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インセンシティブ・センシブル  作者: サウザンド★みかん
(新)第Ⅰ部 大衆教育社会の欠陥教師―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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(新)第2話 決意、挑戦、玉砕~第四節~

 ここが我が家か。そこは、鴨中学校から自転車で五分少々の距離にある独身者向けのワンルームマンションだった。賃料は、共益費込みで四万五千円。その家賃については判断に迷うところだが、目と鼻の先にコンビニがあることを考えれば安いのだろう。実家は、ここからまた自転車で五分のところにある。最後に帰ったのは正月だったと、私の記憶は告げていた。

 二〇三号室。水色の扉に鍵を差し込む。それは意外に重く、ギギ、という音がその立て付けの悪さを意識させた。部屋に入る。玄関で靴を脱いで、足を一歩滑らせてカーペットの感触を得た。あいにくと、独身部屋にはスリッパなど必要ない。そのまま明かりを点けて、部屋全体を見渡した。


「汚な……く、ない?」


 意外であった。私の部屋はキレイだという記憶はあったが、それは間違いだと思っていた。この部屋の綺麗さは調和的な美しさというより、むしろ整然とした美である。

 家具類は、最も合理的な位置に置かれているし、ベッドの位置は正面から見てぴったり一八〇度を向いている。ベッドだけではない。テレビが置いてあるテーブルも、その下のコタツ用カーペットも、すべて同じ傾きが保たれているのだった。

 もしかしたら、いや確実に、私という人間は自分が興味のある分野以外はどうでもいいというタイプの人間であった。

 参考までに、鴨中学校における仕事机エントロピーランキング第一位は、問答無用で九里村律子である。なんでも、二十年来のベテラン教師からしても今だかつてあのような状態の仕事机を見たことはないそうである。

 あの机に鉄槌を下したのは、文房具の神だけではないのだろう。なにしろ、数ヶ月前に零したカップ麺の染みすら未だに拭かれていないのだから。私の仕事机といえば、せいぜい三位くらいの、まあネタにも食い込めないほどのかわいいものである。しかも今日整頓したから、これでランキングに食い込むことはない。

 室内の配置については、だいたい検索したところではある。例えば冷蔵庫の中は調味料とジュースだけというのも、布団のシーツを一年以上洗っていないというのも、多分違いない。

 そして私は、襖(ふすま)まで歩く。深呼吸をしてから真ん中の凹みに手を掛けた。サー、トンッ、という小気味よい音とともに、押入れにある衣類用プラスチック箪笥の上面に視線を遣る。

 はっきり認めよう。近未来においては、所持しているだけで逮捕されても文句はいえないだろう品々(写真など、色々と卑猥な物品、あとはほとんどDVD)が並べられている。やはりこの男は(もうこんな呼び方はしないと自分で誓ったのに、また言ってしまった)、その……小児偏愛者(ロリコン)というやつだった。

 

「……」


 考えても仕方がない。タキプレウスから聞いたルールでは、彼女は一日に一回、私が望んだときに三十分まで現れる。一日中にその権利を行使しなければ、私が部屋に帰っているとき適当なタイミングで現れるという。その場合にも制限時間は三十分だろう。

 いずれにせよ、質問は禁則に触れない限りは何度でも可能だという。私が今考えている内容については、また明日、タキプレウスに訊くことにしよう。

 とにかく今日は疲れた。さっさと寝よう。布団に転がった。臭くはない。自分の匂いなんだから、当然か。意識が薄れてゆく。とにかく、この一週間が勝負だ。この一週間で教師としての立場を手に入れてやる。

 (第2話、終)

毎週、金曜日から更新です。それでは、ゆっくりお読みください(。。)...

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