私の恋は、どっちだ(百合。片想い)
文化祭、二日め。
「……こんにちは。また来て下すったのね」
「あ、えと……はい……」
私はまた、コスプレ文学喫茶に足を踏み入れていた。
「作品、読みました……」
「あら、嬉しい」
もちろん、目当てはカノジョ。
今日も今日とて、深い色のワンピースに身を包み、艶やかに微笑んでいる。
でも、ちゃんと大義名分はある。
文芸サークルであるからして、やはりうちと同様、個人誌を売っていた。
当然のようにカノジョの個人誌はゲット済、かつ読了。
そう、『感想を伝える』という立派な大義名分があるのだ。
「最初は、『これもしかしてバッドエンドかな? 嫌な終わり方するかな?』ってハラハラしたんですけど、でも、どんでん返しがあって、それが気持ち良くて。とても素敵でした」
席に案内してもらいながら、何とか感想を伝える。
昨日、作品を読んで即、スマホのメモにまとめ、寝る前、起床後、登校中、すべての時間を使ってシミュレーションした甲斐あって、多分言いたいことは言えた。はずだ。
「ふふ、ありがとうございます」
カノジョが、小首を傾げ、はにかんだ。
艶めいた笑みとはまた違う、照れた微笑に。
私の心音が、またひとつ、バクンと大きく鳴った。
すごい。
心臓って、何処までも早く脈打てるんだ。
己の心臓が持つ可能性に打ち震えていると、ふとカノジョが身を屈めて。
「……私も、お客様のを読みましたよ」
「!」
私の耳元で、囁いた。
「ファンです。お会い出来て、光栄です」
間近で、あの深く美しい眼と眼が合った。
「ひゃ、ひゃい……!」
ありがとうございます、なんて意味のある言葉は、私の口から出なかった。
ただただ、至福である。
……この至福は、恋なのか何なのか、未だ私にはわからなかった。
END.
一つ前のお話(https://ncode.syosetu.com/n9047lt/23/)の漫同のひとサイド。




