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婚約者がよりにもよってブリジット・サンザス嬢と一緒にいる。
そんな話を友人から聞いたフェリシティは、そわそわしてローガンを待っていた。
昨日手紙が届き、フェリシティの家に訪ねたいと書かれていた。
いつものローガンの手紙からするとちょっと文字が乱れていたのが気になったが、フェリシティはローガンとブリジットがどういう関係なのか問い質すつもりでいた。
場合によっては、婚約そのものを考え直さなければならない。
自分を落ち着けるように深呼吸をすると、執事がローガンを案内してきた。
「やぁ、フェリ」
「こんにちは、ローガン様」
ローガンを見た瞬間、フェリシティはおや?と思った。
いつものローガンなら、髪型も服装もきっちり整っているのだが、今日は少々乱れている。
何だか慌てているような雰囲気も出していた。
「あの、ローガン様?どうかなさいましたか?」
ブリジットとのことを聞く前に、フェリシティは心配になった。
「……何でもない……いや、そうだ、フェリ。何か変わった物を拾わなかったか?」
「え?変わった物ですか?具体的にはどのような物なのでしょうか?」
「コ……」
ローガンは何かを言いかけて口をつぐんだ。そして、首を左右に振った。
「悪い。拾っていないのなら、別にいいんだ。忘れてくれ」
「ですが」
「フェリが拾ってないなら、それでいいんだ」
「……何かなくされたのですか?」
「……まぁ、そんなものだ。本当に気にしなくていい」
気にしなくていいと言われたが、それは髪や服装を乱してまで探しているような物ではないのだろうか?気にするな、と言われると余計に気になってしまう。
けれど、ローガンはそれ以上、なくした物について話す気はないらしく、気にはなったけれどフェリシティもそれ以上は何も言わなかった。
「私も質問させてください、ローガン様」
「何だ?」
「失礼ですが、ブリジット・サンザス嬢とはどういうご関係ですか?」
「な!」
ブリジット・サンザスという名前を出した瞬間、ローガンが驚いて軽く口が開いたままになった。
「フェリ、ブリジット嬢とは……その……」
「皆様ご一緒に湖に行かれていたようだ、と聞きました。具体的にはどうだったのでしょうか?」
「確かに、仲間の中に彼女はいた。けれど、それだけだよ」
「お付き合いをされているわけでは?」
「……ない。その、彼女の相談にちょっと乗っていただけなんだ」
「ローガン様、私もこのようなことはあまり言いたくありませんが、ブリジット嬢はあまりいい話は聞きません」
「フェリも噂話だけで彼女を判断するのか?」
ローガンの口から出たその言葉に、フェリシティは小さく息を吐いた。
「確かに、それが根も葉もない噂なら、です。私自身、ブリジット嬢を何度かお見かけしたことがございます。一度、婚約者のおられる方と親しくして、お相手の婚約者の方と険悪な雰囲気になったところに出くわしたことがあります。私自身の印象として、ブリジット嬢にはあまりいい印象を抱いていません」
「それは、フェリが彼女を知らないから」
「彼女の為人は知りませんが、彼女が原因で壊れた婚約があることは知っています。それも複数。ローガン様、ブリジット嬢に近付くのはお止めになった方がいいと思います」
フェリシティの言葉に、ローガンはカッとなった。
「何も知らないくせに!」
「では、ローガン様とブリジット嬢は、どういう関係になるのですか?」
「……友人!だ!」
一瞬の間があったことにフェリシティは気が付いていた。
顔も赤くなっていて、怒っているのが分かる。
けれど、ブリジット・サンザス嬢を警戒するのは、年頃の女性の間では当たり前のことなのだ。
「もういい、今日はこれで失礼する!」
いつもの穏やかさはどこへいったのか、ローガンはあからさまに怒っているという雰囲気を出しながら部屋から出て行った。
「……はぁ……」
乱暴に扉が締められると、フェリシティはため息を吐いた。
「……あれは、相当のめり込んでいる、のかしら?」
これでもしローガンが開き直って堂々とブリジット嬢といるようになったら、いよいよ本当に婚約そのものを考え直さなくては。
本当なら悲しむか怒るかした方がいいのだろうが、妙に冷静にフェリシティはこれからのことを考えていたのだった。




