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刀子月譚  作者: どるき
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こちら宗教ギルド濁拷会

 目を閉じてしばらくするとボクの意識はふっと途切れた。

 いびきまでかくほどにぐっすりと眠り続けたボクは自分でもどれだけ寝たのかわからない。

 気がつくとボクは真っ暗で狭い空間で目覚めた。


「ここが例の棺か?」


 声の主が言うとおりならばここは例の神様を奉る神殿で、ボクはそこにある棺の中にいるそうだ。

 とりあえずもがくと頭上を蓋する何かは手で押せば動きそうなので、試してみると蓋は動く。

 外界の光が入り込んできて少し眩しい。


「みんな! 棺が動いたぞ!」


 ボクの行動を誰かが見ていたようだ。

 神殿? にいたであろう何人かが集まってきて、中の狭さと寝そべった姿勢の窮屈さに難儀していたボクを差し置いてボクを棺から解き放った。


「ここは?」

「お目覚めですか、異世界の転生者よ。ここはテレポト神を信仰する正ギルド、濁拷会(だくごうかい)の所有する神殿です。そして私は神官長のマラガス。アナタのお名前をうかがってもよろしいか?」

「ボクはトーコだ。いろいろと聞きたいことがあるのでよろしくな、神官長さん」

「ではこちらにどうぞ。まずはお召し物を」

「あっ!」


 言われて気がついたが素っ裸なので神官長たちには生え始めた下の毛までばっちり見られて恥ずかしかった。

 まあそれはさておき、神官長が持ってきた昔話を彷彿させる一枚布の衣服を纏ったボクは会議室に招かれて、このブレイドなる場所について神託(おしえ)を受ける。

 まずはブレイドとは八柱神によって作られたこの世界そのものを指す言葉で、ボクの世界の常識で言えば惑星ブレイドと言うことらしい。

 ブレイドは先のテレポト神とのやり取りから想像した通りに剣と魔法の世界であり、エーテルと呼ばれる不思議なエネルギーを操って魔法を使ったり特殊な力を秘めた武器を作ったりして魔物と戦っているそうだ。

 そもそもブレイドに出現する人間の敵である魔物は悪いエーテルが実体を得た存在なんだそうで、立ち向かうにはエーテルを操れる戦士の存在が必要不可欠なんだとか。

 ボクのように異世界の死人を転生させると一般人よりその素養が高まることから、テレポト神は見込みがある人間が不慮の死を迎えると、転生させて祭壇に送り込んでいるようだ。

 ボクは自分が死んだことは覚えているがその死因は憶えていない。

 だが神官長の説明を聞く限り事故死なのはまず間違いないようなので、きっと残してきた家族は今頃悲しんでいるのだろう。


「帰りたい」


 家族のことを思い浮かべたボクは不意に言葉を漏らしていた。


「異世界と一口にしても様々な世界がありますので一概には言えませぬが……そんなにアナタの世界とブレイドはかけ離れていますかな? 戦いに身を投じたくないのならばギルドには裏方仕事も山ほどありますし、ブレイドでの暮らしも慣れれば快適ですぞ」

「快適だとか戦いたくないだとか、そういう話じゃないんだ。ボクが死んだことで今頃おじいちゃんが……ボクの家族が悲しんでいるだろうなと」

「それは仕方がないことでしょう。ブレイドに転生しなかった場合でもそのまま元の世界で死んでいただけですので」

「そう言われればそうなんだが……参ったな」

「だが諦めてはいけませんよ。テレポト神は空間だけでなく時間をも超越できる神です。憎き七剣邪をすべて討伐し、テレポト神が十全になれば……もしかしたらアナタの願いをかなえてくれるかもしれません」

「御褒美を目の前にぶら下げられたら頑張るしかないってわけか」

「左様」

「ならばボクにも色々と教えてくれないかな? エーテルってのを操れないと魔物や剣邪とは戦えないっていうんだし」

「それならばうってつけの男を紹介しましょう。一階のパブでお待ち下さい」

「パブか……見ての通り丸腰の素っ裸でこの世界に来たくらいなので、お金なんてないぞ?」

「カカカ。パブの支払いは月末締めの翌月払いなので今は気にせず飲み食いしてください。異世界からの転生者ならエーテルの扱いを覚えれば魔物退治で食事代くらいすぐに稼げますので。それにうちのパブではギルドメンバー向けに武具の販売もしていますので、食事以外にもそちらの品定めをしてもよいでしょう」


 神官長の言葉にならえば濁拷会においてパブはメンバーにとって重要な存在のようだ。

 武器も調達できるとなれば、これから魔物と戦う上では確かに武器選びは重要なことだろう。

 ひとまず神官長に従ってボクはパブに向かった。

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