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3日間だけの婚約者  作者: このはなさくや
本編

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1/16

怪しい依頼

 それは3日間だけの契約の筈だった。


 冒険者ギルドにその依頼が貼り出されたのは2週間前の事。


・依頼内容 要人警護

・期間 ×月×日から3日間

・報酬 応相談

・条件 Cランク以上の女性冒険者 できれば10代後半から20代後半 容姿端麗な方歓迎


 女性冒険者で要人警護、報酬応相談。条件欄にありありと漂うエロオヤジ臭。胡散臭さに誰もその依頼を受ける者がいなかったのは当然だと思う。

 私が興味を持ったのはたまたまヒマだったから。ただそれだけ。



「ようこそいらっしゃいました。サク・ラー様」



 ギルドの依頼を受けて出向いた先は、貴族のお屋敷が並ぶエリアでも一際大きく瀟洒なお屋敷だった。門で名前を告げるとそのまま玄関に行くよう指示され、待ち構える執事らしい初老の男性に応接室らしき部屋まで案内された。



「失礼します、サク・ラー様がお見えでございます」

「通してください」



 そこには銀色の髪に細い銀縁の眼鏡をかけた、少し神経質そうな若い男が立っていた。そいつは部屋に入った私を上から下まで不躾にジロジロ見た挙句溜息をついた。



「もう少しましな人材はいなかったのですかね、全く。おかけください。サク・ラーさん。」



 その男が語る依頼内容は更に胡散臭い物だった。

 依頼主はこの国の若き宰相、アルベルト・フォン・ヴァンダイク。正確に言うと依頼を出したのは彼の秘書だというこの銀縁眼鏡らしいけど。

 内容は×月×日に開催される皇帝主催の晩餐会での警護と婚約者のふりをする事。


 要は宰相様は今は結婚する気がないから晩餐会で寄ってくるお嬢様方の防波堤役をやれ、ついでに暗殺なんかもあるかもしれないから身辺警護もよろしくね、ということらしい。



「ギルドには2週間前から依頼を出していたんですが、どういう訳か応募してきたのは貴女だけでした。舞踏会は明後日、別の人を探すにはもう日にちがありません。こちらとしては貴女に頼まざるを得ないのですが・・・」



 そこで一息つくと銀縁眼鏡野郎は態とらしく溜息をついて頭を振った。



「仮とは言え帝国が誇る若き宰相、アルベルト様のお相手です。孤高の宰相と呼ばれる、あのアルベルト様ですよ!美しく長い絹糸のような黒髪、煌めくアメジストの瞳から発する氷のような眼差し、容赦なく部下をしばく鍛えられたしなやかな肢体・・・この国の旦那様にしたいランキング5年連続、抱かれたい男年8年連続ナンバーワンのアルベルト様のお相手です!見劣りしないまでも、せめてアルベルトさまのお目汚しにならない方がよかったのですがねえ。・・・ちょっとフードを取っていただけますか?」



 とっても失礼で若干変なコメントが含まれるのは気にしないでおこう。私はフードを取ってみせた。ちなみに今日のコーディネイトは全身真っ黒フード付きの超ロングローブ。魔女っ娘の定番で鉄板コーデ、どんなTPOにも対応できる優れものです。・・・単に手抜きともいうけど。



「おや、貴女も黒髪なのですね。それは地毛ですか?」

「はい」

「・・・まあ化粧とドレスで見た目はなんとか誤魔化せるでしょう。そうそう、貴女はぼろが出ない様なるべく喋らないように。身辺警護と言っても本職がちゃんと会場に紛れています。貴女はアルベルト様にわざと飲み物をかけたり倒れ掛かってくるご令嬢から引き離していただければいいのです」

「・・・はあ」

「期間は明朝から3日間ですが、メインは明後日の晩餐会です。明日はドレスの打ち合わせ、晩餐会後の1日は念のための予備日です。報酬は50万マルクでいかがでしょう」

「問題ありません」

「詳しくは先ほど貴女を案内した執事のフーリッヒに聞いてください。くれぐれもアルベルト様のご迷惑にならない様に、いいですね」



 こいつどんだけご主人様が好きなんだ、はっきり言ってきもいわーひくわーと思いつつ私は了承の意味で頷く。

 旦那様にしたいランキングだか抱かれたいランキングだが知らないけど、この依頼完璧に遂行させていただきましょう。



大体10話前後で完結の予定です。

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