第93話「下山」
カッポカッポと馬の蹄が心地よい音を届けるのを聞きながら、ゆっくりと下山。
時間はようやく朝と言ったところ。
明け方近くから作業していたものだから、実は結構疲れていた。
───昔はそうじゃなかったんだけどなー、と年月をシミジミと感じる。
戦場だと、早々疲労を感じることは少なかったのだが…
今思えば、エリンと一緒に寝ていたことが原因だったんだろうなと気付く。
エリンは『勇者』だ。
彼女のスキルならば、傷を癒すこともできるし、
同調させることで疲労も同時に回復させていたのかもしれない。
まぁ、それ以上に姪っ子の良い匂いを堪能できたという、身内特権もあるにはあったのだろうが…
はぁ、エリンんん…
叔父さん寂しいです。
しょんぼり…
朝も早いというのに、夕方の切なさを思わせる哀愁を漂わせたオッサンが…馬に揺られている。
すっごい絵にならない情けない光景だ。
これが、
フォート・ラグダの隠れた英雄。
または、
戦場での知られざる活躍をしていた斥候長。
そして、
地元じゃ最強と言われる──
──バズゥ・ハイデマンの姿だと、誰が知り得ようか。
いや、知り得ない。
誰に知られることもなく、
陰に日向に…
雨の中、風の中、
火の中、水の中、
オッサンは働くのだ。
そう、オッサンは働かねばならないのです。
世の中は甘くないし、
とても世知辛い。
疲れと、
姪っ子恋しさにブルーな空気を纏うオッサンは── 一人寂しく下山する。
俺もいるぞ、と──馬が優し気に嘶くが、誰も聞いちゃいない。
背後に過ぎ去った兵舎の前では、
バズゥがまき散らした獣の血液に集り始めた鳥類がギャギャアと騒いでいるが、下山するこっちはまぁ…静かなものだった。
カッポカッポと闊歩する。
オッサンは仕事に疲れているが、まだまだ家には帰れない。
───さぁ、次はファーム・エッジだ。
メスタム・ロックの依頼は終了!
かなり長居した気もするが、実際は1日程度。
これで数々の依頼を達成できたのだから稼ぎとしては悪くないはずだ。
ったく、ウチにいる冒険者どももこれくらい効率よくやってくれればねー…
ぼんやり物思いに更けるバズゥは、役に立たない冒険者どもを思う。
オッサンでさえ、こんだけ頑張ってるんだぞ! と──
荷物にある異次元収納袋をポンポンと叩く。
薬草採取に、獣肉確保、哨所の確認───と、その他細々したものから大きなものまでほとんど解決。
うーむ…俺は実は冒険者が向いている?
いや、ダメだダメだ。
冒険者なんて言うヤクザな商売続けるのは、アホぅのやることだ。
一家を持つものとしては、しっかりとした定職に就くのが一番。
エリンが冒険者をやりたい! な~んて言ったら叔父さん開口一番、こう言うよ?
───「オヤメナサイ」ってね。
だって、冒険者だもん…
叔父さん、ぶっちゃけ笑っちゃうよ?
──冒険者って…なによ!? って…
いやさ、だって、「冒険」者だよ?
冒険する者?
それって仕事なの? ねぇねぇ? 仕事なの!?
……って聞きたくなる。
いやさ、
今現在冒険者として、生計を立てつつ、借金返済をしている俺が言うのもなんだけど…
今回の仕事にしたって、
……これ冒険者の仕事?
上から順に、
哨所の確認───軍の仕事です。
獣肉の確保───猟師の仕事です。
薬草の採取───畑か河原で採れ!
……ってか、薬草やら野草の採取って…お婆ちゃんか!
もっぺん言う。──お婆ちゃんかっ!!
んでから、
荷物の配達───……どうみても、配達業者の仕事でしょうが!?
何なんだろうね…冒険者って…
これだけ聞くと、タダの何でも屋。
どこに冒険者の「冒険」要素があるのか、オジサンすっごく気になるわ。
帰ったらヘレナに聞いてみるかな。
…なんか、「はぁ? どうでもよくない?」とか言われそうだけど…
冒険者…
冒険者ねぇ…
エリンが冒険者にならなくとも、
仮に───
仮にだぞ? 仮に!
…エリンが彼氏を連れてきて、
「結婚します!」───許さん!!(0・5秒で)
じゃなくて、「結婚します!」とか言ったとしよう………
ううぅ……、言ったとしたらだぞ?
で、だ。
その彼氏が「職業は冒険者です」──キリ
な~~~~んて、言った日にゃ…ブッ殺ですよ。ブッ殺!
お話する気にもならん。
即、御帰り頂くだろう。
回れ右、ハイ帰れ。
いや、だってさ。
冒険者ですよ?
冒険する者と書いて、冒険者。
冒険って君ぃぃ…
近所の子供か!?
え?
ポート・ナナン冒険隊か!?
……
冒険するのは、幼年期までぇぇぇ!!
いい歳した大人のやることじゃないよな…
いや、さ。良い歳して、
冒険者………プフッ!
やばい…
帰ったらジーマとかの顔を見て笑いそう。
だって、「冒険者です!」って、……ブフォ! ちょー受ける。
──ブルヒヒィィン!
と、馬が「おいおい、お前はどうなんだよ?」と言っている気がした。
そう言えば、この馬の元の持ち主のキーファは冒険者組合の支部長とかいうエライさんだ。
バズゥの考えに対して言いたいことでもあるのだろうか。
いや、バズゥも確かに現時点では、冒険者をやっていますよ。
だけど、ランクも一番低い「丁」だし…
ついでに言えば、全然昇級に興味もない。
得られる特権が全く意味がないうえ、
一々個人資料を取られるのも御免だ。
ちらっと見たが、「甲」だとか「乙」の上位連中の記録はかなり詳細に書かれている。
丙やら、丁は、最低限の事しか書かれていないのに──だ。
それだけ、力のある者を管理したいという諸国連合の考えが明け透けに見える。
だから昇級しないし、
してもその辺は絶対に誤魔化そう。
あんまり、個人情報について冒険者連中は興味がないようだが…
バズゥは勇者小隊でエルランらの手伝いをしていたとき、それらの書類も扱ったことがある。
あれは中々に恐ろしい…
犯罪歴に善行、ついでに交友関係に趣味嗜好まで書かれている。
俺の個人資料も結構悲惨だった。
ここではあえて言わないでおくが…ね。
まぁ、そんなこんなで俺は冒険者なんてものを本格的にするのはゴメンだ。
せいぜい、バイト感覚でやるくらいだな。
なんたって本職は猟師だからね。
とは言え、
猟師が定職か云々でいうと、猟師もかなり怪しいものがあるが…
いや、だけど…猟師だってやり様次第。
ポート・ナナンはともかく、
ファーム・エッジやフォート・ラグダでは、月給取りとしての公儀猟師もある。
自慢じゃないが、
戦場のおかげか、猟師としての腕前もかなり向上した。
──したと思う。
この腕前をもってすれば、どこかの村や町で公僕として雇ってもらえる可能性もある。
ほとんどが、用心棒的な扱いだというが…
冒険者のような不定期な仕事じゃなく、れっきとしたお仕事だ。
普段は、新人や狩猟の希望者に猟のやり方などを教えつつ、
害獣被害を局限するため、
獣を間引いたり、積極的に狩りに出たりするという。
体が資本なのは変わりはないが、狩猟の成果が不猟・大猟に関わらず給料は出るとか……うーん、素晴らしい!
俺も、今回のことが落ち着いたらそのあたりもしっかりと考えないとな…
いつまでも若くないし、
体もガタが来る。
切った張ったで食っていくのは───まぁ、無理だろうな。
実際、戦場でも限界を感じていたわけだ。
エルラン達に糾弾されなくても、いつか自分でケリを付けなければならなかったのも事実。
そうでなければ、エリンを連れて脱走してもよかったのかもしれない。
いつまでも、エリンに守ってもらう位なら…世界を見捨ててでも家族と暮らすという手もある。
そうさ…
なんで俺達が…エリンが世界を救わにゃならん?
エルランや、キーファのようなろくでもない連中に、
ハバナやら、無銭飲食漁師のような屑ども…
そして、フォート・ラグダ市議会みたいに平気で人の善意を踏みにじる奴ら───
救えない。
救いたくない。
救う価値もない。
そんか連中のために?
キナのことだけじゃない。
…エリンのこともそうだ。
勇者小隊め…
勇者小隊…エルラン達、
キナからあの日の顛末について、彼女なりの解釈聞き、俺なりに理解をして──本当にうんざりした。
正しいかどうかは別にしても、
世界は…
人は腐っている…と。
キナはこんな世界が好きだと言っていたが、俺はそればかりは賛同できそうにない。
好きなところもあるにはあるが、
どう好意的に考えても、世界なんてものは…良くて屑だ。
少なくとも、俺達家族には優しくない。
……それどころか厳しすぎるくらいだ。
エリンには、その世界を救えという。
…いや、違うな。
人の世を救え…か。
はっ!
──救え! と……ね。
くだらないな…
本当にくだらない。
俺にとっては家族が世界だ。
それが救われないなら…この世界に価値なんてあるのだろうか。
キナ、
エリン、
この二人だけいれば…
それ以上何を求めるというのだろう。
バズゥは煩悶としながら…ずぅっと考え続けていた───
そして、バズゥは答えの出ない…答えの決まった疑問を延々と考え続けている。
ある意味、
答えはとっくに出ている気もするが───
キーファの馬があまりにも優秀なものだから、のんびりと跨っているだけでいい。
おかげでボンヤリとできるのだが、思考はまとまらない。
……
ダメだな。
片手間に考えて答えの出ることじゃない。
一度シックリ腰を据えて考える必要があるかもしれない。
はぁ、
なんで俺が世界のことで悩まにゃならんのよ……
馬ちゃんよぉ、
君だけだね、黙って聞いてくれるのは。
ほんと、楽も楽ちん。
お陰で物思いに耽ることもできる。
色々ありすぎて、一介の猟師に過ぎないバズゥでは、正直一杯いっぱいだ。
キナやエリンの事が中心とは言え…
借金は返さねばならないし、
戦争と、その後の事も考えねばならない。
ヘレナや、
エリンがいる軍に対する多少の義理もあるなら、それを果たす必要もあるだろう。
はーーー…
ホント、疲れるねえ…
ガックリと肩を落としたバズゥは、馬に乗っているというのに、何故か小さく見えた。
勇者の叔父は、普通の人なもんでね。
やれやれ…酒でも飲むか。
まったくもってダメ人間まっしぐらな思考に陥るバズゥは、荷物から濁酒を取り出すと馬具の上で一杯やり始めた。
馬がブルヒヒィィンと、
「朝っぱらから飲むとか!? あと、背中ーー!」とか言ってるような気がしたが…知らんな。
──馬の背中で飲む酒も、いいもんだ。
プッハーー…
旨し。
とっ散らかった思考を放棄するには酒が一番だな。
朝めし様に作った、子猪の丸焼きを出すと、ムッシィと豪快に噛み千切る。
モッギュモッギュ…
プフゥ! 旨い!!
そして、酒!
グビリ…
プッハーー…
旨し。
ついでに、レバーとハツと野菜の蒸焼のフルーツ風味を広げる。
入れ物代わりの皮はゴワゴワになっていたが、それがちょうどよい皿代わりになる。
皮を広げると、フワァと広がるそれ。
料理の香りを閉じ込めていてくれたお陰で食欲が増す。
まだほんのりと温かいソレを手づかみで食べていく。
ハツとレバーとタマネギを纏めて口に入れる…
んんんぅぅぅぅぅ…プハッ!!
最高!
……
最っっ高ぉぉ!!
良く溶けた皮下脂肪の甘みと、タマネギから出る糖分、そしてフルーツの品の良い甘さ…それが、肉の旨味と合わさって───もう最高!!
ブワァと口の唾液腺が崩壊しそうな甘さと旨さだ…!
甘味と言っても良いが、タダの甘さではない。
そのままメインディッシュになりそうなほどの、ガツンと来る肉の旨味もしっかりと持っている。
レバーの臭みや、ハツの癖なんてものは一切ない。
そう、一ッッ切ない!!
もう、なんていうの?
旨い!
UMAIですよ!
これはもう、あれです。
王宮料理とかあんな感じじゃないの?
まぁ、エリンのお零れで御呼ばれして、チョコチョコ食べたくらいの経験しかないけど…
というよりも、アレよりも絶対こっちの方が旨い。
猟師飯?
そうですが、何か?
旨いもんは旨いんですよ!
そう開き直る様に、自分の作った飯に舌鼓を打ちながら酒をグイグイ飲んでいくバズゥ。
馬に揺られながら、酒を飲む。
しかも、結構本格的なツマミというか…肉料理を。
こんなオッサン世界広しと言えども───バズゥ・ハイデマンくらいではないだろうか?
だからどうしたというわけでもないが…
プンプンと酒と肉の匂いをさせるオッサンを背に乗せる馬は、どこか達観した顔で無表情。
なんとなく、主人を間違えたかな…と言っている気がしないでもない。
ブルヒヒィィィン……
カッポカッポと寂しげに蹄が鳴るも、バズゥは飲んで食べ続けていた──良い身分だな、おい。
そして、メスタム・ロックを下ること数時間──
途中で昨日荼毘にした遺体を埋めたり、
スキル『山の主』を使って獲物や冒険者の捜索をしたりしたが…
順調に進み、昼前には街道に到着。
ここからファーム・エッジはそう遠くはない。
ちなみに、モリの相方…痩せたモヒカンこと──ズックの気配はどこにもなかった。
熊の気配も見当たらないことを見るに…一体どこに消えたのか。
山中のことだ。
早々道も多くはない。
すれ違わないのだから、もっと以前に哨所を離れていたのだろうか。
……わからないな。
あれでいて、
ズックも一度はキングべアから逃れている。
キーファの取り巻きどもの中では、山に熟知している方なのだろう。
奴の個人資料を見た感じだと、捜索や探検に向いた適性を持っていた。
おそらく、キーファ達のパーティの中では案内役やら先行を努めることをしていた可能性がある。
それらを考えていくと…モリがやられた時点で、ズックは独自の最短ルートを使って逃れたのかもしれない。
バズゥが、先日フォート・ラグダへ駆けつけたように、
山のことを知っている者なら──方向さえ見失わなければやってやれないことはない芸当だ。
それだけに、面倒かもしれない。
下手に逃げ回って熊を引き連れてこられても困る。
やっていることは先のフォート・ラグダの騒動と同じだ。
まったく…学習するってことを知らないのかね。
とはいえ、大人しく食われるなんて選択肢が取れるわけもないので…結局誰かに縋るしかないわけだ。
チ…
殺られる覚悟もなく癖に、山に入るんじゃない!
今回の依頼を終わらせたら、ヘレナに忠告するべきだろうな。
流石に、二度目のフォート・ラグダはないだろうが…モリを殺った種が地羆ではなく、キングベアの生き残りだとすると少々やっかいだ。
あれで近隣では害獣最強種だからな。
生半な戦力では太刀打ちできない。
それこそ、王国軍の一個小隊は必要になる。
大事にならなければいいが…
バズゥの心配をよそに、指示を出してやれば馬はしっかリとした足取りで歩いてくれる。
もし、バズゥが馬でなく徒歩であれば、熊の痕跡を探して追跡することも考えたのだろうが…幸か不幸か、馬に乗っていることにより、その進路が道に固定されてしまった。
ズックなのか、
はたまた誰なのか…
確実に不幸な目に会うものがいるに違いないが…
──バズゥには、そこまでの責任を負うつもりはなかった。
そして、問題を先送りにし、
ようやく今回の依頼最終地であるファーム・エッジ付近に到着する。
随分前から森は切れ、
低木が目立つ丘陵地帯の様相を見せる自然の形態。
街道は長閑そのもので、時折…麦を積んだ荷馬車が行き交うくらい。
麦でなければ、野菜やら農作物の樽に袋だ。
ロバや馬に引かせた荷車に乗るのは、麦わら帽子を被った農夫に、それらもいれば商人の買い付けらしき一団も見かける。
たま~に、陸鳥もみかけるが、過小だ。
この地方では陸鳥よりもロバや馬のほうが主流だから当然だろう。
鳥も悪くはないが、
如何せん牽引力に劣るから農村向きではない。
やはり、
農作業、荷運び、人員輸送に、グラインダー操作など万能に使える馬などが使い勝手が良いのだろう。
老いれば食べてしまえて、なお便利。
それに比べて、鳥の利点は速度と持久力くらいだ。
どちらかと言えば旅向きで、長距離の連絡などには鳥が向いている。
まぁ種類にもよるのだが。
実際、キーファの馬は、軍用に近いのだが…軍用にしては華奢だし、農作業というには余りにも非力だ。
分野としてあるかは分からないが、競争などには使える…趣味の馬といったところ。
騎士のように、人間と同じように活動するのが向いているのだろう。
長距離もできなくはないが、あくまでも人間の歩行とトントンのそれだ。
馬はそんな批評を知ってか知らずか、鼻息を荒くしてすれ違う馬達よりも俺の方が役立つと、アピールしているかのようだ。
大丈夫だ。
別に不満があるわけじゃないよ、と首をさすってやる。
気持ちよさげに馬が天を仰いで嘶くと、バズゥも併せて空を仰いだ───
…まったく、いい天気だねこりゃ。
今日も今日とて、ファーム・エッジは穀倉地帯として栄えている様だ。
安定した作物による収入。
なるほど…荒波と不漁に見舞われることもあるポート・ナナンの住民が一方的に嫌うわけだ。
ここは、平和そのもの…
長閑な田舎の如し──と、
まぁぁぁったく…、住む場所を間違えたかね。
ここは猟師も多いし、
むしろ、漁ではなく猟で生計を立てる者なら普通はここに住む。
実際、バズゥもかつてはここで猟師の修業をしたもんだ。
自分の銃を持つまでは、借り物の猟銃もここで借りていた。
農業と狩猟の村───ファーム・エッジ
ポート・ナナンの隣村ってやつだ。
まぁ、あんまり長居したい所ではないな。
ポート・ナナンの住民の感情とは別に、バズゥ自身の事情によるもの。
なんせ、猟師修行時代はここに通っていたからな…
知り合いも多い。
コミュ力に難ありと自覚しているバズゥには、中々居心地が悪いのだ。
故に、用事だけサッと済ませて帰る心づもりだった。
あまり、目立つ動きをしなければ誤魔化せるかもしれないと淡い期待を抱く。
多分無理だと分かってはいるが…ね。
さて、
とっとと仕事を終わらせて帰ろう。
あまり、ここには寄りたくないのもあるし、
なにより──
──キナが待っているからな…
キナの笑顔を思い浮かべつつ、
微妙に重くなる足は、やはりこの村に対する忌避感情からだろうか。
猟師の知り合いに会わないウチに帰ろうと、殊更無理をして自然体を装って馬を操るバズゥ。
もっとも、高級馬を操るボロボロの軍服姿は、どうやっても目立っているのだが、農村の大らかな雰囲気はそんなバズゥの様子を生暖かく見守っているようだった。
今日も、本当に良い天気だ───




