どんなときでも、あなたと生きると決めているから(歳の差薔薇。年上×年下。菓子職人×元塾講師。トーリー×颯太)
「……ちょうしは、どうですか?」
「トーリーさん……」
寝室を覗くと、顔を真っ赤にした颯太さんが、目を覚ましたところだった。
傍に寄り、額に触れる。熱い。でも、朝よりはマシだろうか。
「おかゆ、作りました。食べれそうなら」
「ありがとう。……ごめん、お店忙しいのに」
「いえいえ。この時間はたいてい、ひまですから。だいじょうぶです」
そろそろと起き上がる彼の背を、慌てて支えた。パジャマの背は、いつもよりしっとりと湿っている。食べたあと、着替えを手伝った方がいいかも知れない。
チェストに置いてあったペットボトルの水を差し出すと、彼は、くぴりくぴりとゆっくり飲んだ。
「……倒れてから、ちょっとしたことですぐ熱が出る」
飲み終わった颯太さんが、ぽそりと言った。
過労で倒れたことで、彼は前の職を辞めることになり、そして私と暮らし始めて今に至る。
倒れて以来、今まで何ともなかった疲労や季節の変わり目などで熱が出るようになったと彼は言う。
「まだ元に戻らないのかな……早く戻りたい。迷惑かけたくないのに」
「颯太さん」
私は、受け取ったペットボトルをチェストに置き、改めて彼の手を握り締める。
「過労でたおれる、入院する、たいへんなことです」
熱で潤んだ彼の瞳をじっと見ながら。
「颯太さんの身体は、今とてもがんばっています。時間、まだまだかかるかも知れません。でも、とてもえらい、がんばり屋さんです」
一言、一言が、彼にきちんと伝わるよう、慎重に言葉を紡ぐ。
「だから、ゆっくりしましょう? 今はいたわる時期。いたわる時期の動きかた、はたらきかたを、していきましょう」
「……ずっと、このままだったらどうしよう」
彼が、ひしゃげた声で言った。握り締めた手の力を、ぎゅっと込めた。
「だいじょうぶ。そうなったら、そうなったときの動きかた、はたらきかたが、きっとあります。あなたが楽で、楽しいのが、一番です。その一番を見つけていきましょう」
いっしょに、と言えば、颯太さんの手が微かに震える。私は微笑んで、彼の額に私の額を合わせた。熱く、汗ばんだ彼のおでこは、がんばっている証。なんてえらい、健気で、素敵なひと。
「颯太さん、いつも、えらい。すばらしい。……ありがたき、私のpartnerさんです」
「……うん」
でも、もっと自分を大切にして。そんな気持ちも込め、形の良い彼の頭をゆっくり撫でた。
「ありがとう」
颯太さんの手が、弱々しく、それでもしっかり私の手を握り返した。
「さ、おかゆを食べて、おくすりを飲みましょう」
「うん。なに粥?」
「梅こんぶです」
「ふふ、嬉しい」
END.
ちなみにトーリーさんは、店に戻る前にしっかり手洗いうがいはもちろんのこと、着替えもしてます。もしかしたらサッとシャワーも浴びてるかも知れないです
お店は、バイトさん来る時間まで一時クローズしています(貼り紙もしてる)




