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読んでいただいてありがとうございます。

 フェリシティがレイモンドに出会ってから数日後、珍しくフェリシティの家にローガンがやって来た。


「あら、ローガン様、どうかなさいましたか?」


 いつもはフェリシティがローガンの屋敷に行っているので、ローガンが来たことに、正直に言うとフェリシティは驚いていた。


「近くまで来たから。フェリ、よければちょっとカフェへ行かないか?」

「カフェですか?」

「あぁ、最近話題のカフェなんだが、ちょっと可愛らしい感じの店で、男では入りづらいんだ」


 さらに珍しいことに、ローガンがカフェへと誘って来たので、フェリシティの内心は驚きで一杯になった。

 基本、フェリシティとは外に出たがらないローガンなのに、わざわざフェリシティを誘ってまで行きたいカフェがあるなんて明日は雨でも降るのかしら?と勝手に想像した。


「かまいませんわ。たしかに男の方では、可愛らしいカフェには入りづらいですものね」

「そうなんだ、頼むよ。友人たちは行ったらしくて、皆、その店のことを知っていたんだよ。それで俺も話を合わせたくて誘ったんだが、誰も予定が空いてなくて」


 ほっとした顔でローガンがそう言ったが、その友人たちは一体、誰と行ったのだろう。

 婚約者ではない女性と行っていたのだとしたら、もめる原因にしかならない。

 ローガンの友人たちとはあまり話をしたことはないが、その婚約者の女性たちとは交流がある。

 だいたいいつも婚約者のことは話に出るので、そんな可愛らしいカフェに二人で行ったのなら、絶対に言うと思うのだが、最近のお茶会でそんな話題になったことがない。

 そして、男性ばかりで行くような店なら、わざわざローガンがフェリシティを誘うとも思えない。

 そこまで考えて、フェリシティは軽く頭を横に振った。

 こんな風に疑うなんていけないわよね、そう思っても疑問は浮かぶ。

 そんな可愛らしい店の話をする友人って、誰のことなのだろう?フェリシティがそう疑問に思っても仕方のないことだと思うのだが、ローガンは特に気にしていないようだった。


「いつ行きますか?」

「暇なら、今から行かないか?ほら、今度出かけるって言っただろう?それが明日だから」

「そう言えば、そうでしたね。えぇ、かまいませんよ」


 友人たちと出かけると言っていた日にちが明日だった。フェリシティはローガンと会わないから別の予定を入れていたので、すっかり忘れていた。


「では、今から行きましょうか」


 ついでに小物屋に寄って何か買ってこようと思い、お金が入った小さな手提げ袋をメイドに持って来てもらった。

 手提げ袋を受け取ろうとした時、微妙にタイミングがずれてしまって床に落ちた。

 絨毯の上だったので音はあまりしなかったが、落ちた時に中から硬貨が床にこぼれた。


「申し訳ございません、お嬢様!」


 慌ててメイドが謝って拾い始めたので、フェリシティも一緒に拾った。


「いいのよ。私もちょっと他のことを考えていたから」


 思ったよりも広範囲に落ちた硬貨はローガンの近くにも落ちたらしく、何枚か拾ってフェリシティに渡してくれたので、すぐに手提げ袋に入れた。


「だいたい拾えたと思うけど、もし落ちていたら私の部屋に置いておいてね」

「はい」


 フェリシティの家に勤めている使用人はけっこう生真面目なので、くすねることはしない。ちゃんと信用出来る人間ばかりだ。


「ありがとうございます、ローガン様」

「いや、ところで何を考えていたんだい?」

「カフェにどんなメニューがあって、何を頼もうかな、と」

「そうか。やはり女性はそういう店に行くのが楽しいのかな?」

「そうですね。私はお酒を飲まないので、よけいにカフェの方が好きです」

「あぁ、そうだったね。フェリはお酒を飲まないのだったね」

「はい」


 そのままローガンが乗ってきた馬車で噂のカフェに行く途中で、フェリシティは明日どこに行くのかを聞いてみた。


「明日は、モルガン湖に行く予定をしているんだ」

「モルガン湖ですか?」

「あぁ、友人がその近くで新しく屋敷を買ったらしくて、そのお披露目を兼ねているんだよ」

「まぁ、素敵ですね」

「うん。ちょっと身体が弱い人だから、静かな場所でゆっくりしたいんだそうだ」

「皆さんが行っても大丈夫なんですか?」

「心配はいらないよ。弱いと言っても、普段の生活に何か支障があるわけではないから。それに、大勢でわいわいするのが好きな人なんだ」

「そうですか」


 確かにモルガン湖は風光明媚な場所で、その周りには貴族の屋敷が点在している。

 どちらかと言うと、現役を退いた方々が暮らしているか、別荘を持っている人が、たまに息抜きに行くような場所だ。


「他の友人たちがカフェのことをきっと話すと思うから、俺だけ知らないってのは、ちょっとなぁ」


 妙な対抗意識があるのか、ローガンは少しだけ苦い顔をしてそう言ったのだった。

 


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