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その冷たい手がいちばん欲しい(百合。高熱を出した人と見守る人と)
冷たい手が、額に触れる。
「熱、高いね。可哀想に」
「ごめん……」
「いいよ」
優しく笑う気配に、目を開けた。
柔らかく微笑む彼女に、泣きたくなる。
「ごめんね」
「謝らないで」
冷たい手が、何度も頬を往復した。
「すぐ良くなるよ。大丈夫」
「うん……」
嫌だ。
良くなりたくない。
このまま。
このまま、熱に侵され、この冷たい手を愛おしみながら静かに眠れたら。
「大丈夫。……まだこちらに来るべき時じゃないからね」
君の傍に行けたら。
どれだけ。
「ごめんね……」
そうなったらどんなにか倖せだろうと、そんなことばかり願ってごめん。
薄い君の影に向かって、私は泣いて謝った。
END.
高熱に浮かされたときだけ逢える君。
高熱を出したときだけ逢える君




