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百花繚乱~一日一作短編集~  作者: 飛鳥井 作太


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春が向こうから来た(百合。僕っ娘先輩×私っ娘後輩。有田×白山)

「でも意外だったなぁ」

「何がですか」

 綺麗な桜の樹が見えるチェーン店のカフェ。テラス席。

 期間限定のフラペチーノとラテを買って、二人で分けっこして飲む。

 花見と洒落こみながら。

 まるでデートだ。ってまあ、デートなんだけど。

 目の前に座る女子高生は、僕の一つ下の後輩で、この三月からは恋人でもある。

 学校では括っている髪を今は下ろしているのが、少しだけ大人っぽい。眼鏡はそのままだけど、これは良き。何でも外しゃあいいってもんじゃない。

「ハクはさ、告白なんてしないと思った」

 三月。卒業式の日に、彼女から好きだと言われた。

 顔を真っ赤にして。かと言って、恥ずかしそうというのでもなく。寧ろ不貞腐れた顔だった。

 それがあまりにも彼女らしくて。

 可愛くって仕方なかった。

 だから、即オーケーした。

 オーケーされると思ってなかったのだろう。

 眼鏡の奥で丸くなった眼が、また愛らしかった。

「ああ……」

 ふいと顔を反らし、彼女は言った。

「塾の先生の言ってたことを、参考に」

「え、塾講に相談したの?」

 誰かに相談しそうに見えなかったので、素で驚いた。

「いえ……。テストに関してのアドバイスでしたけど。何か、私の思考行動に関して大体使えそうだなって思ったんで」

「ちなみにどんな?」

「『もっと自分を信じて、思い切って判断しても大丈夫』って」

「なるほどねぇ」

 いつもは、大人の言うことなんて斜に構えて聞かない子なのに。変なところ素直なんだから。

 ……あー。

 これは、嫉妬だな。

 僕は、心の中だけで眉をしかめた。

 ハクが言うことを聞くのって、僕くらいかと思ってたから。いや、別に僕の言うことも聞かないな。

 ううむ。

「あの、有田さん?」

「ん? ああ、何でもないよ」

 僕の顔をまじまじ見る彼女は、何だか猫みたいだ。

 本当に? と飼い主を見上げてくるあの瞳とよく似ている。

 疑っているのに、こちらに信頼を寄せている感じ。だけど、べったりはして来ない感じ。そっくり。

「ハクは、何をしてても可愛いねぇ」

「……いきなり何ですか」

 からかわないで下さい、と言ってまた視線を反らす。その目の端の朱《あか》さ。うん、可愛い。

「からかっては、ないんだけどね」

 さあ、と風が吹く。花びらが散る。そのうちのひとひらが、彼女の髪を飾った。

 ああ。

「可愛いね」

 僕のものになったあなたが、より可愛い。

 春が、向こうから来た。

 

 END.

  

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