あたしの倖せ発見器(老女百合)
「ねえ、見て。楓がすっかり色付いて……綺麗ねぇ」
彼女が指差す先、確かに楓が真っ赤に燃えている。
彼女はそれを見て、ほう、と感嘆のため息を吐いた。
確かに綺麗だ。
あたしは、少し下がって彼女越しに楓を、そして彼女を見る。
「秋だなあってしみじみ思うと、何だか嬉しくなっちゃうわよね」
年を経ても、彼女の笑顔はきらきらと眩しく、無邪気で、愛らしい。
素直に口角が上がり、眉のあたりが緩み、目元がふんわり細められる。
真っ直ぐな笑顔だ。
見事に朱く染まった楓と揃うと、秋の倖せといった感じがする。
そう、倖せ。
彼女は、小さな倖せを見付けるのが昔から上手かった。
「ほら見て、四つ葉のクローバー」
「ねえ、いい匂いしない? きっと沈丁花ね。甘い薫りがする」
「あ、虹。ううん、そっちじゃないわ、あそこよ。そう」
「パン屋さんが近くにあるのかしら。……ね、あっちからいい匂いがするわ。行ってみましょう」
「あら。何か聴こえるわ。……聖歌かしら? もうクリスマスだものね。ふふっ。良い歌声。素敵ね」
「流れ星! 見てて……きっともう一度来るわ。……ほら!」
小さないいものを見付けて、それを惜しげもなくあたしにもくれる。
「ね、いいでしょう?」
顔いっぱいに笑顔を広げて言うのだ。
その眩しさに、あたしの心までポッと温かく、倖せに満ちる。
だから。
「いいね」
「でしょ?」
「アンタと居ると、ずっと倖せで」
「!?」
あたしは、アンタが居るだけで、それがいちばん倖せなのだ。
END.




