表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/11

■第10話『終わらせるための存在』


 ——世界が、戻る。

 

 音が、戻る。

 

 銃声。

 足音。

 風。

 

 すべてが、一斉に流れ込んでくる。

 

 

「……っ!」

 

 息を吐く。

 

 さっきまで見えていた“別の結果”が、薄れていく。

 

 

 だが——

 

 

 消えない。

 

 

 あの光景。

 

 彼女を失った後の、自分。

 

 

 あれは、ただの幻じゃない。

 

 

「……なあ」

 

 

 彼女を見る。

 

 

「これ、何なんだ」

 

 

 

 彼女は、すぐには答えなかった。

 

 

 ただ、静かに周囲を見ている。

 

 

 兵士。

 進化体。

 

 

 そして——俺。

 

 

 

「……たぶん」

 

 

 ようやく口を開く。

 

 

 

「終わってるのに、終わってない」

 

 

 

「……は?」

 

 

 

「この世界、一度ちゃんと“終わってる”の」

 

 

 

 背筋が冷える。

 

 

 

「でも、そのあと……やり直されてる」

 

 

 

「誰が」

 

 

 

 即座に返す。

 

 

 

 彼女は、首を横に振る。

 

 

 

「分からない。でも——」

 

 

 

 一歩、前に出る。

 

 

 

 進化体を見つめる。

 

 

 

「“あれ”は、知ってる」

 

 

 

 

 その瞬間。

 

 

 

 進化体が、ゆっくりとこちらを見る。

 

 

 

 そして——

 

 

 

「……理解……近イ」

 

 

 

 はっきりとした言葉。

 

 

 

 空気が張り詰める。

 

 

 

「……お前ら、何なんだよ」

 

 

 

 思わず口にする。

 

 

 

 すると——

 

 

 

「……観測者」

 

 

 

 

 その一言で、全てが歪む。

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 

「世界……壊レタ」

 

 

 

 ゆっくりと、言葉を紡ぐ。

 

 

 

「次……選ブ……必要アル」

 

 

 

 

 その意味。

 

 

 

 直感で分かる。

 

 

 

 

「……選別、か」

 

 

 

 

 進化体が、わずかに頷く。

 

 

 

 

「強イ……適合……残ス」

 

 

 

 

「弱イ……消ス」

 

 

 

 

 

 兵士の一人が、焦った声を上げる。

 

 

 

「ふざけるな!そんなもの——」

 

 

 

 

 その瞬間。

 

 

 

 

 進化体が動いた。

 

 

 

 

 一瞬で距離を詰める。

 

 

 

 

 そして——

 

 

 

 

 兵士の言葉は、途中で途切れた。

 

 

 

 

「……静カニ」

 

 

 

 

 低く、呟く。

 

 

 

 

 完全に、“上位存在”。

 

 

 

 

 

 それを見て、理解する。

 

 

 

 

 人間側も、ただの生き残りじゃない。

 

 

 

 

 だが——

 

 

 

 

 届いていない。

 

 

 

 

 

「……じゃあ、俺たちは何だ」

 

 

 

 

 視線を向ける。

 

 

 

 

「選ばれる側か?」

 

 

 

 

 

 進化体は、少しだけ考えるように動きを止め——

 

 

 

 

「……違ウ」

 

 

 

 

 そして、言った。

 

 

 

 

「お前ハ——“終ワラセル側”」

 

 

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 

 

 意味が分からない。

 

 

 

 

 

「ループ……原因……異常……」

 

 

 

 

 ゆっくりと、言葉を重ねる。

 

 

 

 

「排除……出来ナイ……存在」

 

 

 

 

 

 心臓が、強く打つ。

 

 

 

 

 

「……俺が?」

 

 

 

 

 

「ソウダ」

 

 

 

 

 

 進化体の目が、真っ直ぐこちらを射抜く。

 

 

 

 

 

「お前……毎回……残ル」

 

 

 

 

 

「世界……終ワラナイ」

 

 

 

 

 

 

 その言葉の意味。

 

 

 

 

 

 ゆっくりと、染み込んでくる。

 

 

 

 

 

 ——俺がいるから、終われない。

 

 

 

 

 

 不死。

 

 

 再生。

 

 

 

 

 それは“生き残る力”じゃない。

 

 

 

 

 “終われない原因”。

 

 

 

 

 

「……ふざけんなよ」

 

 

 

 

 笑いが漏れる。

 

 

 

 

 

「じゃあ何だ」

 

 

 

 

「俺が全部の元凶か?」

 

 

 

 

 

 進化体は、否定しない。

 

 

 

 

 

 それが答えだった。

 

 

 

 

 

 そのとき。

 

 

 

 

「……違う」

 

 

 

 

 彼女の声。

 

 

 

 

 

 振り向く。

 

 

 

 

 

 彼女は、強く首を振っていた。

 

 

 

 

 

「違うよ」

 

 

 

 

「あなたがいるから、終われないんじゃない」

 

 

 

 

 

 一歩、近づく。

 

 

 

 

 

「あなたがいるから——変えられる」

 

 

 

 

 

「……っ」

 

 

 

 

 

 その言葉が、刺さる。

 

 

 

 

 

 今まで見てきた“結果”。

 

 

 

 

 全部、同じだった。

 

 

 

 

 全部、壊れて終わった。

 

 

 

 

 

 でも。

 

 

 

 

 

「……今回は違う」

 

 

 

 

 

 彼女が、はっきりと言う。

 

 

 

 

 

「ここで止めた」

 

 

 

 

「あなたは、私を壊さなかった」

 

 

 

 

 

 

 その事実。

 

 

 

 

 

 それが、初めての“分岐”。

 

 

 

 

 

「……だから」

 

 

 

 

 

 彼女は、俺の手を取る。

 

 

 

 

 

「終わらせるんじゃなくて——」

 

 

 

 

 

「終わり方を、変える」

 

 

 

 

 

 

 その言葉で。

 

 

 

 

 

 何かが、繋がる。

 

 

 

 

 

 終わらない世界。

 

 

 

 

 繰り返される結末。

 

 

 

 

 

 そして——

 

 

 

 

 “例外”の二人。

 

 

 

 

 

「……なるほどな」

 

 

 

 

 

 小さく息を吐く。

 

 

 

 

 

「だったらやることは一つだ」

 

 

 

 

 

 視線を上げる。

 

 

 

 

 

 進化体。

 

 

 兵士。

 

 

 この世界全部。

 

 

 

 

 

「ぶっ壊すんじゃなくて——」

 

 

 

 

 

 一歩、前へ。

 

 

 

 

 

「選び直す」

 

 

 

 

 

 

 その瞬間。

 

 

 

 

 

 進化体が、わずかに笑った。

 

 

 

 

 

「……可能性……確認」

 

 

 

 

 

 

 世界はまだ、終わっていない。

 

 

 

 

 

 だが。

 

 

 

 

 

 初めて——

 

 

 

 

 

 “変わる可能性”が生まれた。

 

 

 

 

 

 ——それが、どんな結末になるのか。

 

 

 

 

 

 まだ、誰も知らない。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ