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読んでいただいてありがとうございます。
レイモンドとフェリシティの家名をまだ出していなかったと思っているのですが、もし、どこかで見かけた方がいましたら教えてください。よろしくお願いします。
ナタリーはもう少しブリジットとサンザス男爵家の情報を集めると約束してくれた。
もちろんフェリシティも調べるつもりだったが、あまり商売に関わったことのないフェリシティはどこをどう調べたらいいのか分からなかった。
「調べるのって、難しいわ。もう、何でローガン様のためにこんな苦労をしなくちゃいけないのかしら」
いつも通り公園で座って唸っていたら、レイモンドが苦笑しながら立っていた。
「まぁ、レイモンド様」
「こんにちは、フェリシティ嬢」
「……ひょっとして、聞いていらしたの?」
「聞こえてしまったんだよ。婚約者殿にずいぶん怒っているようだね」
「怒っているというか……でも、そうかもしれません」
フェリシティの言うことなど全然聞いてくれないのにブリジットの言うことなら素直に聞いて彼女の傍から離れようとしないローガンに対して、フェリシティは怒っていいのか呆れているのか少し分からなくなっていた。
この感情に任せて婚約を破棄しようとしているわけではない。
けれど、こういうもやもやした思いが一因になっているとは思う。
「あの、レイモンド様、この間のコインなんですが、何か分かりましたか?」
「……君は関わらない方がいい」
「レイモンド様、そのコインを私の婚約者が探していました」
フェリシティのその言葉に、レイモンドはため息を吐いた。
このままでは否応なくフェリシティも巻き込まれる。
いや、あのコインを拾った時点で、フェリシティはすでに巻き込まれかけていたのだ。
「まだ何かは分かっていないが、おそらく本当に危ない物なんだ。あのコイン自体ではなくて、おそらくあれを作ったと思われる人間たちに関わると、命さえも危ないかもしれない」
レイモンドの真剣な表情に、フェリシティはぎゅっと目をつぶった。
婚約破棄をしようと考えてはいるけれど、ローガンの身に危険が迫るのを願っているわけではない。
何事もなく、終わらせたいだけだ。
「……婚約者は、あれを必死に探しているようでした。レイモンド様、婚約者は最近、ブリジット・サンザス嬢と仲がいいんです。つい先日も、彼女を含む友人たちと一緒にモルガン湖の別荘に遊びに行っていました」
「サンザス男爵家か。小物だがきな臭い家が出てきたな」
「小物なんですか?」
「あのコインを作ろうと思ったら、サンザス男爵家だけでは無理だろう。もう少し大物が関わっていないと無理だ」
材料を揃えるのもそうだが、あれを作れる職人も集めなければいけない。
サンザス男爵家では無理だ。
国内でサンザス男爵に力を貸しそうな人間がいないかを考えていたら、不意に国内でなくてもいいのだということに気が付いた。
「……そうか……」
国内ではなく隣国。
このコインの元となった硬貨を使っている国。
隣国の方が型なども取りやすい。
だが、もし本当にあのコインに隣国の誰かが関わっていたら国際問題に発展する。
それに、どうして隣国の贋金をこちらに持ってきたのだろうか?
「レイモンド様、大丈夫ですか?」
急に黙り込んだレイモンドを、フェリシティが心配そうな目で見ていた。
「フェリシティ嬢、君には悪いが、私は君の婚約者と関わらなければならないようだ」
「ローガン様が本当に悪いことをしているのでしたら、仕方ないと思います。それに、最近はローガン様と少しすれ違っていて……婚約破棄をしようと思っていたところなんです」
「そうか。だがすまない。おそらく、婚約破棄をしても、君が巻き込まれたことに変わりはない。私の方からも少し釘を刺しておくが、騎士たちが君に話を聞きにくるかもしれない。君が関わらないようにしたかったんだがな……」
「それくらいなら大丈夫です。ですが、ローガン様があのコインを探していました。私は知らないと答えましたが、きっと疑われています」
「そうか……。すまないが、フェリシティ嬢。君のご両親にお会いしたい」
「両親にですか?」
「あぁ、今回のことを私の口から説明させてもらいたい。場合によっては、君を緊急で保護しなくてはいけなかもしれないから」
「……分かりました」
そこまで、と正直思ったが、レイモンドがそう言うのならば、本当に危険なのだろう。
どうしてここまでレイモンドのことを信用出来るのか自分でも分からないけれど、ローガンよりもレイモンドを信じると決めたのは自分だ。
「では、改めて、私は財務局のレイモンド・ルウェイン。財務局では局長の地位に就いている。爵位は侯爵だ」
「侯爵閣下……」
フェリシティが思っていたよりも上の方だった。それに、財務局のトップでもある。
「フェリシティ嬢、そんなに固くならないでくれ。俺は君とここで会っていただけのただのおじさんだよ。ちょっと肩書きが多いだけのね」
いつもの笑顔に、フェリシティはほっとした。
侯爵閣下で財務局の局長という、いわば雲の上のような存在の人なのに、こんなに気さくな人柄をしているなんて……。
「フェリシティ・リールです。リール子爵家の長女です」
改めて名乗ると、お互いに小さく笑みを浮かべたのだった。




