シーン20 公園 それから
世界はどうなったのか
宇神はどうなったのか
坊屋はどうなったのか
気が付くと坊屋は地面に寝転がっていた。
なんとか起き上がり、ぼうっとする頭を振る。
何だ、どこからが夢だ?
そんなことも考えたが、両拳の傷がすべて現実であることを教えてくれる。
そして記憶が繋がった次の瞬間、坊屋は一番重要な情報にたどり着いた。
「……! 宇神さん! あの子!」
辺りを見渡すと、ここが河川敷であるらしいことがわかる。
そして、少し離れた川岸の方に、焚火の火と人影が見えた。
急いで駆け寄った坊屋に向けられる二つの視線。
一つは犬を抱え、黒いスーツを羽織って焚火で暖を取る少年の。
もう一つは、大の字に寝転がり、肩で息をしながら、にいっと笑う宇神のものだった。
「ハァ、ハァ……どうだ見ろ、人を幸せにできたぞ。俺はもう、ハァ、貧乏神じゃない」
手足を投げ出し、全て出し尽くしたという体の宇神。
坊屋はこぼれる涙を両手で拭って、宇神を見下ろす位置まで歩いて近寄った。
「バカ言うな。俺はこんなにズタボロなんだぞ。やっぱりアンタは貧乏神だ。優しい、貧乏神だ」
~スタッフロール・エンディング・テーマ曲~
交差点に立つその男は、革のブリーフケースと一緒に白い小さな手持ちの箱を提げ、信号を待っている。
その時、角のビルに掲げられている大きな情報画面が、夕方のニュースを流し始めた。
日経平均株価終値は一万九千円を割り込み、七十二円安の--
男は納得いかない様子で、その情報画面を眺めていた。
あの日、あの時、世界は全てリセットされたようにすっかり元に戻っていた。
みんながイライラし、みんなが走り、叫び、争い、大声で笑う世界。
幸せだった期間のことは不思議と誰も覚えていないようだった。
「いや絶対揺り戻し来てるだろ」
公園のベンチまでたどり着き、遂に愚痴がこぼれ落ちた。
手にしたスマートフォンの画面には、一瞬上がった直後から延々右下がりの株価チャート。
「よぉ、少年。今日もさぼりか」
男は、缶コーヒーの蓋をあけながら、二つ並ぶベンチのもう一方に座る少年に話しかけた。
少年は操作しているタブレットに目を落としたまま答える。
「今日は塾休みだよ。ウガミの散歩の休憩中」
少年の足元でワンと鳴く犬に、男は笑みを向けた。
不意に現れた黒スーツ姿の壮年がその犬を撫でようとしゃがむ。
喜び、テンションの上がった犬は急に駆け出し、ジャンプしてベンチの男の横に着地した。
そこにあった缶コーヒーを盛大に蹴飛ばして。
コーヒーを丸ごと一本全身で飲むことになったベンチの男は立ち上がり叫ぶ。
「宇神ィ!! この貧乏神め!!」
お疲れさまでした。
お読みくださり、ありがとうございました。




