」

「キュー!」

「だ……大丈夫だべ!?」

「□▲○$★&◎!?」


青年が腕を押さえて呻く。プルプル震えながら壁をダンダン叩きながら堪えている。とても痛そうだ。




ゴーレムと竜とリオはエライこっちゃエライこっちゃと右往左往していたが、おもむろに振り向いた青年が竜の頭をガシイと掴むと扉に押し付けた。


「キョオオオ!?」(痛ええええ!?)

「……」


青年の時と同じように弾かれる竜。叫びながらゴロゴロと転がり、もんどりうっている。


かなり痛そうだ。


それを片手を押さえながらケタケタと笑う青年。意外と性格が悪い。


とりあえず、リオは青年が出れないことを理解した。


「オラは開く事ができるべ」

「!?」

「任せるべ」


誇らしげに胸を張ったリオは扉に触れた。先程とは違い、扉に触れても弾かれなかった。


いざ、扉を開こうとして手を止めた。


先程の化け物を思い出したのだ。


もしかしたら扉の前にいるかもしれない。不安になって扉に耳をくっつけて音を聞いてみるが、何も聞こえない。


「キュー?」(どうした?)

「ん?向ごうに何がいないが分かるっべ?」

「キュ!」(任せろ!)


竜は耳をピッと立てて扉に近付けると、暫くじっとして確認すると後ろを向いて、ビシッと親指を立てた。


「キュ!」

「大丈夫だべ?」

「キュ!キュ!」


竜の太鼓判を貰ったリオは、恐る恐る扉を少し開けて外を確認した。


安全を確信したリオは扉を開き、青年に手招きする。青年が出ようと足を踏み出した瞬間、発生した青白い光の壁にバチイ!と弾かれた。


「ーー!」


床に倒れ込み、顔面を押さえて足をバタバタさせて苦しむ青年。おそらく、喋れたら絶叫していただろう。


「ご…ごめんなさいだべ」


リオが涙目になりながらシュンと落ち込み謝ると、痛みに呻いていた青年は気合いで起き上がり、プルプルしながらリオの頭を撫でて慰めた。


「大丈夫?」

「!」


リオに力強く頷き、ガッツポーズをしようとして上げた青年の右手が再び結界に触れた。


バチイン!


「……!?」


再び青年は片手を押さえてしゃがみ、ウオオと苦しんだ。


■■■■■■■■■■■■


【その後、落ち着いたリオは、美少年から紙に出方を描いて貰ったことを思い出し、扉の外の結界発生装置を解除する事に成功する】



月光がさす巨大な空間に純白の翼が翻り、一人の青年と竜が空を駆けていた。青年の腕の中には一人の幼い少年。まだ十代になったかどうかの年頃の彼は、必死に青年にしがみついていた。


翼の主は空に向かって翼を動かし、天井の隙間から自由に向かって飛び出して行った。


そんな純白の翼を見る存在がいた。


弄られたソレの低下した頭では、ソコから出られる事に、今まで気付かなかった。だがしかし、今まさに目の前で一人の青年が自由になった。


ソレでもそこが出口だと流石に気が付いた。


青年を見たソレは呟いた。


「鶏肉……?」






上に……上に行こう。上には食材がある。


ソレは傍らの足場に手をかけて登りはじめる。沢山の分身を引き連れて。


調子外れな鼻歌が響く。

変なのもついて来ましたが、やっと脱出しました。志村後ろ後ろー。

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